その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ウィーン旅行 (その2) 楽友協会でウィーンフィル(Wiener Philharmoniker)を聴く

2010-05-31 17:50:12 | コンサート (in 欧州)
 ホテルで1時間ほど昼寝して、万全の体調でコンサートホールに向かう。

 楽友協会大ホール。まさに世界のクラシック音楽の殿堂たるオーラが、建物の内外に満ち溢れている。いよいよ聖地に足を踏み入れるのだ。ホールに向かう階段や廊下を歩くときはは思わず、新入社員から5年間の現場仕事の経て、初めて本社に転勤となって本社ビルに足を踏み入れたときの緊張感を思い出した。幾何学模様の美しいのホワイエの天井が印象的。





 中に入るとそこには西洋版金色堂があった。まさにピカピカ。天井にはギリシャ神話の神々だろうか?人間離れした人たちの絵が描かれ、壁には誰かはわからないが彫像が囲んでいる。これが楽友協会大ホールかと思うと感慨も一潮だ。やっと、ここに来れた。しかもウィーンフィルのコンサートだ。思わず、写真を撮りまくる。日本人老若男女のクラシックファンも相当数いた。みんな、うれしそうにシャッターを切っている。そりゃ、うれしいに決まっている。





 演奏も素晴らしいものだった。開演前は私なりの不安があった。ラストのプロコフィエフを除いては、生どころかCDですらも聴いたことが無い曲ばかり。それも、比較的現代ものばかりの選曲はどうもウイーンフィルのイメージとも合わない。どうせなら、コテコテの古典派やロマン派のプログラムが良いのにと思った。ただ、指揮は日頃からLSOで聴いているゲルギー、そしてヴァイオリンはロンドン、ザルツブルグでも聴いたスナイダー。一番お気に入りのヴァイオリニストなのが救いだった。

 一曲目はフランスの作曲家アンリ・デュティユー(Henri Dutilleux)の曲。結局3曲の中でも最も現代モンぽかった。耳に馴染むどころか、思わず耳をふさぎたくなるような不協和音の連続。でも、これだけ耳に馴染みにくい音楽を素晴らしい演奏に纏め上げるのはWPOの力と言わざる得ないだろう。バランス、ハーモニーいずれも巣晴らしかった。ただ、ちょっと観光の聴衆にはつらかったのか、拍手は1回きりのカーテンコールだった。

 二曲目はエルガーのヴァイオリン協奏曲。ここでは、スナイダー君のヴァイオリンが炸裂。第1楽章の迫力、第2楽章の繊細さと優しさ、第3楽章は集大成。素晴らしい演奏でした。WPOとの呼吸もピタリでした。ただ、これは曲自体が長すぎた。初めて聴く人が多いと思われるこの曲で、40分クラスの演奏時間は正直、聴くほうは集中力が途切れます。第一楽章で終わりかと思って拍手した人も何人もいたし。ちょっと、疲れちゃうのが難点。





 メインはプロコフィエフの交響曲第5番。これも素晴らしい演奏。揃った弦、自己主張しながらも全体の調和を決して乱さない金管が、合わさって素晴らしい迫力演奏。第2,4楽章のバレエ音楽風の音楽がとても気に入った。ゲルギーはLSOよりもかなりアクションが派手で、変幻な動きで音楽を作っていた。いつもと結構違うので、意外だった。






 満足感一杯で会場を後にした。コンサートでの熱気で熱を発している頬に夜風がなんとも心地よい。夜のライトアップした楽友協会もまた美しい。




2010年5月28日


≪ウィーン旅行シリーズ≫
 (1)ウィーン旅行(その1) 百像の街


Freitag, 28. May 2010
19:30 - Großer Saal
End: approx. 21:40

Artists:

Wiener Philharmoniker
Valery Gergiev, Dirigent
Nikolaj Znaider, Violine

Program:

Henri Dutilleux
"Mystere de l´instant"
Edward Elgar
Konzert für Violine und Orchester h - Moll, op. 61

-------- Break --------
Sergej Prokofjew
Symphonie Nr. 5 B - Dur, op. 100
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウィーン旅行 (その1) 百像の街

2010-05-31 17:45:25 | 旅行 海外
 朝7時40分Gatwick空港発のEasyJetでウィーンに向かう。出発が30分ほど延びて、到着は11時頃。空港と街を結ぶバスが丁度発車したばかりだったため、ホテルにチェックインしたのは12時20分頃。荷物を降ろして早速出撃。

