「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

”モスリンの郷”モスルの文化遺産を破壊するISの蛮行

2015-03-09 05:43:10 | Weblog
「イスラム国」(IS)がイラク北部の町モスル近くにある2000年前の世界遺産ハトラの都市遺構を破壊し始めたという。ISはすでにモスル博物館にある古代の石像をハンマーや電気ドリルで壊している。彼らは7世紀前後のイスラム創生期の文明以外は認めず、偶像崇拝禁止のイスラムの誤った原理に従って、この擧に出ているらしい。

モスルの名前を聞いて、僕は半世紀以上前、新聞社の新年企画”アラビアン.ナイトは生きてる”という連載を書く時読んだ「千夜一夜物語」の中の”モスルのイアサク”を想い出した。内容はすっかり忘れてしまったが、たしかイアサクというモスルから来た商人が色々珍しい話をお姫様にする話ではなかっただろうか。その時、僕はモスルが、日本で”モスリン”と呼ばれている布地の産地の語源であるのを知った。モスルは昔、砂漠を行く隊商宿だったらしく、ここで出来た布地が遠く日本にまで伝わってきた。

日本にも明治維新の前後に”廃仏毀釈”運動があって、全国の仏教の寺が壊されたり仏像が破壊された。奈良の興福寺にあった食堂や千葉の鋸山の五百羅漢の仏像などは、この時破壊された。”廃仏毀釈”は仏教を廃し釈迦に反対するという意味だが、本来は神仏習合を廃止して分離しようという運動だったらしいが、これが誤って解釈されたようだ。

モスルは世界三大文明発祥の地、チグリス.ユーフラテス地域にあり、その歴史は日本の比ではない。2000年、3000年の悠久の歴史の中で残存してきた歴史遺産が、偏見ともいえる宗教観からこのように破壊されるのは見るに耐えない。世界人類共通の財産である。ユネスコは世界各国に呼びかけて即時ISの行動をスットプさせなければならない。