Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

京都暮らし83. 後世の人々のつくり話

2009年08月29日 | field work
 「松島や ああ松島や 松島や」
 小学校の頃だったか、この俳句を誰かに紹介され、松島の風景に感動したので言葉もなく「ああ」という感嘆詞をつけて絶賛した、というのが誰かの説明であった。我が国の多くの人々は、この俳句に対して、そんな理解をさせられてきた。
 だが実際に松島を来てみると、私には、絶賛には感じられなかった。いくつかの小さな島が横一文字に連なり、それはそれで多少の変化があるのだが、至極平凡で退屈な風景だと思われた。おそらくこの時代の人々の感性には、水墨画の素養があったので、こうした島の連なりが絵の素材として、好まれていたのであろうと推測している。
 ところで、松尾芭蕉は松島では、「いづれの人か筆をふるひ詞(ことば)を尽くさむ」と述べて、松島では句を残さなかった。従ってこの俳句が後生の人々による作り話であるとする説を信じる方が正論のようだ。昔は、作り話がいつのまにか、松尾芭蕉の作であると、まことしやかに信じられてきたようだ。
 私は、この「ああ」は、感動ではなく、むしろ噂に聞いてやってきたが、がっかりしたという絶望感ではなかったかと勘ぐっている。そうであれば、今の私の感性と一致するのであるが・・・。
 そんなふうに結論づけて、我々は早々に松島をあとにして、仙台市内に戻り現代建築行脚を続けることにした。

松島・扇谷
Fuji FinepixS5pro,AF-SNikkor16-85mm/F3.5-5.6ED
コメント
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