◎私は告白する
なんてまあ贅沢なセットだこと。当時はこんなに作り放題のセットだったんだろうかっておもうわ。教会もセットなんだろうけど、それはともかく、冒頭、directionの標識につられて巡っていく無人の町並みがなんともかっちりしててモノクロームの良さにひたれる。
モンゴメリー・クリフトとアン・バクスターの顔のきれいさはさておき、なんか似てる気がするのは、昔の恋人同士っていう設定のせいなんだろか。
なんつうか、前にこの時代の映画を観たときにもおもったんだけど、こういうメロドラマの筋立ては、ほんと、日本の作家たちを刺激したんだろね。
心の中ではとうに不倫してる男と女が嵐のせいで一夜をともにしちゃったとき、それが肉体関係はなかったにせよ、隠しておかないといけないってことから誰にもいえずにいたことが、やがて起こった殺人事件のアリバイを証明するときの障害になるってのは、まあ、洋の東西を問わず、使いやすい設定なんだろね。
しかしなんとも単純な話ながら見せるなあ。さすが、ヒッチコック。物語ってのは、鑑賞する側が登場人物のあほさ加減にじれったくなったり腹立たしくなったりしないと駄目なんだよって教えてくれてるような気がしたわ。