
ロケに向けて 決戦ホイールのタイヤを交換
このホイール
チューブレスタイヤがキツキツにハマる設計になっているようで
タイヤの取り付けが地獄(というより私の腕力では不可能)だったが
シュワルベのレバーを入手してから 劇的に楽になった

最近ロケで2度パンクしたので
仕事はクリンチャーに限るなあと思っちゃいるが
乗るとやっぱり チューブレスは気持ちいい
あえて言葉で表現すると
クリンチャーは ゴムが1枚多い
走るとブカブカする感じがする
余計なゴムがない方がいいのは
何かと似ている
しかも今回は レースのロケ
1Wでも走りが軽くなるチューブレスの一択だ

タイヤは軽さと耐パンク性能のバランスが良い
ピレリを選択した

ロケなので レース名は伏せさせていただくが
かなりの難コースでのヒルクライム
15%超えの激坂が続くと思えば
合計3km近い下り坂もある
走り方のテクニックや
周りの選手との走り方次第で
タイムが大きく変わってくる
クライマーとしてはヘボな私にも
多少のチャンスがありそうだ

すごい名前のホテルを後にして
会場へと向かう
ただし あくまで目的は撮影なので
最後まで全力で走ることはできないかもしれない
出演者に何かあれば停まることもあるだろう
そこらへんは諦めつつ スタートラインに並んだ
1年半ぶりのレースとあって
前夜は緊張のあまり寝られないかと思った
しかも ちょうど1週間前に地獄のロケがあって
疲れがどうしても取れなかった
当日は朝から脚が重たかったが
早起きして温泉に浸かり マッサージしたら
だいぶマシになってくれた

レースがスタートした
スタート直後は どのレースでもみなさん元気に飛ばす
そのペースに惑わされないように気をつける
なんとか先頭集団にくっつき
近くにいるカメラモトに指示を出す
しかしこれがめちゃめちゃキツイ
平均300Wのペースで走っているのに
大声で指示を出す瞬間は 呼吸を吸えなくなるのだ
ひとつ指示を出すと かなり追い込まれる(笑)
脚は思ったより動いてくれて
レース予想時間の50分を260Wで行ければ御の字と思っていたが
中盤まで280Wで走り 無事に指示を出すことができた
さあ 仕事を終えて残り5km
これで声を出さずに存分に走れる
後ろの選手はだいぶ離れている気配
100mほど前に ひとり選手が見えるが
追いつけそうにはない
勝負は ほぼ同位置で走り続けている
ザ・クライマー体型という感じの選手に絞られた
このライバルに どうやったら勝てるのか?
私はライバルの走りの特徴を観察した
ヘアピンではコーナーのイン側を選び
激坂でペースを上げ 緩斜面で休む
典型的な坂バカの走りだ…
とはいえ さすがはクライマー
激坂では置いていかれそうになるので
真っ向勝負をしても勝ち目はない
勝負は1点突破
ゴール直前の 短い下り坂からの登り返し
ここで勝負をかける
下り坂でアタックし 登り返しで一気にスピード差をつけられれば
そこからの上り800m およそ2分ほどを耐えれば勝てる
残り4km
ヘアピンでイン側を走るライバル
私はアウト側を走り トルクを少しでも低く抑え脚を温存する
1コーナーごとに 1円貯金が貯まると信じて走る
しかしやはり 激坂になると置いていかれる
じわじわと差が開く
残り3km
緩斜面でなんとか追いつくが
オールアウト寸前だ
定番のよだれ垂れまくり状態
ライバルがちらりとこちらを見た
私は息が荒れまくっているのを隠せない
ライバルはきっと 私がオールアウト寸前なのを
感づいたに違いない
残り2km
やはり私が限界なのを知っているようだ
今がチャンスと思ったのだろう
ちょっとした激坂でアタックを仕掛けてきた
キレはなかったが じわじわと差が開く
これは参った 着いていけない
ここで終わるのか…
ふと 私にある考えが浮かんだ
「ここで千切れたフリをしよう」
あと数百メートルで 最後の下り坂が始まる
そこでのアタックを最大限生かすために
ライバルのスピードを緩めておきたい
ライバルも相当疲れているようだ
私が千切れたと知れば 安心して脚を緩めるに違いない
そこを 最大限のスピードで追い抜けば
相手の心を折れるかもしれない
ライバルの背中が徐々に遠ざかっていく
その差は20m
ここで私は 千切れたことを知らせるために咳払いをした
ライバルはそれを聞いて こちらを振り返った
そしてスピードをわずかに落とした
よし この勝負行けるかもしれない
残り1.5km
いよいよ最後の下り坂だ
ライバルとの差は20mのまま
さあ今こそアタックだ
しかしここで衝撃的な事実が発覚する
脚がスカスカで 屁のようなアタックしかできなかったのだ(笑)
脚を緩めたはずのライバルの背中が
下り坂が苦手だと踏んだライバルの背中が
アタックしたのになぜか遠のいていくではないか(笑)
どうする…?
下り坂は700m 時間にすると1分ほど
覚悟を決めて 脚を休める
ライバルの背中がさらに遠のく
その差が40mぐらいまで開いた
それでも脚を止め続ける
息を深く吐き 呼吸を整えることに集中する
登り返しが見えてきた!
最後のアタックを試みる
脚がもげるようだ
最大650W 20秒平均500Wしか出なかったが
ゆるいスピードで登り返しに入ったライバルをなんとか追い抜いた
ライバルが私の後ろに着こうとするのが横目に見えたが
振り返らずにもがき続けた
パワーはどんどん下がり 300Wも出なくなった
それでも振り返らなかった
振り返っても パワーが上がるわけではない
ゴール
52分34秒 273W
苦しすぎて 何にも見えなかった
ライバルにはどうやら勝てたらしかった
ゴール後 ライバルにお礼の挨拶
なんと54歳でいらした
10年後 私はあんな絞れた体でいられるだろうか
リザルトを見たら
年代別で2位だった
小さなレースだが 初めての入賞は嬉しかった
残念ながら 帰りの時間が迫っていたので
表彰式には出ず 会場をあとにした
追撮のために残ったADダイキが
代わりに表彰台に登ってくれた
色白で 少しポッチャリしているダイキが
2位の表彰台に登っている姿を想像すると
笑えた

帰りの新幹線 ひとりジュースで祝杯をあげた
乗鞍まであと2ヶ月
頑張ろう