「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

NHKは何故「軍歌」を放送しないのか

2015-03-06 06:20:05 | Weblog
NHKは「軍歌」の取り扱いにについて何か特別な放送基準があるのだろうか。昨日の早朝のラジオ「深夜便」の”日本の歌心の歌」コーナーで作詞家佐伯孝夫の特集があるというので楽しみにしていたが、彼の戦時中の名曲「ラバウル航空隊」が流れてこない。変って「明日はお発ちか」放送された。二つの歌とも、戦時中少年時代を送った僕には懐かしかったが、どちらかといえば「ラバウル航空隊」の方が当時ヒットした作品ではなかっただろうか。

「深夜便」は放送開始25年だそうで、先日東京でファンの集いがあって盛況だった。僕もそのファンで、特に午前3時代の「日本の歌心の歌」を楽しみにしているが「軍歌」が放送されたことがない。戦時中を生きてきた世代にとっては、毎日のようにラジオから流れてくる「軍歌」は、数少ない娯楽のようなものであった。今からみれば、軍国主義を煽動した”悪物”かもしれないが、当時はそうではなかった。

”歌は世につれ、世は歌につれ”と俗にいうが、確かにそうである。佐伯孝夫の作品を改めて調べてみる、日支事変前の「こんがらがっちゃ嫌よ」(昭和11年)は、戦争前の退廃的な空気を反映しているし「森の小径」(15年)「燦めく星座」(15年)は戦時中とはいえ、大東亜戦争前の歌である。大東亜戦争期の歌は「明日はお発ちか」(17年)「ラバウル航空隊」(19年)が代表作だ。そして戦後は、がらっと変わって「東京の空の下」(23年)「東京のカンカン娘」(24年)である。

視聴者としては、佐伯孝夫の作品を通じて、その時代時代の自分の生きてきた道を振り返ってみたくなる。「明日はお発か」を久しぶりに聞いて僕は嬉しかった。多分「明日はお発か」は”勇ましくない”「軍歌」なので放送されたのかもしれない。同じ内容でも、”わが大君に召されたる”で始まる「出征兵士の歌」(生田大三郎作詞)は金輪際、NHKの電波に乗ることはなく、忘れられていく運命にある。