◎病院坂の首縊りの家(1979年 日本 139分)
監督/市川崑 音楽/田辺信一
出演/石坂浩二 佐久間良子 桜田淳子 あおい輝彦 草刈正雄 小澤栄太郎 大滝秀治 加藤武 小林昭二
◎追悼市川崑その14
犯人当てよりも、人間の哀しみをという主題に偏り過ぎたのと、戦後の混沌を意識しすぎたために、本来の横溝物の持ち味である土俗性が薄れるような気がしないでもない。最後の金田一を意識しすぎなのと、兄妹の過去の哀歓が描けてない分つらいかも。
というのはちょっとばかし酷評かしら?
ただ、市川崑の「もういいだろう?」っていう声が聞こえてきそうで、と同時に「こんな金田一もいいんじゃないか?」っていう挑戦状にも見えたりで、見直すたびに好感度は上がってくる。
ただおもうんだけど、金田一物の頂点はやっぱり70年代だったんだね。
当時はまるで意識してなかったんだけど、80年代に入るとともに時代はバブルに向かい始めたのか、徐々に日本のかたちが変わっていって、金田一の出番は少なくなっていったような感じがするんだよね。
このあとも横溝物は作られたけど、やっぱりこの作品でひとまず中締めだったんだろうなあ。
(以下、2022年7月6日)
ところで、本庄写真館へ向かう金田一が坂を降りてくるカットがある。坂の正面の俯瞰だ。問題は次のロングで、屋根が波のように続いてるんだけど、その左上の端の橋の上に真っ赤なファミリアが停まってる。まずい、これはなんともまずいぞ。誰も気がつかなかったんだろうか?