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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

幸福なラザロ

2020年04月15日 00時18分31秒 | 洋画2018年

 ◇幸福なラザロ(2018年 イタリア、スイス、フランス、ドイツ 127分)

 原題/Lazzaro Felic 英題/Happy as Lazzaro

 監督・脚本/アリーチェ・ロルヴァケル 音楽/ピエロ・クリチッティ

 出演/アドリアーノ・タルディオロ アニェーゼ・グラツィアーニ アルバ・ロルヴァケル

 

 ◇インヴィオラータ村

 実際に起こった詐欺事件を基にしているっていう触れ込みなんだけど、でもその事件がどんな事件だったのかはわからない。なんだか中途半端な感じを受ける。とはいえ、謳い文句に文句をつけたところで仕方がない。

 で、小作解放の後も騙して小作をさせられてた煙草農園の人々は解放されて社会に出たもののかえって惨めな暮らしを強いられるという皮肉はよくわかる。

 アリーチェ・ロルヴァケルが描きたかったラザロが、キリスト教圏ではどんな存在になるのかはわからないけれど、小作たちのために動き、教会から音楽を連れ出し、パチンコを武器にしたわけではないものの、銀行に嘆願に行き、殴り殺され、狼に憑依ってまでしても、小作らと共にあろうとするのはやっぱり聖人の証なのかしらね?

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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

2020年04月14日 13時07分18秒 | 洋画2018年

 ◇エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年 アメリカ 98分)

 原題/Eighth Grade

 監督・脚本/ボー・バーナム 音楽/アンナ・メレディス

 出演/エルシー・フィッシャー エミリー・ロビンソン キャサリン・オリヴィエ

 

 ◇学年で最も無口だったで賞

 離婚した父親の頼りなさが効いてる。

 とはいえ、動画に映っているときは可愛いんだけど、実物は肌も汚いし二重顎だし猫背で脂肪が余っててすべてがでかいという、容姿については劣等感の塊みたいな子ってことがまもなくわかる。それからが本題で、劣等感に苛まれている女の子の物語が語られ始めるんだけど、いやまったく、これだけ役に似合った子をよく見つけてくるもんだ。

 こういう子を主役にできるアメリカは、ほんと、大したもんだよね。

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ルージュの手紙

2020年04月13日 13時14分13秒 | 洋画2017年

 ◇ルージュの手紙(2017年 フランス 117分)

 仏題/Sage Femme 英題/The Midwife

 監督/マルタン・プロボスト 音楽/グレゴワール・エッツェル

 出演/カトリーヌ・ドヌーヴ カトリーヌ・フロ ポーリン・エチエンヌ

 

 ◇晩年の生き方

 カトリーヌ・ドヌーヴもそうだけど、どうしてフランスの女優は年取ると派手な格好になるんだろう?

 結局、継子と和解するだけでなく人生の友達みたいになっていく物語はたしかにありきたりだ。けれども、頼れる男たちがいなくなってお金も家もなくなり、ギャンブルで食いつなげる内はよかったけど、病を抱えるとどうしようもなくなって誰かを頼らないと生きていけないようになってしまう。そんな老人の哀れと最後の見栄はよく出てた。

 河川敷の家庭菜園にある桟橋に繋がれてた小舟に水が入りなかば沈んでいたのが桟橋に繋がれてからなんとか沈まずにいられたものの、ドヌーヴがキスマークだけの置き手紙を残していなくなったときにその舟がほとんど沈みながら静かに桟橋を離れてゆくのはドヌーヴの遠くない最期を案じさせてた。あざとい演出だけどね。

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500ページの夢の束

2020年04月12日 02時15分25秒 | 洋画2017年

 ☆500ページの夢の束(2017年 アメリカ 93分)

 原題/Please Stand By

 監督/ベン・リューイン 音楽/ヘイター・ペレイラ

 出演/ダコタ・ファニング トニ・コレット アリス・イヴ ジェシカ・ローテ

 

