
ロケ先へ移動し
宿の了解をもらって
自転車と相部屋
ふと 五郎さんも来ているはずだと思い連絡したら
隣の部屋だった(笑)

明日は朝練しましょうという話になり
5時出発と決まる
午前1時で仕事を終わらせ就寝
まるで遠足の日みたいに
朝4時に自然と目がさめた
私のロケの必需品 福砂屋のカステラを7切れ食べて
5時に外へ出てみると
誰もいなかった(笑)
5時10分
五郎さんが出て来た
いつものように レース動画を見てるうちに
目覚ましかけずに寝ちゃったのだろう
と思って走り出したら
6時に五郎さんの携帯目覚ましが鳴っていた(笑)

走り出して 240W(4倍)で前を引いていたら
五郎さんが写真と動画を撮ってくれた
五郎さんの動画は 1分あった
やってみると分かるが 走りながら1分の動画を撮るのは大変だ
「五郎さんも撮ってもらうことあるの?」と聞くと
「10秒とかしか撮ってもらえない」という

撮影もする自転車ディレクターとしては
撮らないわけにはいかないでしょう(笑)
3分撮って 動画を送った
感想は「僕の後ろって走りやすいんだね」だった
どれだけ自分が好きなんだか(笑)
しかし 確かに五郎さんの後ろはとても走りやすい
障害物への手信号は 通過する数秒前に出してくれるし
後ろの人の能力に応じてスピードを変えてくれる

以前の五郎さんのペダリングには
両膝を内旋し 両足が右斜め前を向く癖があった
だが 今日のペダリングは左右均等で
ビシッと両足が前を見ていた
走りながら それを言ったら
満面の笑みで「直しましたよ!」と言う
私は「しまった」と思った
五郎さんは 喜んでテンションが上がると
坂道でアゲアゲになるのだ(笑)
案の定 4kmほどの峠で
アゲアゲの刑が炸裂(笑)
今日は飛ばさないって言ったのに…
ヒーヒー言いながら よだれ垂らしまくりで
なんとか食らいついた

峠を2本上って 40km
1時間ちょっと朝練して 撮影へ

撮影の合間の移動は
私だけ自転車で移動する
スタッフは 私が自転車移動するのは当たり前だと思っているのだが
最近はなぜか スケジュールに
五郎さんも自転車移動と書かれるようになった(笑)
ここで私は すごいものを見た
農道の信号待ちで スタッフの車両に抜かれたときのこと
青信号で走り出すと 車両ははるか向こうに行っていた
我々も ゆるゆるとスピードを上げる
あの車に追いつくか? と考えたが
車両はすでに50km/h近くで遠ざかっていく
すると五郎さんが
深い前傾姿勢をとって加速し始めた
「マジか…追いかける気だ!」
スピードが上がる
五郎さんのいつもの巡航スピード43km/hを超えても
まだ上がっていく
五郎さんの後ろにベタづきなのに パワーは350W
前を走る五郎さんはおそらく450Wは出ている
300mは離れていた車両が
じわじわと近づいてくる
追いかけ始めて2分
あと50m届かない
着き位置なのに かなり苦しい
そろそろ五郎さんも限界のはずだ
「お前も前を引け!」と言われたらどうしよう(笑)
そしたら 30秒間だけ500Wで引いて
千切れよう(笑)
五郎さんが限界の表情をしていたら交代しようと思い
横へ出て顔を見たら
苦しそうではあるが 俄然集中していた
すごすぎる まだ行けるのか…
車両まであと50m
五郎さんのスイッチがさらに入る音がした
五郎さんが腰を上げる
「マジかよ!?」
苦しすぎるが 私だけ千切れるわけにはいかない
スピードがもう一段階上がり 一気に車両に追いついた
目を見張った
感嘆しかない
あの苦しさの中で さらに加速したのだ
沖縄のゴール前の牽引を まさに生で見た
この体験をするために
私はトレーニングを積んで来たのだ
そう思った
レースは無くなってしまったが
大きなモチベーションをもらった気がした