帰国しました!
撮りたい物はまだまだあったし、
もっとジロの中に身を投じていたかったのですが、
チャリダーのスタッフから
「Dがいないとこっちの仕事が進まないから帰ってこい」
との指令。
放送は毎週あるので、
毎日のように「試写」「構成打合せ」「ロケハン打合せ」などなど
私が決めねばならない仕事が山ほどあります。
いつまでもイタリアにいたら、スタッフのみなさんが困ることになります。
はいはい、帰りますよ。
一番近かったペルージャ空港へ。
ここから飛行機でローマへ移動し、
アリタリア航空で成田へと向かいます。
ところが直前になって、旅行代理店のHISより
「飛行機が無くなったから、ペルージャ→ローマはバス移動になります」
との連絡。
なんじゃそりゃ。
「ペルージャ空港では、空港カウンターではなくバスターミナルAにて受付をします。
出発の1時間前にはバスターミナルAへ行ってください」
とのこと。
空港に着いて「ああ、来たか」と思った。
バスターミナルAが、見当たらない。
「きっとこのどこかがAで、どこかがBだったりするんだろう」
と思い直して、とりあえず出発1時間前までバール(カフェ)へ。
イタリアに来たらカプチーノ、と行きたいところですが、
私は牛乳がダメなので「カフェアメリカーノ」。
(ふつうのブラック。日本のアメリカンのように薄くはない)
コーヒーとパンとピザの香りが入り混じった
バール独特の匂い。
空港で働く人たちが、思い思いにカフェを楽しんでいる。
いい風景。
さて、そろそろ時間だ、バスターミナルへ向かってみよう。
しかし。
待てど暮らせど、バスは姿を現さない。
出発時間まで45分。
これは怪しいぞ。
飛行機が飛ばなくなったので
アリタリア航空のカウンターには人影なし。
仕方ないので、掃除のおっちゃんに聞く。
もちろん片言のイタリア語。
「このバスはどこに来るの?」
「あ~、そのバスはここじゃないぞ。
ペルージャのダウンタウンのバスターミナルから出るんだ」
……まじかよ!
出発まであと30分しかないんだぞ!?
HISから送られてきた紙には
「空港のバスターミナルA」とある。
掃除のおっちゃんは「ペルージャのバスターミナル」だという。
もう少し待てば、バスが来るのだろうか?
それとも、ペルージャに向かった方が良いのだろうか?
あわてて日本のHISに電話。
「本日の営業は終了しました…」
いやはや、話が出来すぎだ。
タクシーのおっちゃんに聞いてみる。
「このバスはペルージャの街から出るのか?」
「ローマ行きのバスなんてペルージャから出てないぞ」
困ったもんだ。全員が違うことを言ってる。
「とりあえずペルージャのバスターミナルへ向かって!」
私はタクシーに乗り込んだ。
運転手のおっちゃんは「おまえ正気か?そんなバスは出ないぞ?」
と言い続けている。
「ワシがローマまで走ってやるぞ。300ユーロだ。ハーハーハー!」
こんな時にものんびり明るいのが、イタリア人の良いところか…。
おっちゃんは非常に安全運転で私を運ぶ。
「もうちっと飛ばしてくれないかなあ」と焦る私。
出発時刻まであと15分だ。
ペルージャの街は交通渋滞。
まったく車が進まない。
「ローマまで行ってやるぞ。400ユーロだ。ハーハーハー!」
値段上がっとるやんけ。
「とりあえずバスターミナルへ行ってくれ!」
おっちゃんは「ワシは知らんぞ」というジェスチャーをした。
私だって知らないよ。
街に入ったところで、おっちゃんが何かゴニョゴニョと話しかけてきた。
何を言っているのか、よくわからない。
「バスターミナルはどこだっけ?」と聞いているような気がする。
やべえなこりゃ。
私はローマまで300ユーロで(400ユーロではなく)
行ってもらうための交渉を、イタリア語で何と言うか考えだす。
ローマから成田への飛行機だけは、逃したくない。
出発時刻の5分前。
バスターミナルに到着!
……あった!
アリタリアのロゴが書かれたバス!
タクシーのおっちゃんは
「おお~、バスあったな。良かったな!」
と喜んでくれた。
「ありがとう! 助かったよ!」
私はチップを上乗せしておっちゃんに渡した。
「領収書をもらえない?」
「もちろんだ!」
おっちゃんはゴソゴソと領収書を取り出し、
1枚やぶって私に渡した。
「値段とか書いてくれよ。書いてないと意味ないんだ」
「おまえの好きな値段を書きゃあいいじゃないか! ハーハーハー!」
「いやだから、私はイタリア語書けないし…」
「いいんだ、そのまま持ってけ!
好きな値段を書けばいいじゃないか!」
チャオ、と言いのこして、
おっちゃんは走り去っていった。
あ~あ、このタクシー代1万円、自腹かよ…
バスは時刻通り出発し、ローマへと走った。
バスの運転手は、Mr.マリックそっくりだった。
まだ何か起こるんじゃないだろうか?
不安になって、私はシートベルトをきっちり締めた。
とりあえず、私はジロデイタリアの会場でゲットした缶飲料をあけて
乾杯した。
明るいイタリアに。
今もレースを走り続けているチームの選手に。
今回の仕事を生んでくれた出会いに。
それからは順調に事が運んだ。
Mr.マリックは、サングラスをとったら
渡辺貞夫さんだったことが
唯一「起こったこと」だったぐらい平和だった。
というわけで、なんとか帰国しました。
これから編集に入るわけですが、そのまえに
ある「大事な仕事」があります。
ジロデイタリアの撮影は、かなり厳しい著作権に守られているため、
撮った映像の中で、どの映像が使えて、
どの映像が使用不可なのかをチェックする必要があるわけです。
そのへんの話は、また後日。
さあ、自転車乗りたいぞ、1週間ぶりに☆