☆500ページの夢の束(2017年 アメリカ 93分)
原題/Please Stand By
監督/ベン・リューイン 音楽/ヘイター・ペレイラ
出演/ダコタ・ファニング トニ・コレット アリス・イヴ ジェシカ・ローテ
☆スタートレックの脚本コンテスト
すべての台詞が関連づけられていて、物語をひっぱっていく。
ダコタ・ファニングの冒頭のモノローグ。
「光は目的地に着くまで何百年も旅をする。孤独な旅は続く、出会いを求めて。でも永遠に着かず、家も見つからなかったら?宇宙は広大で、時間はあまりに長い。そして簡単に行方を見失いやすい」
モール街でのモノローグ。
「淀んだ深淵をのぞき、スポックはある物を初めて目にした。窓だ。別世界への扉。幻想ではない。光でもない。ただ感じる。理解不能の何かを。驚異を」
途中で拾ってくれた老人施設の優しいばあちゃんに、自分の脚本を語る。
「離れ離れになった友達の話。ひとりはバルカン人のスポック。彼はユーモアを習得する。昔バルカン文化にもあったジョークの構造を学ぶの。ジョークと顔の表情を関連づけて。ホログラフィックを参考に」
そして、ダコタ・ファニングの世話をしている施設職員は『スタートレック』を知らない。
「そもそも、スターウォーズのカークって誰?」
と、息子に訊く。
「お願いだから車をぶつけて一緒に死のう。まず、スタートレックね。ジェームズ・T・カークはエンタープライズ号の船長」
「なんでそこまで惹かれるの?」
「登場人物かな。スポックは人間と異星人の混血で感情に手を焼いている」
母親は、ここで気がつく。
一方、ダコタ・ファニングは病院から脱走しつつも脚本の一部を失って絶望したとき、スポックの台詞を読む。
「船長、論理的な行き方は、ひとつ。前方です」
このあとも、ダコタのパラマウントまでの旅と、彼女は自身の脚本つまり『カーク&スポックの旅』と、ダコタ自身の心の旅とが絡まりながら進行して、クリンゴン語を話す警官に助けられてゆく挿話もふくめて宇宙を放浪した光が到着したかどうかのラストまでひっぱるんだが、ほんと、うまい。
でも、アメリカでの評価はさほど高くないんだよね。