樂しみにしてゐた映画「帰ってきた あぶない刑事」を、ご當地橫濱の映画館で觀る。
もう八年前になる前作「さらば──」の締めくくり感から、本當にこれでお終いかな、とやや寂しい氣持ちになったりもしただけに、タカ&ユージが再びヨコハマに帰って来る設定の本作の制作が發表された時は、嬉しさより安堵が先に立ったものだ。
撮影中には人災疫病禍の邪魔が入るなどの困難もあったやうだが、かつて橫濱を熱くさせた公營賭場の問題を織り込むなど、なかなか時事的な脚本と設定で仕上がりを樂しみにしてゐた最新作、ヨコハマを危機にさらす惡人の親玉役が痛恨のミスキャストで、ややコケた氣分に。
タカ&ユージに對峙する一方の主役ともなる役どころを、あんな薄っぺらなドサ回りにやらせるのはいただけない。
いくら顎を引いて相手を睨み上げたところで、しょせんタダのガキがせいぜい背伸びして凄んで見せてゐるだけ──さういふ演技でも演出でもない──、かつて女装ゴッコで名を賣っただけの、見てくれ本位で中身の無いドサ回り根性が露呈してゐるばかりである。
タカ&ユージの娘“かもしれない”二十四歳と云ふ設定の女のコが二人の前に現れるのが今回の主軸で、私も名前くらゐは聞いたことのあるコがそのヒロインを演じてゐたが、容貌(カオ)がつまらなくてイマイチ感情移入できず。
女性刑事役の元“坂道系”アイドルのコのはうが──名前が出て来ない──、拳銃を構へて「警察だ、銃を捨てろ!」と凄んでみせるシーンにちょっとした見せ場をつくってゐて面白かったかナ。
……と、期待してゐたわりに輕妙さばかりが先走って、スパイスとなる骨太な重厚感が今作ではかなり薄い印象はあったが、故人中条静夫さんの當たり役近藤課長の「大バカモン!」の再現シーンあり、
短いながら名車レパードのシーンもあり、往年からのファンを喜ばせるお約束はしっかりと盛り込まれた、まずまずの一篇。
映画のあとは、ロケ地を輕く巡って、
いつもの浮世に戻りけり。
いつもの浮世に戻りけり。