☆東京物語(1953年 松竹大船 136分)
監督 小津安二郎
出演 笠智衆、原節子
☆なんで東京家族を作るんだ?!
前にテレビでもリメイクされてがっくりした上にまたもやリメイク。笠智衆の笑いの後の溜息や東山千恵子の台詞ありがとの抑揚や大阪志郎と原節子の将来への余韻にに叶う演出があるはずもないのにと何十回目か鑑賞。
☆東京物語(1953年 松竹大船 136分)
監督 小津安二郎
出演 笠智衆、原節子
☆なんで東京家族を作るんだ?!
前にテレビでもリメイクされてがっくりした上にまたもやリメイク。笠智衆の笑いの後の溜息や東山千恵子の台詞ありがとの抑揚や大阪志郎と原節子の将来への余韻にに叶う演出があるはずもないのにと何十回目か鑑賞。
◇薩摩飛脚(1951年 日本 91分)
監督 内出好吉
出演 嵐寛寿郎、原健策、山田五十鈴、宮城千賀子、高田浩吉、有島一郎
◇宮城千賀子の魅力
たぶんその特徴的な目とその視線が男好きするのか、妙に色香のある女優さんで、本来の看板である山田五十鈴が色褪せて見えちゃうくらいだ。とはいえ、原作のままなのか、それともこの映画だけの話なのか、いちばん大切なところのはずの薩摩の部分が冒頭のこけおどしなだけで、結局は江戸を舞台にした捕り物帖になっているのがどうにも辛いね。
◎夫婦善哉(1955年 日本 121分)
監督 豊田四郎
出演 森繁久彌、淡島千景
◎法善寺横丁に行きたい
行ったからといってどうなるものでもないんだけど、ともかく一度くらいは訪れて夫婦善哉を食べてきたいなと、そんなふうにおもわせてしまう魅力がこの映画にはあるんだね。
ただ、いったいぜんたい、このどうしようもない放蕩息子のどこが好きで、なんでここまで愛人の芸者が尽くすのかがわからない。まるでわからないんだけど、まあ、男女の仲というものはそういうものなのだろう。それでいいのだといわれているようだし、これでいいのだと納得してしまう。
なんにしたところで、役者全員が実に達者で、流石豊田四郎というところなんだろうね。
◇サラリーマン忠臣蔵(1960年 日本 100分)
監督/杉江敏男 音楽/神津義行
出演/三船敏郎 森繁久彌 加東大介 小林桂樹 池辺良 司葉子 団令子 新珠三千代 草笛光子
◇東宝サラリーマン映画100本記念作品
だから上映時間も100分ちょうどなのか?
ま、そんなことはともあれ、和洋折衷の音楽は秀逸だね。
三船敏郎もシブくてカッコイイし。いやまったく、高度成長期のサラリーマンは忙しい筈なのに呑気だ。バーやクラブがきわめて機能的に使われていた時代で、風俗を観るには実に手頃な映画だ。
オープンの交差点の真上からの撮影は、なんか嬉しくなってくるしね。
◇張り込み(1958年 日本 116分)
監督/野村芳太郎 音楽/黛敏郎
出演/大木実 宮口精二 高峰秀子 田村高広 高千穂ひづる 芦田伸介 北林谷栄 小田切みき
◇かっちり焼き上げたばかりのモノクロで観たい
もう少しコントラストが強烈だと濡れた生々しさが出たのになんとも残念だ。
いかにも訝しい刑事のするがままに張り込ませる裏には、人妻に何らかの弱みがある、とは思わせながらも強引な動機と尻切れ蜻蛉のラストは弱いかもしれないね。でも、結局、今にいたるまでこの『張り込み』の越える『張り込み』は作られないんだから、なんとも推して知るべしだ。
◎満員電車(1957年 日本 99分)
監督/市川崑 音楽/宅孝二
出演/川口浩 笠智衆 杉村春子 小野道子 川崎敬三 船越英二 浜村純 響令子 新宮信子
◎追悼市川崑その30
追悼もこれで最後。
一周忌に見る作品としては息子さんも見た事がないという本作。
シュールだ。かっとんでる。市川夫妻の感性の結晶としかおもえない。
笠智衆と杉村春子が絶妙の上手さだし、なんといっても放送禁止用語がばんばん飛び跳ねて自由闊達だ。歯切れもいいし、世の中を完全に笑い飛ばしてやろうっていう覚悟のほどが知れてくる。こういうかっとんだ邦画はもう作られないんだろね。さびしいことだけど、市川崑を超えられる監督が生まれるとはちょっとこの国では期待できないし。
◇鍵(1959年 日本 107分)
英題/Odd Obsession
監督/市川崑 音楽/芥川也寸志
出演/京マチ子 叶順子 仲代達矢 中村鴈治郎 北林谷栄 菅井一郎 浜村純 中條静夫
◇追悼市川崑その25
雁治郎、名演。
京マチ子の肌は綺麗だけど、メークが良くないかな。
濡れ場の直後の連結と汽笛の場面は『波の塔』みたいで苦笑しちゃうしかないんだけど、こういう演出って当時の流行だったんだろうか?
