
國立公文書館の企画展「龍─日常にとけこむ神秘─」を觀る。

(※世界最古の“龍”の文字)
【龍】
想像上の神獣にして、皇帝の象徴──ミカドの尊顔を古くは“龍顔”と稱し、我々のやうな下々がうかつに見れば目がつぶれると本氣で信じられてゐた。

しかし日本では古くより、その似た外見から現實に存在する【蛇】と混同されることも多く、歌舞伎十八番の「鳴神」で、雲の絶間姫が龍神を封じ込めた注連縄を蛇(くちなわ)と勘違ひして怖がって見せる件りなども、さうした感覺を踏まへたものだらう。

近代ニッポンの曙である文明開化期においてさへ、水道水の共用栓の吐水口が龍を象ったものであるにもかかはらず、

「蛇口」と呼ばれて今日に至ってゐるのである。
それでも古への日本人は、四足のあるものを【龍】、無いものを【蛇】と、一應は識別してゐた。
蛇のことはさておき、龍は水中にあっては水を操り、地にあっては風を操ると信じられ、江戸中期の公式記録によれば、現在の早稲田界隈で發生した強風によって多くの家屋が倒壊した災害については、「龍が通り過ぎたのが原因」と記しており、

(※「武江年表」に見る該當記事)
もちろん比喩であるにせよ、現在でも使へさうな面白い表現感覺だと思った。