Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング821. 小説:小樽の翠729.騙されたなって感じ

2023年12月08日 | field work

 雪が降るのが近づくと広告代理店のベーヤンが、小樽にまめに通ってくる。というのも新雪の街のカットを撮影して、いち早く今年の広告に使おうとか、来年のストックにするとか、いろんな目論みがあってロケハンにやってくる。ふりたての新雪でないとクライアントが納得しないし、聴視者から文句がSNSに投函されたりする時代だから、新雪ふりたての映像はみんな欲しがる。だからベーヤンも小樽の小さな倉庫を借りて機材、といっても大きなクレーンもあるのだが、そんな機材のセッティングがあるのだ。
そんなベーヤンからメールがあった。
今日はセットの準備をするだけだから、時間がある。飲もうよ、というわけだ。
いつものオーセントホテルのラウンジに出かけた。
ベーヤン「先日CMの撮影で黒人モデルを起用したんだ。ソレガサア・・・、スレンダーなホディで、およそ無駄な脂肪が全くなくてさ・・・。そんなのがコスチュームを羽織ると、ゆったりとしていて格好良いわけさ。世界のファッションは彼女たちのためにあるといってもよい。それに目が慣れると、もう欧米人のボディなんか感激もなくなるし、日本人なんか眼にもはいらないよ。日本人のホディって子供以下だもん。水着にしておむつのCMに使ってもなぁー・・・。」
「新しい美の規準に気がついたわけだ・・・。」
ベーヤン「だってCM撮影で日本人モデルがもったいぶって『契約では水着の撮影もあるので、あとで脱ぎますね』というからさ、俺は『そんなのカメラマンに任せておくから適当やってよ・・・』といってずらかったことがある。今時日本人二十歳ギャルホディじゃ広告の訴求力がないさ・・・。」
「ヨーロッパの歴史的美の規準というとギリシャ彫刻じゃん。女の体型の理想とされてきたのがビーナスだよね。でもそれって何処か叔母さん臭い体型なんだよ。何故ならギリシャ人はアフリカを知らなかったんだよ。」
べーヤン「現代の発見だな。」
「随分前からパリコレで黒人モデルを起用していたからスタイルが良いのは世界の認識になっていた。そのころは遠くの世界の話しだと思ってみんなも眺めていた。特殊解だと思っていたわけさ。ところが今は我々の身の回りに登場するじゃん。特殊ではなく一般解だよ。新しい美の規準が身近にあるというわけさ。」
ペーヤン「昔広告の世界でも、黒人モデルを使え!、という時があった。だが私達の認識からはあまりにも離れすぎていて痩せた人ぐらいの認識しかなかった。だからしばらくするとすたれていった。ところが、今はメディアではなく、私達の周りに登場するわけさ。」
「新しい美の規準が一般化してきたんだ。そこからまた次の時代さ・・・。」
ベーヤン「そんなのに見慣れると、日本のギャルの身体をみせても広告の訴求力がないよなぁー・・・。」
「その子供の体型に、これまで性欲をかきたてられていた。」
ペーヤン「だから騙されたなって感じがするよ。」
・・・
ベーヤンとの会話は、まだまだ続きそうだ。
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