自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

ミャンマーのおんがく。

2015年04月09日 00時43分45秒 | 世界自転車探検部



旅をしていて心がけているのは、
出会いのあったシーンそれぞれの「印象」を
脳に焼き付けておくこと。


そのシーンを決定づける人の言葉。
心奪われた表情。
その瞬間のにおい。
切なさ、喜び、悲しみ、怒り、はかなさ、などの感情。


それは私の場合、記憶の中に
音楽に近い状態に結晶して残ります。


なので、番組についている音楽は
私が現場で感じていた空気に近いものなんです。
現場にいた私たちが感じた空気を伝えることが
一番だと信じているからなのですが……



てなわけで(?)、ミャンマーの旅の楽曲について
お問い合わせいただいていた皆様、お待たせしました!
いくつかメインとなる曲名などをお知らせしますね。


ヤンゴンから走り出したシーン
♪SHOWER YOUR LOVE / KULA SHAKER

市場でナマズを食べたあとの走行シーン
♪We All Stand Together / Paul McCartney

トラックで山道を登るシーン
♪Shakiamuni Vesak / X-Bass FEAT. Champa Dechen

「橋が折れてる」と聞いて船に乗ったシーン
♪Scythian Empires / Andrew Bird

赤土の道を走るシーン
♪ME AND JULIO DOWN BY THE SCHOOLYARD / PAUL SIMON

動く地図と首都ネピドーなどの走りのシーン
♪Mone Khaing Tine Ma Mone Naing Bu / Sai Htee Saing

インレー湖を船で渡るシーン
♪Seytcha Seytcha / ERIC SERRA

インレー湖をあとにして、山々を越えて行くシーン
♪Gone, Gone, Gone / PHILLIP PHILLIPS



もし、他にお知りになりたい曲があれば
またご連絡下さい。
ただし、今回も多くの曲がミャンマーの曲のため、
曲名がまったく読めません。
その場合はご容赦いただくかも…です☆



ミャンマー15分版!

2015年03月30日 00時29分42秒 | 世界自転車探検部



ミャンマーの旅も最終コーナー。
いよいよ15分版の放送ですね。
今回も旅人ご本人のナレーションで、
旅を新たな目線でお楽しみ頂けると思います!



世界自転車探検部 ミャンマーの旅 15分版(15分×2本)
①3月30日 20:00~20:15
②同日   20:15~20:30

(…連続で放送するので、30分版を見る気分ですな)




先日、ナレーションどりのスタジオに現れた山陽さん。
一度映像をご覧いただいて、
こんなナレーションで行きたい、という相談をする。
あの場で自分はこんな思いだった。
こういう思いをこの5秒のナレーションに込められないか。


それはそれは、贅沢な時間でした。
その場の全員が、山陽さんが現場で感じたことを
自分の頭の中をひっくり返し、言葉にして提案し合う。
そんな末に出来たナレーションです。
もちろん「まだこんなシーンがあったのか…」という未公開シーンあり。
すべて編集もやり直したので、同じように見えても実は違ったりします。
ぜひお楽しみ下さい。


ちなみに、スタジオでの山陽さんは、
着いたとたんにババっと服を脱いで、半袖一丁(3月)。
北海道出身だからって、この時期に半袖ですかい???

今夜9時はミャンマーで!!

2015年03月18日 08時50分52秒 | 世界自転車探検部



今夜、まずは50分版の放送です!!

「世界自転車探検部#14 ミャンマーの旅」
3月18日(水)夜9時~(50分)


飛び入り参加した「めちゃくちゃステキな」村の大運動会。
2年前まで紛争地帯だった場所で暮らす人たちの
信じられないぐらい明るい笑顔。
そして山陽さんを心からもてなしてくれた尼さんたち。
とても好きなシーンばかりです。
もちろん、バックに流れる音楽のほとんどは
ミャンマーソングという仕立て♪


例によって、今回も視聴者の皆様からの反応次第で
次回作ができるかどうか決まります!
お褒めの言葉はもちろんですが、
どんなことでもご意見を頂けましたら嬉しいです。



それでは、夜9時に
ミャンマーの旅で会いましょう~☆

5分版もできたよ&宮崎ロケへ!

