
吉田カズアキさんは、音の魔術師。
私が駆け出しの頃からお世話になって来た
超ベテランだ。
番組作りの手順は、大まかに言うと
撮影→オフライン編集→本編集→音づくり
となるのですが、
カズアキさんはこの最後の「音づくり」のオペレーター。
番組作りの最後に、音楽、ナレーション、現場音の中から必要な音を選び出し、整えて、
気持ちよく音が聞けるように作ってくれる人。
このオペレーターの腕が悪いと、笑えるところも笑えなくなっちゃうし、
ステキなシーンも台無しになっちゃう。
逆に、腕の良いオペレーターさんにかかると、
聞こえなかった音が聞こえるようになるし、
肌が粟立つほど気持ちよく音楽に浸ることもできる。
私は、カズアキさんを超える腕の持ち主を知らない。
なので、私が携わって来たほとんどの番組を担当してもらった。
狂言師のドキュメンタリーでは、私が録った粗悪な音声を
上品な音に変えてくれたし、
自転車探検部では、音楽と現場音のバランスを絶妙に設計してくれた。
まさに神業。魔法の腕。
「最後はこの腕に頼れる」それは私の大きな支えだった。
そのカズアキさんが、引退する。
「大好きな自転車に乗って、のんびり暮らすんだ」と
明るく振る舞っていたけれど、
たぶん、理由はそれだけではない気がした。
おそらく、ご家族にたいへんなことが起こったとか、
何かあったに違いないが、
そういった暗い話は決して話そうとしなかった。
ただ、明るく笑って、力いっぱい握手してくれた。
さびしい。
心の支えを失い、ぽっかり穴があいてしまったようだ。
この穴を埋めるのは、きっと、これまでの作品を越えるものを作ることしかない。
とんだ置き土産をもらっちまったよ。
カズアキさん、どうか元気で。
走り続けていれば、必ずまたお会いできると信じています。
渾身の作品ができたら、ご連絡します。
その前に、その作品を作る時には、力を貸していただくかも☆