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長江哀歌

2022年03月19日 22時49分22秒 | 洋画2006年
 ◇長江哀歌(三峡好人)
 
 
 単調すぎて眠気と戦うにはなかなか根性がいるけど、まあ、ドキュメンタリー調のゆったり感は悪くないし、露光をおさえた画づくりはとてもいい。韓三明の演じる妻を探す夫と、趙濤の演じる夫を探す妻のどちらも山西省からやってくることの意味は、やっぱり、毛沢東の夢が三峡ダムだってことにあるんだろうか。わからないけどさ。
 
 夫探しの妻こと趙濤の向こう、ガメラ型のUFOが画面左から右へ飛んでゆくのと、LEGOロボットみたいなビル型のロケットが袖無しの肌着を干した向こうでいきなり発射してゆくのは、三峡から去っていく人々の象徴なのかどうかよくわかんないけど、眠気覚ましにはなる。
 
 まあ、社交ダンスは柔道の組手みたい噴き出しそうになるし、おっさんも若造もみんなランニングシャツか上半身裸っていう日本の戦後のような描かれ方だけど、これが三峡ダムの第3期工事に入った頃の中国なんだよね。ただ、春節ってところはとくに貧しいところらしいけど。
 
 役者はおそらくあらかたが素人で、その分リアルなんだけど、かえって玄人の夫探し女の趙濤の演技が下手に見えちゃう。韓三明が、16年離れ離れになってた妻と再会して、もっと南に出稼ぎに行ってる娘の写真を見てから、解体中のビルでウサギ印の菓子をもらったとき、ぶたぬかれた壁のずっと向こうのビルが爆破解体されてゆくのや、ラストカットの妻とめぐり会ったものの身請けの金を稼ぎに出る夫の向こうで廃墟から廃墟へ綱渡りをしていくシルエットが望まれるのは、なんとも象徴的でよかった。
 
 それにしても、賈樟柯、よくもこれだけ気の長い演出をしたもんだって感心する。ただ、撮影も録音も大したものだから全体的に味はあるし雰囲気もあるし社会性もあるんだけど、つまんないな~。
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