2015年03月14日 00時57分34秒 | 世界自転車探検部


ミャンマーの旅 5分版も完成~!
5分版、15分版ともに
怒濤の放送でござる!

50分版
3月18日(水)21:00~21:50


5分版(5分×5本)
①3月23(月) 15:05~15:10
②3月24(火) 15:05~15:10
③3月25(水) 15:05~15:10
④3月26(木) 15:05~15:10
⑤3月27(金) 15:05~15:10


15分版(15分×2本)
①3月30日 20:00~20:15
②3月30日 20:15~20:30


5分版、15分版ともに、
50分版にはまったく出て来ないネタづくしという
ゼイタクな内容になっております!

それもこれも、
毎日たくさんの出会いを生み出す
山陽さんのエネルギーのたまものですね。



さあ、完成の喜びもつかのま、
いまから宮崎に行って、自転車イベントを撮影してきますよ~☆



※本日がホワイトデーということに、今気付きました。
 バレンタインのお恵みをくださったみなさま、
 ホワイトな発送は後日でどうぞご堪忍……

煮詰まったやつら。

2015年03月11日 23時26分34秒 | 世界自転車探検部



18日のオンエアまであと1週間ですね。
ちょっとドキドキしてきました。
きょうは、冒頭の写真のお話をひとつ。。




編集作業、と聞いても、
ほとんどの方にはピンと来ないと思います。
たとえば自転車探検部の編集は、
オフライン編集に3週間、
本編集に丸1日(12時間)、
整音、音楽とナレーション入れに丸1日(18時間)。
都合1ヶ月の時間がかかります。

50分の番組に、1ヶ月かかる(しかも1日18時間以上編集してる)なんて!


編集はまず、撮影素材をぜんぶ見ることから始まります。
今回のミャンマーの旅ですと、素材は60時間分ぐらいですので、
メモを取ったり、チェックしながら
全部見終えるまで1週間かかります。


そこから実際に編集を始めるのですが、
つなげられるのは、1日がんばって10分ほど。
旅のゴールまでを一度つなぎ終えるのが
編集開始から早くて15日目ぐらい。

ここから映像を精錬し、精錬し、
60分ぐらいにしたところで「試写」というものが発生します。
まずは社内のスタッフ全員で見て、精度を上げて行きます(社内試写)。
次に局のえらい人(この番組の場合は探検部名誉会長)と一緒に見て、
どうしたら良いかを議論します(局試写)。

10回以上試写する場合もあるそうですが、
私はだいたい社内試写免除、局試写は3回です。


試写→直す→試写→直す。
そうして50分にまとめたものが、番組になるのですね。



……………


さて。
冒頭の写真。
その試写の2回目で、みんなが頭をかかえても良いアイデアが出ず、
4時間が経過したところです。
ミャンマーの旅の15分版の良いタイトルが思い浮かばないのです。


写真の左から、ADアキヒロ、プロデューサーのタテオ、私、APの照沼さん。
撮影したのは、ご自身もすっかり煮詰まっちゃった
局のえらい人。


でも、モノ作りってこんなものですし、
これぞ醍醐味、だったりするのです★

アキヒロくんの10日間連続日記。

2015年03月09日 01時25分46秒 | 世界自転車探検部


自転車探検部のロケは、
基本的には私と出演者だけで行くものでした。
しかし、下見なしの一発本番ロケは
見るだけでも勉強になるだろう、ということで、
ときどきADさんも連れて行くようになりました。

今回は、初の海外ロケというアキヒロくん。
先日のブログでも書きましたが、
ミャンマーの大乾燥地帯に私を40キロ置き去りにした男です。

アキヒロくんのすごいところは、決して怒ったり切れたりしない。
いつもニコニコ、好青年。
押しが弱く声が小さいトコロが玉にキズ。
彼女いない歴○年の鬱憤を晴らすべく
ミャンマー美女と仲良くなるぞと息巻いて出国しましたが、
どうやら声すらかけられなかったみたい。



そんな純情青年アキヒロくんが、番宣のために、
18日の放送までの10日連続で
会社のブログにロケ日記をアップするようです。


はたして連れて行った甲斐があったのか!?
けっきょくボンヤリ海外旅行を楽しんだだけなのか!?



