自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

のりくらロケ。

2016年08月30日 09時53分05秒 | チャリダー★



乗鞍。すごかった。

私に課せられたミッションは
「坂バカ女子部の撮影と女子トップの撮影」。
アゼルバイジャンのおかげで1ヶ月走れなかったけど、
なんとかバイクと体の一体感だけは復活させて臨む。
体重は…1ヶ月にわたる「ケバブ生活」がたたって60kg。
でも睡眠はちゃんととったので、体調は悪くない。


台風でぜったいフルコースはないだろうし、
暴風雨でも走るぞと腹をくくっていたのだけれど、
結果的には晴れて4年ぶりのフルコース(20.5km)。
走りきれるかなあ?


朝7:00。
ヒルクライマーの全日本、と呼ばれる
チャンピオンクラスがスタートしていく。
森本さんら「神々」と称される超人たちが
山の向こうへ吸い込まれてゆく。
ああ、あと3分で私も出走だ。




女子トップ、といえば、間違いなく金子広美さん。
全日本のメンバーであり、乗鞍4連覇中の女王だ。
撮影のチャンスがあるとすれば、スタート直後しかない。
金子さんの右後ろにカメラを搭載した自転車ベタ付きで待機する。
スタートで遅れたら、もう絶対追いつけないもんね…。


7:03分、スタート。
金子さん飛び出す。
女性の足自慢たちがそれに続く。
金子さんを頂点とした鋭角の三角形が、乗鞍岳にむかって突き進む。
パワーは…290W。
1km地点の手前で、集団が千切れ出す。
まずい、私の前の女性が千切れた。
すぐさま飛び出し、金子さんの小集団に食らいつく。


2km地点。
先頭は金子さんの独走になる。
なぜか私がその後ろについて走ってる、という奇妙な図。
280W。
このまま7km地点の三本滝まで行ったら、そのあと撮影できそうにない。
私は上半身を小刻みに動かして走る美しいフォームを見送り、
足を緩めて女子部員たちを待った。





女子部員Aを撮影したら、女子部員Bのところへ下がり撮影。
しばらくしたら、女子部員Aのところへ上がって撮影。
そしてふたたび女子部員Bのところへ。
すばらしいインターバルトレーニング。
しかも女子部員の位置を確認するために何度も振り向いていたら、
首の筋がつってしまった。
撮影って、大変なんですよ☆



実はフルコースを初めて走れた私。
撮影しながらでタイムは1時間26分。
1時間20分ぐらいはいけるかも。
いつか撮影なしで上ってみたいなあ。






下山まで時間があったので(4000人の大行列に並びたくなかった)、
山頂に行ってみることにした。
山頂からは、上がって来た道のりが一望できるらしい。
これは撮っておくべし!
しかしスニーカーはふもとに置いてきちゃった。


てなわけで、ビンディングシューズでよちよち登山。

30分、歩きにくかった。

しかも山頂の天文観測所まで行ったが、雲の中だった…。







ゴール地点で、アイドル筧五郎さんとまったりおしゃべり。
今年はパンクしなくてよかったね、56さん☆







下山し終わると、前輪のクイックに蜂がとまっていた。
クイックをなめているみたいだ。
見えないけれど、私の汗がついていて、
そのミネラルを取っているのかもしれない。
世界は不思議だらけだ。





チャンピオンクラスは山の神が3連覇。
ゴールは4名のスプリント勝負だったそうだ。
映像はバッチリ撮れたらしいので
今回は、去年できなかった
選手たちのこまやかな内面を描く番組にできるかも。


さあ、その前に、別な放送回の編集をやっつけて、
今日から東北ロケに行ってきます☆



帰国しました!

2016年08月23日 17時05分19秒 | 自転車



アゼルバイジャンから帰りました!
3週間ぶりにバイクにまたがると、
やっぱり走る感覚がどこかへ行っている。
ロケ中は、朝6時起き→夜11時ホテル着 の連続だったので
毎晩ケツ筋スクワット100回するのがせいいっぱい。
…ロードバイクって、こんなに乗りにくかったっけ。





とにかく無事に帰れてよかった。
アゼルバイジャンは、標高4000mオーバーの
コーカサス山脈の東端にある国で、
山脈に沿って人々を撮影していると、
どうしても山の上のほうに行ってみたくなる。


大乾燥地帯で出会った牛飼いが、
「羊飼いたちは、暑い夏は山脈を越えて北側に行ってる」
なんて言うもんだから、行ってみた。
崖っぷちの砂利道を走り、川を越え、
やがて轍(わだち)は原野に消えた。
そこにほんとうに羊飼いがいた。





地の果てに来た。
そう思った。
すぐ向こうに標高4400mの山が見える。
言葉はアゼルバイジャン語ではなく、この地域独自の言語。
3重通訳だ。
これが問題だった。