 ☆スタートレックの脚本コンテスト

 すべての台詞が関連づけられていて、物語をひっぱっていく。

 ダコタ・ファニングの冒頭のモノローグ。

「光は目的地に着くまで何百年も旅をする。孤独な旅は続く、出会いを求めて。でも永遠に着かず、家も見つからなかったら?宇宙は広大で、時間はあまりに長い。そして簡単に行方を見失いやすい」

 モール街でのモノローグ。

「淀んだ深淵をのぞき、スポックはある物を初めて目にした。窓だ。別世界への扉。幻想ではない。光でもない。ただ感じる。理解不能の何かを。驚異を」

 途中で拾ってくれた老人施設の優しいばあちゃんに、自分の脚本を語る。

「離れ離れになった友達の話。ひとりはバルカン人のスポック。彼はユーモアを習得する。昔バルカン文化にもあったジョークの構造を学ぶの。ジョークと顔の表情を関連づけて。ホログラフィックを参考に」

 そして、ダコタ・ファニングの世話をしている施設職員は『スタートレック』を知らない。

「そもそも、スターウォーズのカークって誰?」

 と、息子に訊く。

「お願いだから車をぶつけて一緒に死のう。まず、スタートレックね。ジェームズ・T・カークはエンタープライズ号の船長」

「なんでそこまで惹かれるの?」

「登場人物かな。スポックは人間と異星人の混血で感情に手を焼いている」

 母親は、ここで気がつく。

 一方、ダコタ・ファニングは病院から脱走しつつも脚本の一部を失って絶望したとき、スポックの台詞を読む。

「船長、論理的な行き方は、ひとつ。前方です」

 このあとも、ダコタのパラマウントまでの旅と、彼女は自身の脚本つまり『カーク&スポックの旅』と、ダコタ自身の心の旅とが絡まりながら進行して、クリンゴン語を話す警官に助けられてゆく挿話もふくめて宇宙を放浪した光が到着したかどうかのラストまでひっぱるんだが、ほんと、うまい。

 でも、アメリカでの評価はさほど高くないんだよね。

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海辺のリア

2020年04月11日 01時36分10秒 | 邦画2017年

 ◇海辺のリア(2017年 日本 105分)

 監督・脚本/小林政広 音楽/佐久間順平

 出演/仲代達矢 黒木華 原田美枝子 小林薫 阿部寛

 

 ◇一文字秀虎か!?

 舞台だね。

 仲代さんのひとり舞台みたいなもので、阿部たちの陰謀と黒木華の献身とかは添え物にしか見えない。

 黒澤明の『乱』がおもいだされるのは当然なんだけど、なんだかあざとすぎる気もしないではない。とはいえ、仲代さん、元気だね。気合と眼力はさすがだわ。役者根性の塊だな。

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カメラを止めるな!

2020年04月10日 01時10分52秒 | 邦画2017年

 ◇カメラを止めるな!(2017年 日本 97分)

 監督・脚本・編集/上田慎一郎 音楽/鈴木伸宏 伊藤翔磨 永井カイル

 出演/濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 浅森咲希奈 どんぐり 吉田美紀 合田純奈

 

 ◇芦山浄水場

 ゾンビドラマ『ONE CUT OF THE DEAD』37分はよくおぼえてるんだけど、後半は忘れた。

 でも、楽しそうな現場だろうなあって感じはした。自主制作映画はそうでなくちゃね。

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翔んで埼玉

2020年04月09日 00時58分32秒 | 邦画2019年

 ▽翔んで埼玉(2019年 日本 106分)

 監督/武内英樹 音楽/Face 2 fake

 出演/二階堂ふみ Gackt 伊勢谷友介 麻生久美子 中尾彬 武田久美子 麿赤児 竹中直人 京本政樹

 