 今日は天気が良く暑いぐらい。ポロシャツ1枚でもいいぐらいだが、念のためジャケットを羽織る。昼飯を迷ったが、ゆっくり食べるほどさしたる食欲が無かったため、屋台のピザですませる。意外と上手かった。ロンドンの屋台ピザよりずっと上手い。

 まずは、街のへその教会に向かって歩く。街の雰囲気はとても洗練された雰囲気。プラハを明るくしたような感じでなかなか良い。街幅が広く余裕がある。趣向を凝らした建物が多く、歩いているだけで楽しい。暑いせいかもしれないが、やたらアイスクリームを食べている人が目に付く。それも随分大きいサイズだ。

(ウイーンのへそ シュテファン寺院)


(シュテファン寺院から延びるグラーベン)


 定番どおり王宮へ。建物のスケールが大きいので驚く。華やか。ハプスプルグ家恐るべし。少年合唱団の日曜日のミサの残券を確認しに行ったが、生憎昼休み中。王宮の敷地内を散策。やたらでかい彫像がある。ウイーン史における有名人物ばかりなので私にもわかるが、とても程よく品のある彫像でウイーン的。建物も派手だがフランスほどでもなく、ごてごて感はなく、いかにも欧州的で私好み。

(王宮入り口 観光用の馬車が常に出入りしてます)


(オイゲン公騎馬像と後ろは新王宮)


(フランツ2世像)


(カール大公騎馬像)


 チンチン電車に乗って、楽友協会に夜のウィーンフィルのチケットを取りにいく。これがまた噂にたがわぬ豪華絢爛な建物でさすが。

(ウイーンの路面電車はなかなかシックで良い。このほかに新型の綺麗な車両もある)


(クラシック音楽の聖地であり、殿堂である楽友協会 有名なニューイヤーコンサートを行うところです)


 今一度、王宮に戻って、モーツアルトの彫像の写真を撮った。それにしても、ウイーンは、少し歩けば彫像にあたる。プラハは「百塔の街」と言われているが、さしずめウイーンは「百像の街」だ。百以上は間違いないくあるだろうから「千像の街」かもしれない。

(こんな綺麗な彫像を建ててもらえればモーッアルトも嬉しいだろう)




 再び少年合唱団のミサのチケット売り場に。幸運にも、まだ数枚残席があったので、一番高いのを買った。€29也。

 夜のコンサートまで中途半端に時間があるので、本来の計画どおり美術史博物館へ行こうかどうか迷ったが、夜に備え、ホテルに戻って昼寝をすることとした。


 2010年5月28日
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロイヤル・オペラ・ハウス 「連隊の娘」 (La Fille du régiment)

2010-05-31 06:18:25 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 思いっきり楽しませてもらいました。ドニゼッティのオペラ「連隊の娘」です。笑いあり、ほのぼの人情あり、美しい歌があり、最高でした。

 この日の盛り上がりの第一人者は一にも二にも、マリーを演じたNatalie Dessayだと思います。Natalie DessayによるMarieは、もうロイヤルオペラとしても3シーズン目とのことですが、まさに当たり役だと思います。歌もさることながら、動きや表情など役つくりにかなりのエネルギーが使われそうなMarie役を見事に演じていました。歌の表現の豊かさ、演技の柔軟性など、素晴らしかったと思います。

 トニオは、今回の公演の目玉でもあったフローレンスではなく、今回はコリン・リーでしたが、彼も安定した、うっとりするテノールを聴かせてくれました。彼のアリアのは観衆からも「ブラボー」が連発されていました。

 他にもシュルピスのAlessandro Corbelli、伯爵夫人のAnn Murrayもしっかり脇を固めて、とても安定感のある舞台作りに大いに貢献していたと思います。

 指揮のBruno Campanellaさんは初めてでしたが、おっとりした美しい音楽を奏でてくれました。とても幸せな気分になることができるものでした。
 

 (この日は8ポンドの立ち席。立ち席は安いだけでなく、絶対、眠らないというメリットがあります)


 前列の中央の女性がマリア役のNatalie Dessay。左がトニオのコリン・リー。


 指揮のBruno Campanellaです。




La Fille du régiment

Thursday, May 27 7:30 PM
Credits
Composer Gaetano Donizetti
Director Laurent Pelly
Associate Director Agathe Mélinand
Dialogue Agathe Mélinand
Set Designer Chantal Thomas
Costume designs Laurent Pelly
Lighting Joël Adam
Choreography Laura Scozzi

Performers
Conductor Bruno Campanella
Tonio Colin Lee
Marie Natalie Dessay
Sulpice Alessandro Corbelli
La Marquise de Berkenfeld Ann Murray
Hortensius Donald Maxwell
La Duchesse de Crackentorp Dawn French
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする