前回の記事で、北朝鮮政府の「人道に対する罪」を告発し、改善を求める国連の勧告を、「ここぞ!」とばかりに支持を表明し、北朝鮮政府を批判する安倍首相派とマスコミ。しかし、この安倍首相派の言動とマスコミの報道のあり方を見て、「違うな!」と。日朝平壌宣言以来の「対話と圧力」政策の誤りは明らかですが、これに固執するばかりか、この「勧告」を政治的に利用しようとする安倍首相派。それを容認・応援するマスコミを批判しながら、検証してみました。
そこで、今回は、もう一度、安倍首相派をはじめとしてマスコミの、国連を利用したご都合主義について、また戦後自民党政権が日本国内の人権をないがしろにしてきたことを検証してみることにしました。以下まとめてみました。ご覧ください。
1.戦争犯罪「BC級戦犯」について
北朝鮮政府の「人道に対する罪」と大東亜戦争における「平和に対する罪」「人道に対する罪」は別個のものか、安倍首相派の思考回路には、全く想定もないようです。ここに最大のゴマカシがあります。日本国民も、このゴマカシ・スリカエ・トリックを見破る必要があるのではないでしょうか。
同時にマスコミも、安倍首相派の挑発的言動を席巻させるのではなく、「事実」を正しく、適切に、国民に報せるべきです。これが「国民の知る権利」を守る使命ではないのでしょうか。以下、A級・BC級戦争犯罪の区別・違いと同一性、それらの持つ意味についての資料を掲載しておきます。ご覧ください。
(1)C項は、日本の戦争犯罪とされるものに対しては適用されなかった。
(2)国際軍事裁判所憲章第6条c項『人道に対する罪』に関する覚書
①「通例の戦争犯罪」「人道に対する罪」のような道徳的非違性の濃厚かつ明瞭な罪を犯した者こそ訴追され裁判されて当然と一般的には考えられるのであって、極東国際軍事裁判におけるA級戦犯が実はBC級戦争犯罪の容疑者でもあったことが、この裁判の道義的正当性を担保するものであったとも言える…。
②「平和に対する罪」が「通例の戦争犯罪」「人道に対する罪」との連携を解かれた場合に生じる不安定性をも暗示しているのであって、事実、日本の場合、「平和に対する罪」が非常に重大視されたのに比して「通例の戦争犯罪」「人道に対する罪」の適用がはなはだ不明瞭のままで終わったことが、その後の戦争責任論(あるいはむしろ戦争犯罪観)の行方に大きな影響を与えた…。
③その後の戦争責任論(あるいはむしろ戦争犯罪観)の行方に大きな影響を与えた…。
(5)BC級戦犯
(5)BC級戦犯とは? - 日本共産党中央委員会 2006年8月31日(木)「しんぶん赤旗」
2.「慰安婦」問題について
今、「慰安婦」に関する国家・軍の関与を否定する動きが安倍首相派の「オ・ト・モ・ダ・チ」たちによって、国内外の学問研究の成果と動きをいっさい無視した、歴史を冒涜する動きが声高にすすめられています。これは、侵略戦争であった大東亜戦争の正当化以外の何物でもありません。
マスコミが、こうした動きを、歴史の審判のくだった国際的な動き、真実を国民に報せていくことこそが、安倍首相派の動きを封じていくことになるのです。これこそが、侵略戦争の反省の上に立ってつくられた憲法の理念の具体化です。この行為こそが国際社会において名誉ある地位を占めることになるのです。
以下、「慰安婦」問題が、戦争犯罪を裁く裁判などにおいて、さらに国連をはじめとした国際社会において、どのような位置を占めているか、資料を掲載しておきます。ご覧ください。
(1)白馬事件(スマラン慰安所事件、スマラン事件とも)(オランダ軍バタビア裁判69号)
(2)1-1 東京裁判とBC級戦犯裁判 | Fight for Justice 日本軍「慰安婦 ...