市川崑にして、こんだけあざとい演出しちゃうんだね。ちょうど映画から観客が離れていく時代にさしかかってるけど、こういう演出はどうだったんだろう?
たぶん、当時だとちょっと高級だったんだろうか?
それともその逆だったんだろうか?
でも、脳溢血前の竹藪に夜が来る場面は鮮やかだ。毒薬の件りは今ひとつだけどね。
そうそう、音楽は八つ墓村の一部。音楽が他の作品とおんなじじゃんなんてことは、当時は誰も気づかなかったんだろうね。まあ、名画座で掛けられるくらいしか考えられなかった時代だもんね。ま、それはいいとしよう。複数の作品で同じクラシックをかけるのとおんなじことだっておもえばいいんだから。
☆西鶴一代女(1952年 日本 137分)
英題/Life of Oharu,The Gallant Lady
監督/溝口健二 音楽/齋藤一郎
出演/田中絹代 三船敏郎 山根寿子 菅井一郎 松浦築枝 進藤英太郎 沢村貞子 宇野重吉
☆溝口vs三船vs新東宝
終盤、琴の乱奏から女声の読経から笙篳篥の神仏習合まで、映像だけでなく音楽でも混沌を現す凄さはさすが溝口健二としかいいようがない。
市川崑の『映画女優』と合わせて鑑賞すると、あらためて、市川崑は吉永小百合を使って溝口健二と田中絹代に挑戦しようとしたんだな~って感じがひしひしと感じられる。まあ、けど、これについては田中絹代という当代の名女優を起用した方にちょっと分がないでもない。
とはいえ、吉永さんもかなりがんばってた映画だったし、そういうのをおもいだしつつ観ていくと、化け猫の件りはどうしたところでやっぱり緊張しちゃうよね。
◇細雪(1959年 日本 105分)
英題/The Makioka Sisters
原作/谷崎潤一郎『細雪』
監督/島耕二 脚色/八住利雄
撮影/小原譲治 美術/柴田篤二 音楽/大森盛太郎
出演/轟夕起子 京マチ子 山本富士子 叶順子 三宅邦子 川崎敬三 菅原謙二
◇阪神大水害
昭和13年7月3日から5日にかけて、神戸市および阪神地区に降り続いた豪雨によって、死者616名を数える大水害がおこった。
原作でもこの大水害は描かれてて、島耕二はそれをカットすることなく、作中に描いた。
まあ、それは原作どおりでいいんだけど、谷崎という巨人に終始おされっぱなしの印象はある。
原作に引き摺られちゃうと、どうしても物語が長いだけに、話だけを追ってる感じになっちゃう。市川崑はそういうのをよくわかっていたんだろう、この大水害には触れてないんだけど、はたして、この四姉妹の物語にどこまで劇的な演出が必要なのかといえば、なんともいいがたい。
ところで、叶順子なんだけど、若尾文子が病気で降板した事で大役を手にしたそうだ。叶順子に比べると、轟夕起子の扱いが、たしかにこれもまた原作どおりとはいえ、なんだか物悲しくて、ぼくとしては辛かったかな~。
△銭形平次捕物控 鬼火燈篭(1958年 日本 99分)
原作/野村胡堂『銭形平次捕物控』
監督/加戸敏 脚本/小国英雄
撮影/牧田行正 美術/上里義三 音楽/鈴木静一
出演/長谷川一夫 香川京子 淡路恵子 岸正子 太田博之 黒川弥太郎 伊達三郎
△世代の差をしみじみと
ぼくの場合、銭形平次といえば大川橋蔵だ。
舟木一夫の歌とセットで、三ノ輪の万七の遠藤太津朗も強烈だった。遠藤さんはまあなんというか、橋蔵さんの引き立て役だったけど、あのブルドッグのようなこわもてさと愛嬌が魅力的だった。香川美子のお静もよかったしね。
だから、どうしても長谷川一夫の銭形平次はしっくりこない。
でもまあ、団塊の世代以上は長谷川一夫なんだろね。観客だけじゃなくて、舞台のようなセットと芝居で、みんなが揃って長谷川一夫をひきたててる。平次と島帰りの清次の一人二役は十八番なんだろうけど、頭巾を被って女装までという、雪之丞ばりのサービスに、縛り吊るされるという悲愴美まで、いやもうゲップが出るくらいに盛り沢山。
まあ、フアンのための映画ってことで。
◇おとうと(1960年 日本 97分)
英題/The Quick Draw Kid
原作/幸田文『おとうと』 監督/市川崑 脚色/水木洋子
撮影/宮川一夫 美術/下河原友雄 音楽/芥川也寸志
出演/岸惠子 川口浩 田中絹代 江波杏子 岸田今日子 森雅之 伊丹十三 仲谷昇
◇追悼市川崑その16
市川崑の岸惠子好きは筋金入りなんじゃないかっておもうくらい、ほんとによく使ってるし、また岸惠子もそれによく応えてる。たぶん彼女の魅力を一番よく知ってたんだろね。ラストカットの看護婦の部屋での仮眠から目覚めるや、蓬髪のまま片付けに飛び出してゆくところは、実に見事だった。
まあ、それと、この映画を初めて観たのは、たぶん、並木座だったかとおもうんだけど、そのとき、えらく画面がダークで、やけに渋い色合いながら発色がちゃんとしてる印象を受けて、なんだか変な感じの絵だな~とか、大正時代のカラー写真とかあったらこんな感じかな~とか、勝手な感想を抱いてた。
だけど、実はこの作品は、宮川一夫の発案した「銀残し」の初めての作品だったとかいうことを聞いて、
「なるほどね~」
とおもったことがある。
ところで、ずっと気になってることがひとつあって、この映画のロケ地はどこなんだろう?ってことだ。
ぼくの知ってる運河や桜並木が出てくるんだけど、たぶんまちがってるだろうから誰にもいわない。
◎ぼんち(1960年 日本 104分)
英題/The Son
原作/山崎豊子『ぼんち』 監督/市川崑 脚色/和田夏十、市川崑
撮影/宮川一夫 美術/西岡善信 音楽/芥川也寸志
出演/市川雷蔵 若尾文子 京マチ子 中村玉緒 草笛光子 山田五十鈴 越路吹雪
◎追悼市川崑その15
ぼんちいうたらあんなもんや、と、昔を知っている人ならいうだろう。
放蕩を尽くす男の哀れを描かせたら、ほんと、市川崑はうまい。
けど、和田夏十はこのときどういう気持ちで書いてたんだろね。そういうの、なんとなく興味があったりするんだけど、ま、余計なお世話か。芥川也寸志の音楽は、うん、大変なもので、ほかのところに書いてるから、ここでは書かない。
それもそうだけど、二代目中村鴈治郎、ほんまによろしいな。
△少年探偵団 鉄塔の怪人(1957年 日本 61分)
監督/関川秀雄 音楽/山田栄一
出演/岡田英次 宇佐美淳也 加藤嘉 中村雅子 小森康充 檜有子 古賀京子 小宮光江
△『かぶと虫の妖奇』の完全な続編
で、こちらから観ると、
「なんじゃこれ」
てなことになる。
まあ、それはいいんだけど、ただな~、タイトルは「鉄塔」だけよりもやっぱり「鉄塔王国」にしてほしかったな~。鉄塔王国っていうとなんだか昭和的な感じがしてよくない?
