5日、下記の団体が集団的自衛権行使論について公開討論会を開催したようです。今日の赤旗と朝日に掲載されていました。残念なことは参加した政党が自民・民主のみだったことです。
公開討論会/「〈解釈の見直し〉による 集団的自衛権の行使容認問題を ... - [PDF]
ところが、報道された内容のあまりの違いに驚き、調べてみました。掲載されていたのは、東京と産経でした。
ポイントは、以下のとおりです。
1.朝日は、どうでも良い内容でした。しかも、集団的自衛権行使論が憲法の平和主義に違反するものであるとの文字はどこにもありませんでした。解釈論にスリカエていました。
2.赤旗は、集団的自衛権行使論が憲法違反に当たることを参加者の発言をもって紹介していました。
3.東京は、写真入で報道。その中に小林節教授が写っていますが、記事には書かれていません。枝野氏は護憲派のように描かれています。実際は朝日の記事をみれば、全く違っています。
4.産経は、船田氏の主張のみを掲載しています。当然でしょう。この新聞は。
5.参加者の発言の前後の各紙の説明をみると、この公開討論会を報道する各紙の意図が明確になったように思います。しかし、これで国民の知る権利は保障されたのでしょうか。ここが最大のポイントです。国民にとって、最高法規である憲法に合致した報道がされているかどうかです。新聞は、社会の公器として、憲法遵守擁護の義務(情報の公開)が課せられているのではないでしょうか。具体的には、以下のとおりです。
(1)憲法違反の自衛隊を合憲として正当化するために自民党が設置した「政府の憲法解釈の番人」と呼ばれる内閣法制局について正確に伝えること。
(2)それは憲法第9条は自衛隊を憲法違反として追及する野党と国民を「説得するための論理」構築のために、また、そのひとつとして集団的自衛権行使論を否定してきた内閣法制局について正確に伝えること。
(3)そのような性格をもった内閣法制局の思想と論理を、ここに至って自民党自身が否定するという状況をどのように伝えるか、また国民的討論を深めていくか、です。
7.集団的自衛権行使論について、各紙が、各氏の発言をどのように伝えたか。一覧してみます。
(1)船田氏
朝日 「ガチガチに立憲主義を守ることによって国が滅んでしまっては何もならない」
赤旗 「地球の裏側まで米軍を助けにいくわけではない」「個別的自衛権の延長」「理論的・法的には小林氏らの指摘の通りだ」
東京 「時間があるなら憲法を改正すべきだが、果たして国際情勢が待ってくれるのか」「極東アジアの情勢が緊張してきている。集団的自衛権に踏み込まないと日本を守ることができないのではないか」
産経 「極めて限定された形であれば(行使容認の)解釈の余地が残っている。米国がブラジル辺りで敵国にやられようとした時、地球の裏側まで助けに行くのは絶対にできない」「フルサイズの集団的自衛権を認めるには憲法改正をきちんとしなければならない」
(2)枝野氏
朝日 「民主主義は間違える。間違えた場合でも、影響を小さくするために立憲主義がある。もし、この国で立憲主義が確保されないなら亡命する」「立憲主義を守る当事者は主権者である国民のみなさん。亡命しなきゃならないようなことにはならないと思う」
東京 「憲法は権力を縛る道具なのに、恣意的に過去の解釈を変えることができたら憲法の意味がなくなる」「集団的自衛権の話と安全保障環境の変化が結びつかない」
(3)小林節氏
赤旗 「集団的自衛権の行使に地理的な限定はない。同盟国との関係では、世界のどこでも戦争する国になるということだ」「内容も手続きも違憲だ」
(4)阪田雅裕氏
赤旗 「憲法上、認められていない海外での武力行使」「地球の裏側までいかないというが、朝鮮半島はいいがブラジルはだめだ、ということを(法的に)どう説明するのか」
東京 「自衛隊は合憲だが、海外で武力行使はできないという解釈は簡潔明瞭で常識的だ。集団的自衛権が行使できるという論理は考えられない」「集団的自衛権行使を可能にする条件は憲法改正手続きにのっとって国民の判断を仰ぐのが当然だ」
8.憲法の平和主義では、「極東アジアの情勢が緊張してきている。集団的自衛権に踏み込まないと日本を守ることができない」のかどうか、歴史的に検証すべきです。
9.「極めて限定された形」というのはどのような「形」か、説明されていません。
10.集団的自衛権行使論の正当化の際に出される「敵国」が、アメリカを攻撃するのは何故か、攻撃されないためには何が必要か、議論もありません。歴史的に検証する必要があります。
11.集団的自衛権行使論の際の「地球の裏側」論は「地理的概念ではない」と、安倍首相は表明しています。ということは世界各地に出兵することを意味しています。このことは、石破幹事長の南シナ海周辺国との連携発言が、イケイケドンドンを象徴しています。
首相「地理的概念とせず」 集団的自衛権行使の解釈見直し 時期は明言避ける
自民・石破氏、集団的自衛権「アジア諸国も対象にすべき」TBS系(JNN) 10月5日(土)2時53分配信
…「アメリカの力は相対的に落ちます。中国の力は相対的に上がります。バランスが崩れつつあります。このアジア太平洋地域でバランスを保つためには、日米同盟を強くするだけではなくて、日本とフィリピン、日本とマレーシア、日本とインドネシア、そういう国々との間に、そういう関係を作るというのも一つの考え方だと私は思う」(自民党 石破 茂 幹事長)(引用ここまで)
