◇列車に乗った男(2002年 フランス 90分)
原題 L' Homme du train
監督 パトリス・ルコント
◇三日間でも一期一会
自分の人生をふりかえったとき、たいした人生じゃなかったかもしれないけどそれでもまあ満足だ、とかっておもえる人はどれくらいいるんだろう。やり残したこととか、やっておきたかったこととか、まったく自分とは吊り合わない世界で生きてみたかったとか、いろいろとあるんじゃないのか。ぼくは、もう、ごまんとある。
だからこういう映画はしみじみしちゃうんだよね、きっと。
フランスにはとてもよくある風景の町で、たそがれていくとき町の往来には誰もいなくなっちゃうようなうらさびれた田舎町、そう、ツールとかあのあたりの風景によく似てる。人生をなんの漣も立てずに生きてきて心臓病を患ってる元国語教師ジャン・ロシュフォールと、人生嵐ばっかりで今もって悪い昔の仲間から絶対に失敗しそうな銀行強盗に誘われるジョニー・アリディが出会うのはそんな町だ。
ただ、旅をしていると、ここまでではないものの、こんな場面に出くわすことはないわけじゃない。人間ってのはおかしなもので、とくに孤独な人生を送ってたりすると、まったく初めて出会った人間なのにいちばんの親友のように感じちゃことがある。で、その人間の人生が自分の憧れていた生き方だったりしたらもうほんと交歓したいくらいにおもっちゃうもんだ。そうした心の機微がよくわかるだけに、心臓の手術と銀行強盗のカットバックは悲しいね。