自分で撮った写真とともに力作をアップするぞと
息巻いてましたので…
みなさまぜひ「テレコムスタッフ」のブログをご覧下さいませ。


大丈夫だよ、アキヒロくん。
いくら多くを学んでほしいと願っても、
過積載がダメなことぐらい知ってるから……★



できたよ!

2015年02月28日 13時29分35秒 | 世界自転車探検部


自転車探検部の14作品目、
ミャンマーの旅50分版が完成しました!


徹夜作業で名誉会長もグロッキー★
あと何度、こんな充実感を味わうことができるかしら。



ミャンマー。
政治的にはいろいろな問題を抱える国ですが、
人間は文句なく世界一にすばらしかった!


涙が出るほどステキな人たちとの出会いを、
どれだけお伝えできるか?
それはとてもハードルの高い作業でした。


放送は3月18日!
@NHK BS1!
時間は21時か19時のようです。
(錦織選手の試合時間によって変更になるようです)


さあ、久々に一眠りしたら、
5分版の編集に入ります☆

おいかける!

2015年02月18日 09時14分22秒 | 世界自転車探検部



三脚にカメラを付けて走る旅人を撮ることを
「定点」と呼びます。
自転車探検部で言うと、番組タイトルのテロップが乗るカットがそうですね。
この「定点」を撮るときは、
旅人さんを置き去りにしてひたすら先行し、
良い定点が取れそうなポイントがあれば、道の脇の崖などによじのぼって、
置き去りにした旅人が来るのを待ちます。
(ちなみに上の写真はトルコのタイトルカットになった定点。
 手前に見える草はトゲだらけ…)
そんでもって、やり直し無しの一発勝負で撮影。
がっつり体力勝負の撮影、それが「定点」なのですね。





↑定点探し中。
「この崖にのぼれないかなあ」と考えているところ。
(ここは結局登れなかった…)



そんでもって、一発勝負の撮影がおわると、
すぐさま旅人に追いつくための猛ダッシュがはじまります。
崖から降りて、カメラと三脚を車両にあずけ終わるまでに
だいたい5分。
旅人は2キロほど先に行っています。
それになるべく早く追いつくために、全力疾走です。





走る人との距離を2キロ詰めるのって、けっこう大変。

ここで天の助けとなるのが、2人乗りのバイク。
2人乗りのバイクは時速40キロぐらいで走るので、
ぴったりくっついて、風よけにするにはもってこいなのです。





40キロで走っていると、43キロぐらいで走るバイクに抜かされたりする。
これも天佑。
ささっと乗り移って、速い方のバイクにくっついて行きます。





ただ、自転車レースになじみのない国でこれをやると、
「風よけ」の概念がないために、ただのあやしいストーカーになっちゃう。
よく怪訝そうな顔で振り向かれます。

こうなったら、身振り手振りで乗り切るしかありません。
全力で漕ぎながら「4・0・GO!」とジェスチャーすると、
「40キロで走ってくれ!」と伝わったりします。
たまに「GO!」だけ伝わって、ガンガンに飛ばされたりするけど…



こうして、長距離はダメだけど、
ストップ・アンド・ゴーには強いカラダが
出来上がって行くわけですね★

せつないのうた。

2015年02月17日 04時00分48秒 | 世界自転車探検部

かつて王朝が栄えたという地方の古都で、
少女に出会った。
どこからともなく私の前に現れて、
プラスチックのお皿を差し出し、おずおずと
お金、という仕草をした。
その目には、大きな恐れと、ほんの少しの期待。
やぶれた服は貧しさを物語っているけれど、
顔と髪は水で洗い、少しでも自分を良く見せようとしているようだった。