我々→通訳1→通訳2→通訳3→羊飼い。
これはもどかしい。
しかも、通訳2のアゼルバイジャン人がトンチンカンで、
ここでほとんどの質問が別な質問に変えられてしまう。
「羊は何頭いるのですか?」程度の質問も、帰って来る答えは
「今日の天気はよかったです」



…とにかく、無事に帰りました。
川で車ごと流されそうになり、
山道で車が横転しそうになり、
通訳のことで頭の血管が切れそうになり、
でも帰ってこられてよかったです。


今週末は乗鞍で自転車にのって撮影です。
大丈夫、バイクに小さなカメラを付けるだけです。
走りきれるか、のほうが問題ですけどね…★

美形だらけ…。

2016年08月17日 16時19分13秒 | おしごと日記

アゼルバイジャンは、東西文化の交錯する地で、
暮らす人たちの顔ぶれもさまざま。
アジア系。
モンゴル系。
インド系。
ヨーロッパ系。
※人類学的な分類じゃありません。


これがまた、いい具合に混ざり合って、
美形な人の多いこと!





山奥の村で会った男の子。





数年前まで道が通っておらず、
今も独自の言語が使われる秘境で出会った女の子。
2歳ぐらいかな。





村の青年たち。
写真よりも実物の方が
ハッとするぐらい美形です。
だって、ほとんどの人が8頭身で、
足はスラリと超長いんだもん。
ずるいよね。





村の少女たち。
こっちに興味はあるけど、撮ろうとすると
「あっかんべー!」をして隠れちゃう。
これがまた可愛い。





ほかにもたくさん美男美女に出会ったけど、
みんなシャイなので写真撮れなかった。




ちなみに、私はこの国で、何度もこう言われました。
「おまえウズベキスタン人?」
私にも、遠い時代の遠いどこかで、
どこかの民族の血が混ざっているのかもしれません。

4輪車天国。

2016年08月13日 22時42分11秒 | おしごと日記
アゼルバイジャンでは、まったく自転車を見かけません。
平らな土地もたくさんあるのですが、とにかく走ってるのは4輪車だけ。





走る車は、超高級なベンツか、
オンボロのソ連製ラーダ。
ベンツに乗ってるのは、まずまともな仕事ではないですね。
たぶん石油関係で儲けてる人。
でも、話すと意外と素朴で、
ことごとく上から目線で接してくるアラブの金持ちに比べたら
そんなに悪い奴じゃない。


ソ連製のラーダは、たいてい40年ものの「超」がつくほどボロボロなのですが、
とにかく速い!
バイーン! といって、かっ飛ばしていく。
この国の山岳は勾配20%オーバーがザラなのですが、
まったく問題なく登っていく。
恐るべし、ラーダ。

もちろん、故障は日常茶飯事で、
道でボンネットを開けてボンヤリ立ってる人にも
たくさん出会いましたが、
「走る」以外の機能がまったくなシンプルな作りなので、
ほとんどのドライバーは自分で直せるんだそうです。




さて先日。
そんな車だらけの道で撮影をしていたら、
真後ろから「クシャ」という音がした。
見ると、なんと車が横転している。





車の中は、ブドウがぎゅうぎゅうに詰まっている。
市場かどこかにブドウを運ぶ途中で、こんなことになったようだ。
運転手が「あ〜あ」という顔で立ち尽くしている。


すると、通行中の車から、わらわらとおっちゃんたちが出てきて、
みんなで車を押し出した。
もう、手伝うのが当たり前、という空気で、
えっさ、ほいさと掛け声かけて、
横転した車を立てようとしている。


車はどうやらペラペラなので、
これだけの人数がいれば起こせそうな気がしたが、
そうは問屋がおろさなかった。


えっさ、ほいさと車を揺すったら、
ペラペラの車はクニャクニャ曲がって、
まるで猫じゃらしをモミモミすると出てくるように、
トランクのぶどうが出てきちゃった。

えっさ、ほいさ。
ぶどうコロコロ。
えっさ、ほいさ。
ぶどうコロコロ。


ここまでは微笑ましかったのだが、
運命は彼らを放っておかなかった。
ドボドボとガソリンが漏れ出したのだ。


車を揺さぶるほど悪化する状況に、
おっちゃんたちも諦めたようだ。



しかし。
話はこれで終わらなかった。
一縷の望みを託していた運転手の兄ちゃんは、
どうやらダメなことがわかり、頭をかかえてしまった。
そして、あろうことか、タバコに火をつけた。

まさかこの状況で、タバコを吸い出す人がいるとは思わなかった。
兄さんはそのまま、オイルが漏れている自分の車を
色んな角度から覗き込んだ。
こぼれたオイルまで20センチ。
私たちは、うわー、うわー、やめてくれー、と
状況を見守った。



