「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

   面白いオランダ判事の市ヶ谷A級戦犯裁判回想

2009-11-30 04:40:25 | Weblog
久しぶりに面白い本を読んだ。「ある平和家の回想東京裁判その後」(中公文庫2009年11月)と
題はかた苦しいが、内容は戦後の國際極東軍事裁判(市ヶ谷A級戦犯裁判)の内幕をわかりや
すく書いた興味深い貴重な回想録である。

著者はB・V・Aレーリンクという市ケ谷裁判のオランダ人判事で、彼の当時の体験を戦後、友人の
旧ユーゴ國際裁判所の初代所長だったA・カッセーセ氏が聞き取りの形でまとめた本だ。

市ヶ谷裁判について僕は門外漢で、あまりよく知らないが、戦前戦中の東條英機・元首相らの指導
者が勝者である連合軍の裁判によって”hung by death"(絞首刑)に処せられたのを学生時代ラジオ
で聞いて衝撃を受けたのを記憶している。またインドのパール判事が一人、この裁判で反対意見を
述べた程度の知識はあった。が、レーシンクの名前は初めて聞く名前であり、彼が連合軍側判事の
中で五人の被告に無罪を主張していたことなど知らなかった。

さらに驚いたことには、彼がはっきりと市ヶ谷裁判は勝者による一方的な裁判だとし、ほとんどの裁判
関係者がマッカーサー連合軍司令官によって任命されていたことを認めていること。またウエーブ裁判
長が独裁者で、他人の意見を聞かない人物で一緒に食事もしなかったという。

もう一つの驚きはレーシンク判事が日本文化について造詣があり、西欧人には珍しく大東亜戦争につ
いて日本が主張していた「正義」に理解を示していることだ。彼はまた法廷での日本人被告の大半が
一流の卓越した人物だったとも言っている。

オランダはBC級戦犯裁判では、連合軍側にあって最多の236人を死刑にしている。意外な感じを受けた
が、歴史とはそういうものなのだろう。