
「いちじゅう積んでは 母のため…」
そんな歌がずっと聞こえる、賽の河原のあるところ。
それが私の、恐山のイメージだった。
恐山に行くと、いったい何が待っているのか。
いつか行ってみたい、しかも
自転車で。
上れる道があるなら、上りたい。
さあ、上ってきましたよ。
せっかく青森に来ているのだから、行かない手はない。
下北半島の先っちょ、むつ市までレッツゴー。
「恐山」「ヒルクライム」と検索しても、
なかなか詳しい情報が出てこない。
恐山をただ上るだけの人が少なくて、
ロングライドの途中で上った、という人ばかり。
いったい皆さんはどこをスタートにし、
どこをゴールにしているのか。
わからないので、とりあえず
麓のむつ市からの登山道にある最後の信号からスタート。
ゴールの候補は2箇所あって、恐山の最高地点・釜臥山展望台(標高900m弱)か、
途中分岐した先にある、賽の河原のあるお寺か。
坂バカの特性的には、とりあえず最高地点をめざす。

登山道には、古い石碑が並んでいる。
百十一丁……百十丁……百九丁……
お寺までの距離だろうか。
それともあの世までの距離だろうか。
とにかく残りの距離がわかるのは、とてもありがたい。
頂上の展望台までの距離は18キロ。
平均勾配は5%ほど。
急勾配はほとんどなく、ほぼ一定の坂道なので、
上るのがとても楽。
目標は1時間切りだ。
途中、水飲み場があった。
旅人たちが喉を潤してきた湧き水っぽい。
立ち寄りたかったが、ガマン。
自転車乗りは誰もいない。
時折いる登山客が不思議そうな目で私を見つめる。
自転車で坂を上るのは「物好き」なのだと
改めて思わされる。

一気に視界が開け、思わず声を上げた。
下北半島が一望だ。

平均242W。
割といいペースで登れて、51分39秒。
今のところ、分岐点以降の後半は
私がSTRAVAのKOM(キング・オブ・マウンテン)です。
ほとんどここを走ってる人がいないためです。
みなさん、チャレンジお待ちしてます(笑)。

展望ポイントから豪速球で下り、お寺へ。
恐山菩提寺。
創建は862年という。
到着して、目を見張った。
まさにこの世とは思えない美しさだった。
硫黄の湧き出る賽の河原と、緑の山。
不思議な色をたたえる湖。

何の跡だろうか。
船着場でもあったのか。

太鼓橋に「三途の川」の石碑。
ちょっとしたテーマパークのようだ。

うむ。
なかなかどっこい。
ちょっと期待していたが
イタコには会えなかった。
菩提寺の入山料は500円。
時間もなかったし、入らなかったのだが、
お寺の中には温泉があったらしい。
私はてっきり、寺の外の廃墟が温泉宿っぽかったので、
この地に温泉はないのだと勘違いしてしまった。
……入っとくんだった。
旅の終わり、十和田市に立ち寄る。
なぜかというと、ここはスタッフのふくし君の出身地。
こっそり実家に立ち寄り、写真を撮ってふくし君に送った。

実家の前をサイクルジャージでうろついていたら、
ご近所の方が優しく挨拶してくれた。
しばらく帰らない息子が帰ったとでも思ったのだろうか。
食べ物はおいしいし、景色も最高。
自動車ドライバーは自転車にとても親切。
青森、良いところだ。
また好きな土地が増えてしまった。