ポケットをさぐると、200チャット札(20円)が出て来た。
私はそれを、「少ないけど…」という顔をしながら、お皿の上にそっとのせた。
とたん、少女の顔は、雨雲が一気に流れ去るように晴れやかな笑みに変わった。
予想外に純粋すぎる笑顔に出会ったので、私はビックリして
何もできなくなってしまった。


少女は嬉しそうに走り去って行く。
スキップしながら、嬉しさのあまりか、ジャンプした。
そして、町はずれの茂みの奥へ消えて行った。


親に喜ばれるから、スキップしたのだろうか?
今日の食料を手に入れられるから、ジャンプしたのだろうか?
どうか、どうか、彼女の笑顔が
計算による笑顔ではなく、あの晴れ渡る空のような笑顔を
持ち続けられますように。



美しいミャンマーには毒がある!?

2015年02月02日 11時34分13秒 | 世界自転車探検部



街からとおく離れると、大自然と農村。
立ち止まるたびに人垣が出来て、興味津々の笑顔に取り囲まれる。

「いいところですね、電気とか水道がなくても
 まったく問題なく暮らせそうな気がするなあ」

こんな美しい場所で、
額に汗して働き、日が暮れれば疲れ果てて眠り、
家族を持ち、子どもを育て、
泥にまみれて暮らして行く。
遠い世界の暮らしみたいだけど、あこがれる。

…などとボンヤリ考え事してたら、通訳さんが一言。
「ここは水がきれいなので、マラリアがすごいですよ。
 刺されたら2日でコロッと死んじゃう強烈なマラリアがいますから」

あわてて皆で虫除けスプレーをかけまくる。
暮らしてる人にとって、マラリアは「標準装備」くらいの感覚なんだって。
しょえー。
もちろん、それも「込み」で、住んでみたい場所です。

旅人はね。

2015年01月31日 11時36分40秒 | 世界自転車探検部

写真にはチラチラ写ってましたからね。
今さら感アリアリですが。

今回の旅人は、神田山陽さんです。






初めて出会ったのは2003年。
山陽さんは真打ち昇進された直後に
NHKスタジオパークのゲストでいらした。
私は番組ADでした。

当時、山陽さん38歳。
ADの私にもポンポンアイデアを投げて来て、
苦しかったAD時代のなかで一番楽しい仕事でした。
ディレクターになったら、いつか仕事をしたいと思ったものでした。






その山陽さん、ことし49歳。
20代だって、撮影をしながらマウンテンバイクで
1日100キロ以上走り続けられる人は、なかなかいません。
アラフィフの山陽さん、恐るべし。





ミャンマーの旅は、複雑な国の歴史、宗教など
テーマのハードルが高い。
若い俳優さんでは、そのテーマを理解するだけで手一杯だろうし、
「すごいなあ」「キレイだなあ」「優しいなあ」といった感想だけでは
この国を紹介することは難しい。
なので、旅人は山陽さん以外に考えられなかったのです。






船に乗って、風に吹かれている間。
自転車で走っている膨大な時間。
山陽さんと私は、時間があれば常に
ミャンマーの人たちが何をどう考えているのか?
という話をしました。

「あの人がああ言ってくれたのは、どうしてなんだろうね?」
「あの子はなぜ母親のために祈ってたと思う? この国の仏教と関係あるのかな?」
「あの子たちは、見えない将来のことなんて考えてないんじゃないかな?
 だからあんなに明るいんじゃないかな?」

