「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           飢餓に苦しんだ時代

2009-06-21 05:40:28 | Weblog
2009年中に栄養不足から世界の飢餓人口は10億2千万人を越え、6人に1人が
餓えに苦しむ事態になるとFAO(国連食糧農業機関)が発表した。今の飽食の日
本では想像もできないショッキングな警告である。でも60年前、僕らは実際に飢
餓に苦しんだ体験をしている。

敗戦の年の昭和20年の亡父の日記(11月12日)には{朝芋(さつまいもいも)入りメ
シ、昼芋の粉のパン、夜同じ。栄養不足からか全身倦怠感。下痢止まらず}とある。
また別の日の日記(5月8日)には「衾(ふすま)のパン。体重13貫200(約50㌔)に
落つ」と書いてある。食糧難前、亡父は18貫の偉丈夫であった。

同じ年の6月、僕らは敵の本土上陸に備えて千葉県の利根運河の浚渫工事に親元を
離れ学徒動員されていた。食べ盛りの中学3年だったが、食事は孟宗竹の食器に盛り
っきり一杯のご飯に韮の味噌汁、おかずは塩ラッキョウといった程度。空腹のあまり、
僕らは農家のアンズの実を盗み、畑の人参をナマでかじった。

食糧難は昭和23年まで続いた。この年4月、僕は大学に入学したが、学校は6月1日
から夏休みに入った。食べるものがなく、教師も学生も勉強どころではなかった。皇居
に”汝(なんじ)臣民餓えて死ね”というのか、とプラカードを持ったデモ隊が押し寄せた
のもこの時代であった。

今、飢餓線上にあるのは、FAOの発表によると、アジア太平洋地域が6億4200万人,サ
ハラ以南の国々5300万人である。FAOの事務局長は「飢餓人口の急増は世界平和、安全
保障に対する脅威である」と警告している。地下核実験をしたり長距離ロケットを飛ば
している北朝鮮も餓えに苦しんでいると伝えられるが、どうなのかー。