軍事抑止力論から非軍事抑止力論の安全保障の枠組み=非軍事平和共同体構想へ
昨日と今日の段階で「防衛白書」に関する社説で、ほぼ出揃ったと言えるでしょうか。徳島新聞と秋田魁新報の社説を検証してみます。
「抑止力頼み」=「軍事抑止力」に対して「対話こそ紛争の抑止力」、そのための「各国と連携しての地域安全保障の仕組みづくり」という考え方が主張されるようになってきました。これは画期的なことです。このことを踏まえて大いに議論が起こればと思います。これについては、EUも結構ですが、よりましなのはアセアンや中南米の経験があります。これを北東アジア平和共同体構想に発展させていけるか、です。
日米軍事同盟廃棄から憲法平和主義を活かす対等平等の日米平和友好条約へ
しかし、それにしても。「抑止力」として位置付けている日米軍事同盟を廃棄して憲法平和主義に基づく日米対等平等の日米平和友好条約を締結するという発想は微塵もありません。ご覧ください。これについても、大いに議論を巻き起こしていきたいものですね。
徳島新聞
安保政策の基盤となる日米同盟については、アジア太平洋地域で米軍のプレゼンス(存在)が非常に重要だと強調。新型輸送機オスプレイの沖縄配備で「抑止力が強化され地域の平和と安定に寄与する」と記した。政府は、年内に改定する日米防衛協力指針の協議を通じて、自衛隊の任務拡大の具体化を急ぐ方針だ。日米が一体となって中国に対抗する狙いだろうが、国民の理解を得ないまま自衛隊の任務を拡大してよいのか。 (引用ここまで)
秋田魁新報
各国で地域の安全保障を確保する取り組みも欠かせない。欧米やロシアなどでつくる地域安全保障に欧州安保協力機構がある。日米同盟の深化といった対米中心の政策に寄り掛かるのではなく、アジア各国と連携した安全保障の主導など日本が果たすべき役割があるはずだ。(引用ここまで)
徳島新聞 防衛白書/対話で平和を築きたい 2014/8/10 10:06
http://www.topics.or.jp/editorial/news/2014/08/news_14076304280847.html
2014年版の防衛白書は中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を訴えながら、安倍政権による安全保障政策の転換に理解を求めているようだ。 白書は、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定について「平和と安全を一層確かなものにしていく上で歴史的な重要性を持つ」と評価した。果たしてそうだろうか。他国の艦船への攻撃に、日本が応戦すれば、嫌でも戦争に巻き込まれる恐れがある。それで、平和と安全が一層確かなものになるとは思えない。 むしろ、中国など近隣諸国と冷静に対話する姿勢が重要なのではないか。
白書は、中国の海洋での力を背景とした現状変更の試みを高圧的だと非難。東シナ海上空の防空識別圏設定に関しては「事態をエスカレートさせ、不測の事態を招きかねない」との懸念を示した。 中国機、ロシア機などに対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)が13年度は急増して800回を超え、昨年11月には中国の空母「遼寧」が初めて南シナ海を航行したと述べている。 沖縄県・尖閣諸島周辺での中国艦船の威圧的な動きや、中国軍機の自衛隊機への異常接近など中国の常軌を逸した行動に、日本が神経をとがらせるのは当然だ。
北朝鮮に関しては、体制を維持する上で、不可欠な抑止力として核兵器開発を推進していると指摘し「通常戦力で著しく劣勢に陥っているため、大量破壊兵器や弾道ミサイルの増強により劣勢を補おうとしている」との見方を示した。
「平時でも有事でもないグレーゾーン事態が増加する傾向にある。安保上の課題や不安定要因はより深刻化している」。白書がそう指摘するように、日本の安全保障環境が大きく変化していることは確かだ。だからこそ、中国などと話し合いの道を探らなければならない。不測の事態が起きかねないのに、首脳会談も開けない日中関係は、両国民にとっての不幸である。
安倍晋三首相の安保政策の変更はほかにもある。武器輸出三原則に基づく武器禁輸政策が今年4月、平和貢献目的や厳格な審査などを条件に輸出を認める新原則へと転換されたのも一例だ。安保政策の基盤となる日米同盟については、アジア太平洋地域で米軍のプレゼンス(存在)が非常に重要だと強調。新型輸送機オスプレイの沖縄配備で「抑止力が強化され地域の平和と安定に寄与する」と記した。政府は、年内に改定する日米防衛協力指針の協議を通じて、自衛隊の任務拡大の具体化を急ぐ方針だ。
日米が一体となって中国に対抗する狙いだろうが、国民の理解を得ないまま自衛隊の任務を拡大してよいのか。
共同通信の最近の世論調査では、集団的自衛権の行使容認について、20~30代の若年層は反対が69・7%に上った。閣議決定に関する安倍政権の説明については、各年代で「十分に説明しているとは思わない」が80%を超えた。他国の紛争に巻き込まれて自衛隊員に戦死者が出るような事態を国民は望んでいない。。(引用ここまで)
「国民の理解を得ないまま自衛隊の任務を拡大してよいのか」ということは、「理解を得れば」「任務を拡大してもよいのか」ということになりますが、憲法平和主義は、現行の日米軍事同盟下の自衛隊のままで海外に出て行った武力行使を容認していないですね。少なくとも、これまでの考え方では。愛国者の邪論は、外交交渉を徹底してやれば、武力行使は不必要だろうと考えていますので、徳島新聞のような問題設定は不必要だと思います。
「北朝鮮に関しては、体制を維持する上で、不可欠な抑止力として核兵器開発を推進していると指摘」しながら、「安保政策の基盤となる日米同盟については、アジア太平洋地域で米軍のプレゼンス(存在)が非常に重要」としていることそのものが矛盾しています!ここに軍事抑止力論の矛盾を白書自身が認めているという珍事が浮き彫りになっているのです。防衛省も安倍首相も、気づいていないでしょうね。この矛盾!
秋田魁新報 防衛白書/抑止力頼みでは危うい 2014/8/9 12:05
http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20140809az
「抑止力頼み」ともいえる安全保障政策をこのまま推し進めていいのか。集団的自衛権の行使容認を明記した今年の防衛白書を政府が了承した。行使容認を「歴史的な重要性を持つ」と評価する一方、中国の海洋進出に対する批判を強めた。日本周辺の安全保障環境の悪化は確かに指摘の通りだ。だが行使容認など軍事面に偏った取り組みが、かえって周辺国の反発や軍備増強を招きはしないか。それよりも日本は「平和国家」として、各国と連携しての地域安全保障の仕組みづくりや対話を急ぐべきだ。
白書の記述で目立つのは中国の脅威を強調している点だ。海洋進出を「高圧的」、東シナ海上空の防空識別圏設定を「非常に危険」と批判している。領空に入る恐れがある外国機への自衛隊機の緊急発進(スクランブル)も急増している。昨年度は24年ぶりに800回を超え、対中国機が対ロシア機を上回ったとした。北朝鮮の動きも含め白書が挙げる安全保障環境の変化を見ると、「日本は大丈夫なのか」と不安になるのも分かる。しかし、冷戦期に当たる1984年度の発進は過去最多の944回にも上る。空の安全保障環境は少なくとも、当時の方が悪かったということになる。
そうした状況下でも日本は一貫して、自国への攻撃がないのに他国の戦争に加わる集団的自衛権の行使容認を固く禁じ、平和国家の歩みを続けてきた。
それでは白書はなぜ、緊急発進の多さを強調するのか。海も空も危うい、急いで集団的自衛権行使を容認して抑止力を高める必要があった—。このように、閣議決定を正当化する意図があると言わざるを得ない。
世論調査では国民の6割が行使容認に「反対」、8割以上が「説明不十分」としている。憲法9条を空文化する容認の閣議決定を安倍政権は直ちに撤回する必要があるにもかかわらず、白書の記述は容認を既成事実化するものだ。
白書が主張するように、行使容認が抑止力の向上につながるかどうかも疑問だ。周辺国が日本への警戒感から軍備増強を加速し、かえって軍事的な緊張が高まる「安全保障のジレンマ」に陥る恐れがある。
平和主義を掲げる日本が力を入れるべきは外交面の取り組みだろう。安倍政権をめぐる最近の動きで注目したいのは中国との首脳会談の模索である。日中の緊張関係緩和のため首脳同士の直接対話は何より重要だ。安倍晋三首相は大局に立って対話を実現しなければならない。各国で地域の安全保障を確保する取り組みも欠かせない。欧米やロシアなどでつくる地域安全保障に欧州安保協力機構がある。日米同盟の深化といった対米中心の政策に寄り掛かるのではなく、アジア各国と連携した安全保障の主導など日本が果たすべき役割があるはずだ。(引用ここまで)
日中韓の首脳会談が実現していない最大の理由は何か!
1.侵略戦争と植民地主義について反省し謝罪し、補償することは拒んでいる。
2.侵略戦争と植民地主義の加害の事実を教科書に書きたくない!自虐的と批判できなくなる。
3.侵略戦争と植民地主義に対して抵抗した、反戦の運動などを教科書に書きたくない。
4.侵略戦争と植民地主義を反省して制定された日本国憲法を活かす政治をやりたくない。
6.特に戦前の教育を復活(教育再生会議を観れば明らか)できなくなる。
7.靖国神社参拝を正当化できなくなる。
8.以上を認めて首脳会議を開催すれば、繰り返し煽ってきた「脅威」を除去できてしまい、「抑止力」の根拠と憲法改悪の根拠がなくなる。
憲法を活かし使う政権づくりに国民の参加を呼びかける!
こまでも記事に書いてきましたが、戦争の歴史認識と日米軍事同盟の深化の問題と憲法改悪問題、平和の問題だけではく、国民生活の問題、多国籍企業優先政治の問題、原発再稼働や輸出の問題は鋭く、密接にリンクしているのです。日本のマスコミは、これらの問題をバラバラにして垂れ流しているのです。国民が、これらの問題を統一して、一緒の問題として把握できるようになれば、すなわち「俺の、私の生活は憲法を活かすことによってのみ改善できる」という認識をもつことができるようになれば、大きな闘争に発展転化していくのではないでしょうか?
内部留保にみる巨大な大儲けは、国民が汗水流してつくったものであること、中には死をもってつくったものであることが自覚できたとき、国民のために使え!ということになるのではないでしょうか?