(3)従軍慰安婦 資料
(4)クマラスワミ報告=クマラスワミ報告とは1996年1月から2月にかけて国連人権委員会(北朝鮮に勧告した委員会と同じ組織!)に報告された「女性への暴力特別報告」に関する報告書(E/CN.4/1996/53) 。報告書は1996年4月国連人権委員会で作業を「歓迎」し内容を「留意」するという決議が行われている。特に、その報告の「附属文書1における日本政府への勧告」についての資料は、以下のとおりです。この「勧告」について、日本国政府、自民党と政権、安倍首相派は、全く無視し続けてきているのです。北朝鮮政府の「人道に対する罪」の改善を求める「勧告」は「歓迎」・尊重しながら、クマラスワミ報告の「勧告」は黙殺するのです。しかも、維新の会の山田議員の「やらせ」質問に「応え」、河野談話を貶め、見直しを謀ろうとしているのです。
①日本軍によって設置された慰安所制度が国際法違反であることを認め、その法的責任をとること
②日本軍性奴隷制の被害者個々人(元慰安婦)に対し、原状回復と賠償を行うこと
③慰安所について、日本政府が所持するすべての文書の完全な開示
④名乗り出た日本軍性奴隷制の女性被害者、個々人に対し書面による公的謝罪をなすこと
⑤歴史的現実を反映するように教育内容を改めること
⑥慰安所への募集及び収容に関与した犯行者をできる限り特定し、かつ処罰すること
(5)2008年5月14日には、日本の人権状況に関する報告書の中で、慰安婦(日本軍性奴隷制)問題に関する完全な解決を日本政府に対し要求した。(国際連合人権理事会の活動)
(6)東京裁判[21]。1983年5月28・29日の池袋のシンポジウムでソウル大学教授白忠鉉は、東京裁判の欠陥として、日本統治下による人民虐待に対して戦勝国が人道に対する罪に注意を払わなかったことと指摘した[26][21]。他に幼方直吉[27]や、白鴎大学教授清水正義[21][28]、日本民主法律家協会理事で在日朝鮮人・人権セミナー事務局長の前田朗[29]らが旧日本軍の戦争犯罪について「人道に対する罪」違反と主張している。また日本軍の慰安婦制度についても日本・韓国・アメリカの市民団体や研究者らが「人道に対する罪」違反と主張し、2013年1月19日にはニューヨーク州上院議会で日本軍慰安婦制度は、人道に対する罪にあたるとする決議を採択した。
(7)東京裁判で明らかにされていた従軍慰安婦の決定的証拠 - 日経BPネット
3.子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)にもとづく教育の普及ついて
今、安倍首相派は、自民党の改悪改憲案の土壌づくりとして、日の丸・君が代の強制によって物言わぬ教師と学校づくりをすすめてきました。そして、今、その完成版として、偏狭な愛国心・道徳教育を、教科として、教科書によって徹底すること、その教育を徹底させるために教育行政の権限を全面的に改悪すること、更には予算の削減など、予算面で縛ることなどを通して、戦後民主主義教育の「遺産」「残滓」の全面的な改悪を目論んでいます。こうした目論見が、国際社会の到達点・ルール違反であることは明らかです。この国際的到達点を尊重した文部行政をしていたら、日本の教育は、別の展開になっていたことは明らかです。ここでも、北朝鮮政府の「人道に対する罪」は「歓迎」・尊重すると言いながら、以下に掲載する国際社会の到達点は無視をする安倍首相派の実態を検証してみることにします。
(3)国際人権規約/高校·大学の学費無償化条項/留保 日本など2国だけ 2009年6月8日
(4)訳解通弁―海外の反応― : 国連委「朝鮮学校の無償化除外は民族差別 2013年6月16日
(5)朝鮮学校の「高校無償化」除外の問題をめぐり、NGO が7月27日に国連 ...
