
圧巻。
きょうは新番組のテーマ曲の生演奏収録。
その現場での出来事。
乃木坂駅を降り、ソニーの音楽スタジオへ入る。
時間になって、ミュージシャンたちが集まりはじめる。
「ああ、お久しぶり」という挨拶が飛び交う。
ミュージシャン同士は、今の今まで誰が来るのか知らなかったようだ。
これから4時間で、新曲の生演奏を収録し、整音まで仕上げるというのに、
事前に楽譜も見ず、共演者も知らず、間に合うのだろうか?
楽器をセッティングし、
楽譜を見ながらの打合せが始まる。
楽譜には音符などほとんど書かれていない。
メイン旋律以外は、各ミュージシャンがアドリブ演奏する小節数が書かれているだけだ。
7人のミュージシャン全員が、バラバラと音出しを始める。
聞き慣れない用語が飛び交うごとに、全員の方向性が一致して行くのが分かる。
音楽プロデューサーが調整室からマイクで話す。
「じゃあ一回通そうか。スピードは220。冒頭のドラムは8小節と2拍でやりにくいけど、なんとかして」
ドン! で演奏が始まった。
圧巻。
一発で、初めての曲を、ほとんど完成に近い形で演奏した。
録音に向けて、私の要望を言う。
「それは難しいな~」と言いながらも、ミュージシャンたちは笑顔だ。
「それならこんなのは?」「ああそれはいいね、それならこっちはこんな風にしたらどう?」
目の前でムクムクと新曲が作られて行く。
そして、一発で収録は完了した。
各楽器は別ブースで録音しているため、アイコンタクトなどは一切できない。
しかし、まるで示し合わせたように、ソロが入り、ドラムが加わり、
長年連れ添って来た相棒同士のように7人の音が舞い踊った。
ああ、この世には、すごい人というのがまだまだいるのだ。
