法治国家が存立しなかったら
日本はどうなる!
首相補佐官発言/法治国家の存立危機だ
秋田魁新報/2015/8/4 10:05
http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20150804az
安全保障関連法案をめぐり、法的安定性を軽視したとも受け取れる発言をした礒崎陽輔首相補佐官が参院の特別委員会に参考人として招致された。「軽率な発言でおわびする」と陳謝した上で、発言を撤回した。
憲法をはじめとする法律の規定や解釈は正当な理由なく変更されることがないからこそ、社会は安定する。それが法的安定性であり、尊重するのは法治国家として当然だ。
礒崎氏は7月26日、大分市の講演で「法的安定性は関係ない。(集団的自衛権が)わが国を守るために必要かどうかを気にしないといけない」と語っていた。国を守るという大義名分があれば、何でも許されると受け取られかねない乱暴な発言だ。陳謝と発言撤回は当然である。
集団的自衛権は自国が直接攻撃されなくても、自国と密接な関係にある国が攻撃された場合に反撃できる権利で、安保法案の中核をなす。歴代政権は、集団的自衛権は憲法の制約上許されないとしてきたが、安倍政権は憲法の解釈変更により行使容認を閣議決定した。多くの憲法学者がこの解釈変更は憲法の枠を超えるとして違憲と指摘し、法的安定性も損なわれるとしている。
歴代政権が堅持してきた自衛権に関する見解はこうだ。
(1)憲法は自国の存立を全うするために必要な自衛の措置を禁じていない。
(2)ただし自衛の措置は必要最小限度にとどまる。
(3)集団的自衛権の行使は必要最小限度を超えており、憲法上許されない。
安倍政権も(1)と(2)は踏襲。(3)について中国の台頭など日本を取り巻く安全保障環境の変化を挙げて、あくまで自国を守るための限定的な集団的自衛権の行使であれば、必要最小限度内にとどまり、法的安定性も保たれるとの見解を示している。
同じ論理の道筋をたどりながら、結論だけひっくり返すのは無理がある。憲法学者が違憲の根拠とするのもこの点だ。
安倍晋三首相は衆院に続き、7月28日の参院審議でも「憲法の範囲内だと完全に自信を持っている」と答弁した。だが、これは合憲と信じる自分が正しいと言っているにすぎない。
首相は5月20日の衆院審議で野党から説明の不十分さを指摘され、「われわれが提出する法案の説明としては全く正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」とも述べている。
首相が間違うはずはなく、目的のためなら法律も論理も二の次でいいと言わんばかりの態度には、今回の礒崎発言と相通じるものが潜んでいないか。
法的安定性を軽んじ、憲法の解釈変更で集団的自衛権の行使を容認できるとなれば、今後、時の政権が集団的自衛権以外の分野についても都合のいいように憲法を読み替えていくことに道を開きかねない。そうなれば権力を縛るはずの憲法がないがしろにされ、立憲主義も危うくなる。 (引用ここまで)
法治国家の基盤が崩壊したらどうなるか!
想定も不可能か!とっても甘い認識浮き彫りに!
首相補佐官招致/憲法の安定性は国の基盤
山陰中央新報/2015/8/4 12:07
http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=554191033
合法・違法の判断基準が突然変われば安心して暮らせなくなる。法律の「安定性」が重要視される理由だ。特に国の最高法規である憲法は全ての法律の基礎であり、その解釈の安定性は法治国家の基盤といえる。
安全保障関連法案をめぐって「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官が、参院平和安全法制特別委員会に参考人として招致され「軽率な発言で誤解を与えた」と陳謝、発言を撤回した。しかし、撤回したからといって済まされる問題ではない。
安保関連法案は、集団的自衛権に関する憲法解釈を変更し、これまで認められないとしてきた同自衛権の行使を容認する内容を盛り込んでいる。政府は解釈変更で認めるのは「必要最小限度の自衛の措置」で憲法9条の合憲性の範囲内だとして、法的安定性は確保されていると説明してきた。
ところが礒崎氏は7月末の講演で、安保関連法案では「わが国を守るために必要かどうかを気にしなくてはいけない」と述べ、憲法の法的安定性は「関係ない」と発言した。それまでの政府の説明を根底から覆すものだ。補佐官は、政策に関して首相に進言する立場で、今回の法案には作成段階から関わってきた政権中枢の人物である。
問題なのは、この発言が安倍政権の「本音」ではないかと思われる点だ。同じような発言が以前にもある。
中谷元・防衛相は衆院審議で「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定した」と述べた。法案を優先し、憲法の解釈を都合よくそれに合わせる考え方ではないかと指摘され、発言を撤回した。
多くの憲法学者らが法案に対して「憲法違反」と批判するが、安倍晋三首相は「憲法学者と政治家は役割や責任が全く違う。国民の命や国を守る責任は私たちにある」と述べている。集団的自衛権の行使の要件に関しては、時の政権による「総合的判断」を強調する。憲法の法的安定性よりも政治的な判断を優先する姿勢ではないか。
礒崎氏は野党が求めた辞任を拒否し続投する意向を示した。野党は首相の任命責任も追及する構えだ。当然だろう。憲法の安定性を軽視する姿勢は断じて認められない。
法案審議は参院に舞台が移って1週間だが、「違憲性」の問題は解消されていない。「他国」防衛のために自衛隊の出動を認めるという安保政策上の大転換だからだ。
衆院段階の答弁からの修正も目立つ。集団的自衛権行使のケースとして、首相は中東・ホルムズ海峡での機雷掃海をめぐり、イランによる機雷敷設に言及していたが、参院では「特定の国が敷設することを想定しているわけではない」と軌道修正した。
衆院では中国を名指しにした批判は控えていたが、参院に移ると東シナ海で中国が行うガス田開発の航空写真や地図を公表し「わが国をめぐる海の状況が変化した」と強調した。
中国の脅威を訴えて国民の理解を求める考えのようだが、答弁の不安定さは法案の問題点を浮き彫りにする。政府、与党はより説得力のある誠実な説明が求められている。
(引用ここまで)