十数日間、そんな話ばかりをし続けて、
ひたすらこの国のことを考え抜いて、
旅のゴールでの最後のコメントにたどり着く。


今回の旅は、誰と出会い、何を感じて、
どんなコメントにたどり着くのか……どうぞお楽しみに☆



愛と無関心。

2015年01月28日 19時07分46秒 | 世界自転車探検部



美しい野山、一年中青々と育つ農作物、
道をゆったり歩く牛たちと、牛飼いの笑顔。
常夏の国ミャンマーの農村は、絵に描いた以上に美しい。


自転車で走ると、ついつい景色に見とれてしまうし、
カメラを持っていれば、ずっと撮っていたくなる。


すると、突然天地がひっくり返って、
気がついた時には転んでいる。
ミャンマーの道は、トラップが山盛りなのだ。


ダートには雨期に流れた水の跡が
50センチほどの窪みを作っている。
これはマウンテンバイクでも厳しい。
アスファルトの道にも、突然ボッコリ穴があいている。
牛の糞にも要注意だ。





なぜか道路に作られた線路。
これも強敵。太めの27Cタイヤでも、ズルリと持って行かれて
転んじゃった。
なぜか転ぶ瞬間の写真が写っていた。
タイヤがレールに沿って縦スベリしております。
たぶん焦ってシャッターを押したんでしょうね。。





ある夜、真っ暗な道をホテル探して走っていたら、
アスファルトに突然10センチもある段差が現れて、
気がついた時にはハンドルがバウンドし、
押さえることができなかった。
いっしょに走っていた旅人さんによれば、
「人が地面に当たった」鈍い音がしたらしい。
私はカメラを守るために、左半身で受け身をとったので、
左の腕と膝を強打した。



すると、暗闇から湧き出るように、
あっという間に村人が集まって来た。
「大丈夫か? 大丈夫か?」と言われていたのだと思う。
みんなで私を抱き起こし、私のケガを見る人、
自転車の調子をチェックする人、
はずれたチェーンを直してくれる人。
モノを落としていないか、暗闇の道をチェックしてくれる人。
気がつけば20人くらいに囲まれて、介抱されていた。


私だったら。
果たしてこんな勢いで駆け寄って助けるだろうか?
油で手が汚れるのを躊躇せずにチェーンを直してあげられるだろうか?


「愛」の反対が「無関心」だとすれば、
私は普段、愛とは最も遠い場所に生きているのかもしれない。
そう考えたら、かなしくて、ありがたくて、
泣けて来た。



ある日のできごと…。

2015年01月27日 19時54分43秒 | 世界自転車探検部



撮影中、道を走っているときは、
旅人(自転車)+ロケ車(通訳&AD)+私(自転車)
という体制で走っていることが多い。

旅人をロケ車の車載カメラでADアキヒロくんが撮影し(RECボタンを押すだけ)、
自転車から撮りたい場合は、そのロケ車の前に私がスッと入って行って
旅人に並走して撮影しているのだ。


その日は、まずスタートから車載カメラで撮影していたので、
私はロケ車の後ろをぴったりくっついて、カメラを背負って走っていた。


道はアスファルトのガタガタ道。
常時電気アンマ状態。
背負ったカメラが暴れて背骨が痛い。


すると!

何かが落ちて、ホイールに激しく当たり、飛んでいった。
(振動でライトが落ちたのだと後で判明&紛失)
そしてホイールは曲がり、走行不能。
あたふたしながら、助けを求めてロケ車を見ると、そんな私には気付かず
ブ~ン………と走って行ってしまった。


「後ろに私の姿が見えなくなったら、トラブルだから停まるように!」
と言っておいたので、
そのうち気付いて停まるだろう。
とりあえずホイールを直しにかかる。
スポークが曲がってしまったので、かなりのフレが出てしまった。
曲がったスポークを押し戻したり、反対側のスポークを曲げてみたり、
いろいろやったら、どうにか走れるくらいになったので、
やれやれ、と思いつつ、ロケ隊を追いかける。



しかし。



行けども行けども、ロケ車が見えてこない。
気温35度の乾燥地帯。ボトルを持っていなかったので、水分ゼロ。
所持金は…小銭程度。
携帯…電波なし。
このままはぐれたら大変だ。
ひょっとしたら何十キロも
補給無しで走ることになるかもしれない。
なるべく汗をかかないように、省エネモードに切り替える。






電気アンマはおさまること無く、手と尻がかな~りツラい。
なぜか道路のど真ん中だけはアスファルトの油分が多く、滑らかなので、
真ん中のテカテカした部分に沿って走る。
そして車が来るたび、電気アンマに退避し、
またセンターに戻って走る。
…バカ野郎、いったいどこまで行きやがったんだ?