そうこうしているうちに、
さらに恐ろしい事態になった。
漏れたオイルが道路に広がり、
通る車がスリップしだした。
オイルを踏んだ車は、もうタイヤがグリップしないので、
スリップしながら路上でクルクル回り出した。
あっちの車がクルクル。
こっちの車もクルクル。
警察が来たが、談笑しているだけで
特に交通整理をするわけでもない。
こんなに車がクルクル回っているのに、一台もぶつからなかったのは
奇跡を見るようだった。



我々は、いつまで見てても危なっかしいし、きりがないので、
立ち去ることにした。
横転した車を助けようとしていたおっちゃんたちも、ぼちぼち去り出した。
と、おっちゃんたちが、車を横転させた兄ちゃんに、
何か言いながら、何かを渡している。


お金だ。


表情からは、「力になれなくてすまん」と言っているようだ。
とにかく、ほとんどの男たちが、兄ちゃんにお金を渡した。
この国では、ああいうおっちゃんたちの収入は、
月に1万円から2万円ほどだそうだ。
物価が安いとはいえ、もちろん生活は苦しい。
それでも、当たり前のように渡した。
それまで大騒ぎして見ていた私たちは、何も言えなくなり、黙った。




こうした助け合いは、イスラム教徒によく見られる風景だそうだ。
祈りの日には、モスクで炊き出し。
金に困った人がいれば、だれからともなくスッとお金が差し出される。
私は、これまでほとんど触れて来なかったイスラム教の何かを、少しだけ見られた気がした。




番組には出てこない話。その1。

2016年08月12日 02時41分50秒 | おしごと日記
しばらくぶりの更新でございます!
なぜしばらくぶりかというと…ここにいるからです。





アゼルバイジャン共和国。
…と聞いて、パッと場所がわかる人は相当なマニアですね。
カスピ海の西側、イランの北、トルコの東、
首都は世界一の油田で有名なバクーです。


さっそくカスピ海で、あるものの撮影をすることになったのですが、
困ったことに、船には3人しか乗れないという。
カメラマンと船頭さんが乗ったらおしまい。
うーむ、今回は現場をカメラマンに託すしかないのか…


悩ましい顔をしていたら、
現地のおっちゃんが満面の笑みで
グッと親指を突き出した。
「心配するな、ちゃんと船を用意したぞ!」





ないだいこれ。
足こぎボートじゃんか。
これでモーター付きのボートに追いつくわけがない。


「心配するな! お前サイクリストだろ?」


そうだ。私はサイクリストだった。
それに撮影現場にいるには他に方法はなし。
行くしかない。


と、決意を固めて船に乗ったら…





なんだよ、漕がせてくれないのかい。



しかも。





途中で釣りを始めやがった。


そうこうしているうちに、遠くにポツンと見える船では
撮影が終わってしまったようだ。
いったい私は何のために、こんなボートに乗ったのだろうか…。


カメラマンの乗った船が引き返してきて、
撮影内容を確認。撮りたいものは撮れたようだ。
30分かけて漕いできた私達も、引き返すことになった。
あ〜あ、みんなを浜で待たせることになるなコリャ。


3人で浜へと引き返す。
それだけならまだマシだった。
なんと、この足こぎボートを用意して釣りまで楽しんだおっちゃんは、
突然ザブザブと泳いで、あっちの船に乗り換えて
帰ってしまった。
なんだよ、3人しか乗れないんじゃなかったのかよ。





残されたマッチョな兄さんと、
二人でこぎ始める。
おお、これは結構なペダリングの練習になるぞ。
パワーでいうと、200Wキープをイメージ。
汗がボタボタ流れ出す(気温35度)。


それだけならまだマシだった。
ここでさらなる問題発生。
舵がこわれて、船がくるくる回りだしたのだ。


浜で見ていたカメラマンは、
私達がなぜ海上でくるくる回っているのか
謎だったらしい。
とにかく舵が言うことを聞かず、ひたすら時計回りに
くるくる。


マッチョな兄ちゃんが、アゼルバイジャン語で何か言うと、
ザブンと海に飛び込んだ。
どうやら舵をまっすぐに押さえてくれているらしい。
私ひとりで漕がねばならなくなった。





ぬおお!
重い!
あの兄ちゃん、けっこうなパワーで漕いでたんだな。
一人になった途端、まったく進まない。
汗が噴き出す。
太ももがパンパンになる。
浜まであと500m。
…遠いけど、これは漕ぐ以外に選択肢がない。


しかし。
それだけならまだよかった。
話はまだ終わらなかった。
浅瀬に入り、あと少しで浜に着く、というところで、
舵を押さえていた兄ちゃんが船から離れた。
すると、船がめちゃくちゃ軽くなった。


…あんにゃろう。ぶら下がっていやがった。





けっきょく30分かけて行った沖から、
40分かかって戻って来た。
疲れた…。


船に乗ってさっさと戻って行ったおっちゃんは
すでに姿なし。
汗だくでボーゼンとする私に、
ぶら下がって楽していたマッチョな兄ちゃんがこう言った。


「ヤフシヨー(よい旅を)!」