 ▽魔夜峰央1982年作品

 なんか昭和臭いギャグだなとおもえば…。

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ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走

2020年04月08日 00時29分37秒 | 洋画2016年

 ◎ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走(2016年 フランス 92分)

 原題/À fond 英題/Full Speed

 監督/ニコラ・ブナム 音楽/ミカエル・トルディマン

 出演/ジョゼ・ガルシア アンドレ・デュソリエ カロリーヌ・ヴィニョ

 

 ◎予告編のMEDUSAの宣伝が好い

 制御不能になった新車Medusaの物語。

 とんだとばっちりを受けてドアを壊された黄色いBMWがぶちきれて、DUNJOON社の赤いミニバンMedusaをおいかけていくんだけど、途中、高速の検問を突破するときちゃんと料金を払っているのはツボった。車内に迷い込んでたスズメバチが負い出され、おいかけてる黄色い車に飛び込んでいくCGも秀逸だったし、ひとつひとつあげていくときりがない。

 てなことから、これは拾い物だったかもしれない。

 問題はどうやってこのブレーキまでぶっ壊れた車を止めるかだけど、黄色いBMWがジプシーの集落に突っ込んでからまじな展開になる。白バイを破壊された警官が、中国製の格安ボトックスを打たれたことで顔面の腫れた患者の車を接収してさらに追いかけるんだけど、その車に子供たちを収容し、さらにヘリで救出しようとする展開は実にスリリングだった。

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PARKER/パーカー

2020年04月07日 01時48分05秒 | 洋画2013年

 △PARKER/パーカー(2013年 アメリカ 118分)

 原題/Parker

 監督/テイラー・ハックフォード 音楽/デヴィッド・バックリー

 出演/ジェイソン・ステイサム ジェニファー・ロペス エマ・ブース

 

 △リチャード・スターク『悪党パーカー/地獄の分け前』

 汚い金しか盗まないとかいったところで、どのみち犯罪者なわけだし、そういう設定は洋の東西にあるんだけど、それがたとえパームビーチの風光に満ち溢れたところだろうとなんだろうと、どうもなあ。

 なんにしても、ジェニファー・ロペスが観られなかったら観なかっただろうなあ。

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ザ・アウトロー

2020年04月06日 01時36分40秒 | 洋画2018年

 ▽ザ・アウトロー(2018年 アメリカ 140分)

 原題/Den of Thieves

 監督・脚本/クリスチャン・グーデカスト 音楽/クリフ・マルティネス

 出演/ジェラルド・バトラー ライアン・カヴァノー ドーン・オリヴィエリ

 

 ▽元アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド

 そいつらのしでかした現金輸送車強奪と銀行襲撃をあばいていくカリフォルニア州の刑事の話だけど、いや、まじな話、見ているのが堪え切れなくなったわ。裏切らせた犬との連絡をストリッパーに取らせるのはいいとして、それを知った家族との離婚話とか、どうでもいいし。

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告白小説、その結末

2020年04月05日 01時20分18秒 | 洋画2017年

 ◇告白小説、その結末(2017年 フランス、ベルギー、ポーランド 100分)

 原題/D'après une histoire vraie 英題/Based on a True Story

 監督/ロマン・ポランスキー 音楽/アレクサンドル・デスプラ

 出演/エマニュエル・セニエ エヴァ・グリーン ヴァンサン・ペレーズ

 

 ◇デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガン『デルフィーヌの友情』

 途中まで、よくあるストーキング&ルームメイト物かしら?とかっておもってたんだけど、いや、まったく、エヴァ・グリーンでなかったら途中でやめたかもしれない。

 作家が筆を執ろうにもおもうにまかせず、欝々としてして才能の限界と枯渇をおもいしらされたとき、なにより心の支えになるのは自分のフアンだし、自分を盛り立ててくれる存在だ。それが恋人であればなおさらなんだろうけど、そういう微妙な心の隙間を狙うように悪魔のようなやつが忍び寄ってくる。そんなもんだよね。

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月に囚われた男

2020年04月04日 01時12分11秒 | 洋画2009年

 ☆月に囚われた男(2009年 イギリス 97分)

 原題/Moon

 監督/ダンカン・ジョーンズ 音楽/クリント・マンセル

 出演/サム・ロックウェル ケヴィン・スペイシー ドミニク・マケリゴット カヤ・スコデラリオ

 

 ☆月に意思があるのか?