15km走って、ようやく村を発見。
ロケ車の姿は……ナシ。
途方に暮れていると、村人たちがわらわらと集まって来た。

外国人なんて絶対来ない村。
みんな珍しそうに私を眺める。
笑顔を向けると、はじける笑顔がかえって来る。
お店に駆け込み「水ある? コーラある?」と言うと、
水ならあるよ、と村人たちが全員で、
ワッショイワッショイ盛り上がりながら、汚れたペットボトルを洗って
水瓶の水を入れようとしてくれる。


嬉しいけど、その水を飲んだら一発でアウトだ。
なんとかジェスチャーで「その水飲んだらお腹グルグル~」を伝える。
みんなすぐに分かったみたいで、笑いが起こる。
そして全員で、ワッショイワッショイ、私が来た方向を指し示した。
「ひとつ前の村になら飲み物売ってるよ」と言ってるらしい。


普通は次の村を目指すのだけれど、
こうなっちまったら、彼らの親切をムダには出来ない。
彼らに全力でお礼を言って、前の村に戻ることにした。






5kmほど戻った村の一角で、無事ジュースをゲット。
400チャット(40円)。
ミャンマーの物価は日本の10分の1。高級ドリンクだ。
ここでも村人たちが大注目している。
できるかぎり旨そうに飲んで見せる。
それだけでワッと盛り上がる。
ほんとうは2本飲みたかったが、
高級ドリンクをガバガバ飲むのも嫌味な気がしたので、
1本でガマン。
大丈夫、これであと20kmは走れそうだ。


お店にいた犬が、私に優しげな視線を投げかけて、
尻尾を振ってくれた。
そうだよね、走らないと始まらない。
ふたたび省エネモードで走り出す。






20km。
カーブを曲がるごとに、
小さな村を過ぎるごとに、
ロケ車が停まっているのではないかと淡い期待を膨らませるのだが、
影も形もない。
そのたびに怒りが湧き出て来るのだけれど、
沿道の村人たちの笑顔の応援が、すべてを忘れさせてくれる。
笑顔とは、すごいエネルギーだ。
こちらも、全力の笑顔で手を振りかえす。





27km。
何かの収穫に沸き立つ女性たちがいた。
形からすると、胡麻の収穫だろうか。
枯れ枝の先についている実を、女性たちが笑いながら
バサバサ振るい落としている。
ここに旅人がいたら、すばらしい取材が出来るのに!
私1人しかいな無力さを噛み締めながら通り過ぎると、
女性たちがワーッと手を振ってくれた。
このままここで暮らして行こうかと、錯覚するじゃないのさ☆





34km。
梅の実を売っている女性が、まぶしいくらいの笑顔で
走る私を追いかけて駆け寄り、実を手渡してくれた。
車載カメラでもそんな瞬間が撮れていることを願いながら、
女性に山ほどの投げキッスをする。
遠ざかる後方から男女の沸き立つ声が聞こえた。



トラブルから1時間半。
41km地点(走行は51km)でロケ車を発見した。
みんな昼食をすっかり済ませて、まったりしていた。


おかしいなあ、と思いつつ、
大丈夫だろう、と思って来ちゃったらしい。


大丈夫にしても、40キロもディレクターを放ったらかして先に行くもんかいな??


だっふんだ。
脱力。
ステキな体験をさせていただいたことに、ただ感謝することにしよう……。




番組には絶対出て来ない(そりゃそうだ、撮ってないんだもん)、
ある日のできごとでした★