朝6時にホテルを出発。
会場につくと、ご覧の通り「人、人、人」。
今年も2500人が参加されたそうで、
これだけの大人数を滑らかにさばききった運営の力に驚嘆する。
スタッフは全員「坂バカジャージ」着用で挑む。
でもうじきさんは専用ジャージとレーパン忘れて
あわてて現地購入。
そんなこんなでノンビリしてたら
けっきょく100キロコースの最後尾スタートに。
足切りタイムが厳しいようなことを言ってたけど、
大丈夫なのかしら??
出発そうそう、那須の絶景がお出迎え!
たまたま隣り合ったチャリダーさんたちと語らいながら、
賑やかに那須岳へと向かう。
あの山の頂上付近が、折り返し地点。
その制限時間までは、あと4時間。
ゆるゆると進みましょう。
と、ここでいきなり問題発生!
12キロ地点の第1チェックポイントに、
新入社員のアユくんが来ないのである。
電話も通じず、行方も知れず。
最後尾の回収車のおっちゃんが
「なんかフラフラ走ってるな~と思って見てたら、パッと消えた」
という情報をくれた。
いったいどこへ「消えた」のか?
山頂の折り返し地点までは、けっこうな激坂だそうで、
アユくんを待っていては全員タイムアウトになっちまう。
「Dさん、お願いします!」
アユくんを私に託してスタッフたちは先発する。
第1エイドでたまたま遭ったMAVICカーのミッチーと談笑。
へー。ふーん。MAVICっていいメーカーなんだね。
彼は元ブリジストンアンカーのプロ選手だったのだけれど、
事故で選手生命を絶たれ、こうして自転車界で働いている。
ひとつの世界に生涯をささげるのって、けっこう幸せなんじゃないかしら。
けっきょく30分ほどして電話がつながる。
「道を間違えて、福島県にいる」とのこと。
曲がり角ごとに誘導員が立っているこのイベントで
どうやって道を間違ったのか?
彼の「人生」を心配しつつ、スタッフの背中を追った。
山頂の折り返し地点まであと32キロ。
道はゆるゆると上り始め、最後は勾配15%ぐらいの激坂になるらしい。
スタッフたちは30分前に出発して、おそらく次のエイドステーションを過ぎた頃だろう。
ただ走って追いつくのでは面白くないので、
アウターしばり(重いギアしか使わないこと)で行くことに決めた。
勾配9%までは、まあ大丈夫。
10%を超えたとたん、足が重くなる。
ケイデンスが60以下に下がる。
膝に荷重が集中する。これでは膝を痛めそうだったので
サドルを5ミリ下げる。
ちょっと四頭筋を使うポジションになった気がするが、アウターしばりだから仕方ない。
ノッシノッシと上る。
45キロ地点の山頂折り返し。
うじきさんとスタッフが到着するのを待ちながら、
名物「うなぎり」をいただく。
上品で贅沢な、うなぎのおにぎりなのですが、
汗をかいた後にしては、塩味が足りない。
きっと普段食べるとちょうど良いのでしょうけど。
こういうのって、難しいところですね。
制限時間の15分ほど前に再出発し、後半戦に突入。
下山は危険なので(放っておくと80km/hぐらい簡単に出ちゃう)、
しばらくの間、グループ下山。
ゆるゆる下るため、次の関門もギリギリな感じだ。
ここで新たな問題が。
グループの女性が、急勾配の下りで力みすぎたのか、
両足がツって動けなくなってしまったのだ。
グループ全体に動揺が走る。
このまま全員タイムアウトになるかもしれない。
もはや、背に腹は変えられない。
彼女を置いて行くしかないのか…。
と、おもむろに、
うじきさんが彼女を地面に座らせて、
両足を揉みだした。
「痛いけど、ガマンしてよ!
脚がツるのは、血行不良以外の何物でもないんだ!
すぐに動けるようになるからね!」
自分が脚がツった時のために、トレーナーから対処法を聞いて来たらしい。
女性の足を揉むこと5分。
ガチガチだった足は柔らかさを取り戻し、
彼女は元気に走りだした。
下山チームは明るさ倍増、安全に下山を果たしたのでした。
さて。
那須ロングライドの写真は、ここでおしまい。
いったいなぜ?
下山して、「いや~、さすがうじきさんだ」などと笑っていたら、
周りの人たちが慌てて出て行く。
聞けば、25キロ先のエイドステーションの制限時間が
14時半だという。
ただいま、13時48分。
42分で25キロ走らないと、タイムアウト。
つまり平均時速37キロで走り続けないといけない。
「アキヒロ、フっくん、行くぞ!」
側にいたスタッフ2人に声かけ、かっ飛ばす。
気がついたら、2人とも後ろからいなくなってたけど、
何としてもタイムアウトだけは避けたい!
てなわけで、写真どころじゃなくなっちゃったのです。
25キロのうち、キツい上りは1キロほど。
あとはひたすら平坦路。
協力者がいれば声かけるんだけど、周りにはほとんど人がいない。
飛ばす。
少々の上りが来ても、35キロを切らないように踏む。
平坦路は40キロ以上。
エイドまであと8キロというところで、あるチームのトレインに追いつく。
「すいません、入れて!」
「どうぞどうぞ! いっしょに行きましょう!」
黒いチームジャージに、1人山岳賞ジャージがまぎれ込む。
なんか、傍から見たらエースみたいだ。
とにかく、トレインにまざって足を休ませる。
奇跡!
25キロ先のエイドに、14時27分に到着!
やったぜ!
これで足切りを回避できた!
…と思ったら。
トレインに混ぜてくれたチームの人たちが
「もう足切りだって」
とガッカリしている。
なぜ?
係員に聞くと
「そうですね~、高架下のポイントで14時半なんで~、
もう間に合わないですね~」
高架下?
ここが14時半じゃなかったのね。
※あとで全員に配られた地図を見たら
足切り地点がちゃんと書いてあった。
誰も地図見てなかったのは、
ファンライドイベントだからと甘く見ていたためでした…
迷っている暇は、ありません。
パッと飛び乗ると、ふたたびコースへ走り出す。
係員たちが「もう無理なのに…」という目で見送るが、
ナリフリかまっちゃいられない。
「高架下」まで何キロなんだろうか?
とにかく、ここで使い果たしてもいいから、
全力で行くしか道はないのだ。
見えた。
新幹線の高架下に、小さなチェックポイントがある。
ひとりだけどスプリント。
足、つりそう。
そのまま通過。チェックポイントの人たちは手を振って笑顔だ。
通過した!
14時34分。おまけしてくれたのかな。
誰もいないけど、両手を天に差し伸ばす。
うじきさんたちと一緒の完走はできなかったけど、
1人でも足切りにならずに済んでよかった。
前方に、森が見えて来た。
ようやく日影を走れる。
…おや? 森の中に、ひとだかりがある。
そして、プラカードを掲げたおばさま達が笑顔で手を振っている。
「タイムアウト」
プラカードには、そう書いてあった。
天をあおぐ。今年の那須ロングライドが終わった。
けっきょく、うじきさん以下全員、
だれも完走できず。
85キロにショートカットさせられて、ゴールの会場に戻った。
でも、いろいろあって、楽しかった!
最初から1人で走って完走したって意味はない。
途中まででも、みんなで讃え合って走ったから
楽しかったのだ。
もちろん。
来年ぜったいリベンジするけどね!