 ダンカン・ジョーンズはデヴィッド・ボウイの息子だそうだけれども、いや、親の七光とかまったくなくって、長編の処女作だっていうのに脚本が実によく考えてある。クローンが自己に目覚めてしまったことから起きる滑稽な悲劇なんだけど、なんだか『人間牧場』をおもいだした。

 低予算の映画にしてはミニチュアもいいし、単調ながら音楽もまたいい。

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海外特派員

2020年04月03日 01時04分47秒 | 洋画1891~1940年

 ◎海外特派員(1940年 アメリカ 120分)

 原題/Foreign Correspondent

 監督/アルフレッド・ヒッチコック 音楽/アルフレッド・ニューマン

 出演/ジョエル・マクリー ラレイン・デイ ハーバート・マーシャル

 

 ◎ドイツ侵攻前夜

 特撮が凄い。墜落と漂流の場面とかよく撮ってる。過去の飛行機パニック物で、これと似たような感じの作品があったけど、いや、それより迫力があったかも。ま、それは言い過ぎかもしれないけど、風車の家での絶妙な緊迫感はやっぱりヒッチコックならではとしかいいようがない。

 なにより、ラレイン・デイのしとやかな綺麗さといったらない。

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女と男の観覧車

2020年04月02日 00時40分27秒 | 洋画2017年

 ☆女と男の観覧車(2017年 アメリカ 101分)

 原題/Wonder Wheel

 監督・脚本/ウディ・アレン 

 音楽/ミルス・ブラザーズ『コニー・アイランド・ウォッシュボード』

 出演・ナレーション/ジャスティン・ティンバーレイク

 出演/ケイト・ウィンスレット ジュノー・テンプル ジム・ベルーシ

 

 ☆1950年代、コニーアイランド

 なんちゅう綺麗な色彩だ。原色の発色の良さにはびっくりだわ。

 ウディ・アレンは、やっぱりうまい。ケイト・ウィンスレットの旦那ジム・ベルーシの娘に、ケイトの愛人が初めて会ったとき、キュートだというが、そのときケイトが美容院に行ったことに気づかない。これだよね。

 夫の蓄えまで盗んで愛人に貢ぐのは愛人をひきとめようと必死になるからだけど、どんどん深みに嵌まっていく女と新しい興味ができてひきはじめる女、見事やね。

 しかし、画面が綺麗すぎるぞ、ヴィットリオ・ストラーロ。ケイト・ウィンスレットが娘をギャングに売った事実をお見通しだと愛人に突きつけられる夕陽のさしこむ自宅の中の長回しは圧巻だな。

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バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡

2020年04月01日 00時29分42秒 | 洋画2014年

 ☆バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡(2014年 アメリカ 114分)

 原題/Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)

 監督/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 音楽/アントニオ・サンチェズ

 出演/マイケル・キートン エドワード・ノートン エマ・ストーン ナオミ・ワッツ

 

 ☆どん底からの復活という奇蹟

 鏡にカメラが写らないくらい屁でもない特撮というかデジタル処理というか、演劇という特撮とは相容れないような舞台設定の中で、よくもまあ、リアルな脳内を描いたもんだ。

 おもしろかった。役者がどん底に陥ることをよく知っている役者がそのままのような物語を演じるというのは、いや、痛いくらいによくわかる分、おもしろさが身に沁みる。

 音楽、ドラムが効いてるね。

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