12.国際社会において、集団的自衛権行使論がどのように具体化されてきたか、そのことを明らかにする必要があるでしょう。その点で解釈の問題ではないということです。すでに日米軍事同盟の具体化で、日本はギリギリのところまで、集団的自衛権の行使を行なってきていること、またできなかったことを明らかにすることです。
13.個別的・集団的自衛権の行使の前に、やるべきことは何か、そのとりくみの創造力と想像力について、どれだけ議論ができるか、その情報をどれだけ提示できるか、そのことが試されていると思います。そのことこそ、真の軍事に頼る消極的平和主義ではなく、人間に頼る積極的平和主義、人間を尊重した安全保障論といえます。
朝日4面6日付 立憲主義「確保されぬなら亡命」 枝野氏、集団的自衛権巡り
安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認をテーマにした討論会(主催=国民投票/住民投票情報室)が5日、都内で開かれ、民主党の枝野幸男・憲法総合調査会長と自民党の船田元・憲法改正推進本部本部長代行が、憲法解釈の変更をめぐって激しくやりあった。討論会では船田氏が「ガチガチに立憲主義を守ることによって国が滅んでしまっては何もならない」と述べ、憲法解釈の変更による行使を認めるよう訴えた。枝野氏は解釈変更による行使に反対し、必要最小限の自衛権を憲法に明文化する私案をまとめている。枝野氏は「民主主義は間違える。間違えた場合でも、影響を小さくするために立憲主義がある。もし、この国で立憲主義が確保されないなら亡命する」と主張。その上で「立憲主義を守る当事者は主権者である国民のみなさん。亡命しなきゃならないようなことにはならないと思う」と訴えた。(引用ここまで)
赤旗2面6付 集団的自衛権公開討論会 「内容も手続きも違憲」小林節教授ら改憲を批判
安倍内閣が進めている解釈改憲=集団的自衛権の行使容認に関する公開討論会が5日、都内で行われ、自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行は「地球の裏側まで米軍を助けにいくわけではない」として、「個別的自衛権の延長」で、日本近海で米艦が攻撃された際の反撃などに限定する考えを示しました。これに対して、9条改憲論者で知られる慶応大の小林節教授は、「集団的自衛権の行使に地理的な限定はない。同盟国との関係では、世界のどこでも戦争する国になるということだ」と指摘。このような解釈改憲は「内容も手続きも違憲だ」と批判しました。また、阪田雅裕・元内閣法制局長官も、集団的自衛権の行使は「憲法上、認められていない海外での武力行使」だと指摘。「地球の裏側までいかないというが、朝鮮半島はいいがブラジルはだめだ、ということを(法的に)どう説明するのか」と述べました。船田氏は、小林氏らの指摘に対して「理論的・法的にはその通りだ」と認めざるをえませんでした。(引用ここまで)
東京新聞:枝野氏ら解釈変更批判 集団的自衛権で討論会:政治(TOKYO .. 2013年10月6日 朝刊.
集団的自衛権行使の是非を議論した公開討論会=5日、東京都千代田区で
安倍政権が進める解釈改憲による集団的自衛権行使容認の是非をめぐる公開討論会が五日、都内で開かれ、民主党の枝野幸男憲法総合調査会長、自民党の船田元(はじめ)憲法改正推進本部長代行、阪田雅裕(まさひろ)元内閣法制局長官が参加した。討論会は「国民投票/住民投票」情報室が主催。民主、自民各党の憲法担当者と「政府の憲法解釈の番人」と呼ばれる内閣法制局の元トップが一堂に会した。船田氏は「時間があるなら憲法を改正すべきだが、果たして国際情勢が待ってくれるのか」と行使を容認するための憲法解釈変更に理解を求めた。「極東アジアの情勢が緊張してきている。集団的自衛権に踏み込まないと日本を守ることができないのではないか」とも述べた。一方、枝野氏は「憲法は権力を縛る道具なのに、恣意(しい)的に過去の解釈を変えることができたら憲法の意味がなくなる」と解釈変更に反論。「集団的自衛権の話と安全保障環境の変化が結びつかない」とも指摘した。阪田氏も「自衛隊は合憲だが、海外で武力行使はできないという解釈は簡潔明瞭(めいりょう)で常識的だ。集団的自衛権が行使できるという論理は考えられない」と枝野氏に同調。集団的自衛権行使を可能にする条件については「憲法改正手続きにのっとって国民の判断を仰ぐのが当然だ」と訴えた。(引用ここまで)
解釈改憲なら行使制約 集団的自衛権で船田氏 2013.10.5 21:36
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131005/stt13100521370005-n1.htm
自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行は5日、都内で開かれた公開討論会で、憲法解釈の変更で集団的自衛権行使を容認した場合、行使に制約がかかるとの認識を示した。「極めて限定された形であれば(行使容認の)解釈の余地が残っている。米国がブラジル辺りで敵国にやられようとした時、地球の裏側まで助けに行くのは絶対にできない」と述べた。同時に「フルサイズの集団的自衛権を認めるには憲法改正をきちんとしなければならない」と指摘した。(引用ここまで)