「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           万だの櫻と大和男子

2008-03-22 06:58:52 | Weblog
東京はきのう予定日より一日早く全国に先がけ櫻が咲いた。家の近くの暗渠の櫻並木
の蕾はまだ固かったが、”しだれ櫻”だけ一本、絢爛な花を咲かせていた。”しだれ櫻”は
”万だ(バンダ)の櫻”ともいう。花は豪華だが散るのは早い。

”万だの櫻”というと、僕らの世代は、この歌を想い出す。日露戦役の奉天の歩兵の活
躍を歌ったものだ。
        ▽ 歩兵の本領(作詞 加藤明勝 作曲 永井建子)
          万だの櫻か 襟の色 花は吉野に嵐吹く
          大和男子と生れなば 散兵線の花と散れ。

中学校(旧制)の教練の時間、僕らは軍歌演習といって、教官の指導で、この歌を
声をからして、どなったものだ。そして、軍国少年ならずとも、見事に散って靖国の
社に祀られようと本当に信じていた。そういう時代であった。

僕の住む目黒区の木は「椎」(しい)である。「いやひこの神の御前の椎の木の幾代
へめらむ神代よりかくもあるらし」(良寛)多分、椎の木は幾百年、あるいは幾千年前
からこの地にあったのであろう。ところが、宅地開発でめっきり家の周囲から椎の木
は姿を消し僅かにスダジイが一本残っているだけだ。それも梢の枝を刈られ丸坊主
の無残な姿だ。

万だの櫻のいさぎよさがよいのか、スダジイの無残な老体をさらすのがよいのか大和、
男子は考えたが、やはり命あってのものだねだという結論に達した。