(6)朝鮮高校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A - Biglobe
(7)ユネスコ総会で採択された勧告一覧/Recommendations:文部科学省
①教員の地位に関する特別政府間会議教員の地位に関する勧告(PDF:56KB)1966
②第18回ユネスコ総会国際理解、国際協力及び国際平和のために教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(PDF:39KB) 1974
③第29回ユネスコ総会高等教育教員の地位に関する勧告(PDF:56KB) 1997
④ユネスコ「学習権宣言」 -
⑤ユネスコの学習権宣言とは? - 日本共産党中央委員会 2001年5月10日
4.「東京裁判史観」の妄言について
安倍首相派は、「勝者が裁く」「東京裁判史観」などと身勝手なことを吹聴しています。これは、スリカエ・デマ・トリックそのものです。一つは、最大の戦争責任者である天皇の責任を免罪したこと、二つは、731部隊にみるように細菌・毒ガス戦などを免罪したこと、三つは、「慰安婦」問題を裁かなかったこと、など、「東西冷戦」が明らかになってきたなかで、「アメリカの都合」を優先したことです。この「アメリカの都合」こそ、現在の日米軍事同盟体制の始まりなのです。このことを安倍首相派は、沈黙しているのです。
しかし、そうではあっても、侵略戦争であった大東亜戦争を終結させたポツダム宣言にみる世界の「潮流」を反映した裁判でもあったのでした。東西冷戦下の始まりを反映して、片面講和ではあったのですが、吉田首相らは、戦争犯罪人を裁いた東京裁判などを認めたサンフランシスコ条約を受け入れたのです。その後、戦争犯罪人らを免責する動きが具体化していきますが、「人道に対する罪」については、時効が適用されないことは、国際社会の到達点・常識中の常識です。
しかし、だからこそ、ここでも、天皇の戦争責任を免罪する自民党政権は、この到達点を認めていないのです。ここに、北朝鮮政府の「人道に対する罪」は「歓迎」するものの、それ以外のものについては、無視をする自民党政権と安倍首相派の不道徳ぶりが浮き彫りになるのです。安倍首相派の応援団であるマスコミも、このことについても、沈黙です。こうした状況が、国民の意識をどのように形成しているか、説明をしなくても、十分でしょう。
そうしたなかで、北朝鮮や中国、韓国などの日本批判に対しては、「反日」を、加害の事実については、「自虐」と叫びならが、アメリカの米軍基地配置と民族的屈辱には沈黙し、むしろ容認しているのです。今、安倍首相派の靖国参拝礼賛について「内政干渉」などと叫ぶようになってきたのです。しかし、それは日米軍事同盟を深化させる立場からのものであると同時に、新大東亜共栄圏づくりをめざした動きの始まりでもあることに、注目しておかなければなりません。
日米軍事同盟深化派の安倍首相派は、アメリカの非人道兵器を使用した原爆投下などについては不問に付していること、このことは、現代の核兵器の使用問題として、さらには核兵器廃絶問題、アメリカの核の傘の下における密約政策などと一体的に捉えていく議論が必要です。同時に、ソ連のシベリア抑留問題と、日本の労働力不足を補うために行われた強制連行問題と、さらには北朝鮮の拉致問題と一体的に捉えていくことが重要です。
しかし、安倍首相派は、このことについても、不問です。「平和に対する罪」「人道に対する罪」を一体的に捉え、しかも、時効は適用されないという国際社会の到達点を受け入れる国民世論の構築、それにもとづく日本国政府づくりが、今、求められていると思います。そのことこそが、ポツダム宣言の真の具体化となるのではないでしょうか。
(1)戦争及び人道に対する罪に対する時効不適用条約 (この条約の存在をどれだけの国民が把握しているでしょうか?!)
(2)1948年 戦争犯罪人に対する裁判と天皇の責任 - 法学館憲法研究所
最後に、以下の資料を掲載しておきます。このセンターに集まられている資料を国会で、マスコミが国民に報せていったなら、維新の会 山田議員のような質問は恥しくてできないでしょう。そういう意味で、マスコミの責任は重大です。そういう意味では、以下の神奈川新聞の記事には大アッパレを送りたいと思います。小野田さんの発言(興味深い証言です!)と比較・検証してみて欲しいと思います。
日本の戦争責任資料センターホームページ 1996年12月7日開設
「売春と慰安婦は違う」 関東学院大・林博史氏、NHK会長の発言で 2014年2月5日http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1402050004/
「従軍慰安婦」問題/注目のキーワード - 日本共産党中央委員会
政府調査結果発表「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」
若干の加筆修正をしました!