ま、これは個人的な感覚なんで、ぼくだけなんだろうけどね。
そんなことより、二十面相が勝手に放送している自前TV局は8チャンネルなんだけど、この時代はまだフジテレビは開局前なんだろか?
あ、それと、鉄塔王国と山間の嵌込合成は、いやまじ、上手だ。
上手なんだけど、中部山岳地帯にあるはずの王国の位置は、北緯37度40分、東経137度50分。
これって…富山沖じゃん!
△少年探偵団 かぶと虫の妖奇(1957年 日本 52分)
監督/関川秀雄 音楽/山田栄一
出演/岡田英次 宇佐美淳也 加藤嘉 中村雅子 小森康充 檜有子 古賀京子 小宮光江
△かぶと虫ロボット出現
いやまあ、当時の子供向け映画では、絵づくりはがんばってる。
とはおもうんだけど、素朴な疑問がある。
「かぶと虫の足って8本だっけ?」
なんてことはまあご愛嬌なんだろうけど、驚いたのは、関川秀雄の演出だってことだ。
へ~。
それと、加藤嘉の二十面相は、なんだか、好々爺みたいで妙な感覚にとらわれた。
もうちょっとダンディな役者の方が好かったんじゃないかと。
ただまあ、こういう50年代の映画ってのは、戦後の焼跡が到るところにあって、空撮なんか観ると、なおさら、ああ焼けとるな~とおもったりする。
冒頭の刑務所ロケは良なんだけど、現場の足跡から人工物ではなく虫の足と断言してしまう世界は、凄い。
△少年探偵団 妖怪博士 二十面相の悪魔(1956年 日本 55分)
監督/小林恒夫 音楽/山田栄一
出演/岡田栄次 中原ひとみ 小森康充 宇佐美淳也 檜有子 古賀京子 南原伸二 山形勲 飛鳥圭美
△撃っちゃいけない!
ちょいと、驚いた。
ぼくの知ってる怪人二十面相は子供のことが大好きで、だからまじめに怖がらせようとするんだけど、子供の命を取ろうなんてことはちっともおもってなくて、それだけは天地神明に誓ってそうなんだと、誰に対しても宣言しているなんともかっこいい泥棒で、徒党は組んでるけどお金儲けには興味はなくて、ただ世の中の美しいものを集める収集癖の講じた人間のはずだ。
なのに、この映画では国際スパイ団の首領になってるし、子供に向かって機関銃をぶっぱなすし、なんでそんなことをしてんだよ。
小林恒夫の演出がそうさせたのか、小川正がそんなふうに脚色してしまったのか、はたまた根津昇の企画がそうだったのか、ともかく、いくら東映が無節操だからって、いったい作り手として何を考えていたんだろう?
もしかしたら、原作をちゃんと読んでないんじゃない?ともおもっちゃったりした。
いや、そりゃ、ぼくは活字嫌いだし、世の中のほとんどの小説はほとんど読んだことはないけど、さすがに江戸川乱歩は読んでる。まあ、たしかに、映画は監督のもので、映画と原作は違って当たり前だし、作品の世界は監督だけが左右できることも知ってる。とはいえ、原作の心は受け継がないとね。
そりゃまあ、山間の橋の特撮や洋館の美術は、当時としては大したものだともおもうけど、乱歩の基本設定をないがしろにしちゃったのは、なんとも遺憾としかいいようがない。
ちなみに、明智小五郎は岡田栄次。