コタツ評論

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あけましておめでとうございます

2010-01-01 18:38:00 | ノンジャンル
両親の家に帰っている。正確にいうと、弟一家と同居している家になる。私は寅さんにきわめて近い立場である。



元日にしたこと。

①暮れに作ったお節料理を食べさせる

ーなかなか好評だった。煮しめは、われながらわるくなかった。数の子は塩抜きが足りなくて、少ししょっぱかった。しかし、夕食に、弟の嫁さんが買っていた、料亭風のお節詰め合わせを開けると、オヤジの箸はそちらばかりに向かう。昔から、そういう気配りがない男である。

②車を20分ほど運転して墓参りに連れていく

ーお盆のときに、オフクロの芋虫歩きには参ったので、トランクに車椅子を積み込む。弟は、1人で2人の面倒を見るのはとても無理、午後になったら一緒に行こうと止めた。弟の車には、座席がドア外にまで電動でせり出し、障碍者でも乗りやすい設備がついている。それでも、珍しくオフクロが積極的なので強行した。天気晴朗、富士山の白袴に喜ぶ。心配したが、スムーズに墓参りできた。「よくがんばった」とオフクロを褒めてやる。

③手垢汚れを落とす

ー冷蔵庫や、炊飯器、電子ジャー、レンジなどの手垢で汚れたところを中性洗剤を含ませたスポンジで擦り落とす。父母は黒ずんだ手垢汚れにまったく気づいていない。茶渋のように見慣れてしまうのだ。ついでに、台所のタイルやトイレ、洗面所も磨き上げる。こういう頑固な汚れには、まずスクレーパーを使うとよい。幅広なカッターの刃のような道具だ。ホームセンターなどで売っている。洗剤で濡らした後、刃を斜めにしたスクレーパーを滑らせ、それからスポンジ、水拭き、乾拭きという順序だ。

④母を風呂に入れる

ー朝風呂をわかして保温しておいた風呂をオフクロに勧めるが、足腰が不自由なための恐怖のせいか嫌がる。最近、また転倒したそうだ。浴槽の段差をまたぐのはとても無理だが、抱え上げるのも痛がるのでできない。だが、こちらの狙いは、何日も着たままの重ね着を着替えさせて洗濯したいのだ。オヤジも着替えは嫌がったが、朝風呂に入らせたら、すんなり洗濯物を出した。オフクロはそう簡単ではない。裸にさせて湯に浸からせるまで、風邪をひくのではないかと心配するほど時間がかかった。痩せた背中を流し、後ろから乳房や脚も泡立てて洗ってやる。「前は自分でな」と石鹸をつけたナイロンタオルを渡す。オフクロは、簡単に洗って済ませた。大丈夫かね、そんな猿が尻拭くみたいで。

介護の悔悟

両親とも、夏に来たときに比べると、一段と耄碌し、とくに母のボケがひどくなっている。晦日に顔を合わせたとき、一瞬、私がわからず、怯えた眼をしたのにショックを受けた。弟が、何か母に怒鳴り散らしていたので、何も怒鳴らずとも、と苦々しく思っていたが、半日もたたないうちに、「何度ゆったらわかるの! 寝煙草したらダメだとゆってるでしょ!」と怒鳴っていた。子どもに対するのと一緒である。子どもを叱ることには、意義も展望もあるが、ボケタ親を叱ることにあまり意味はありそうにない。猫を叱るのと変わりない。すぐに忘れて、すぐに同じことを繰り返す。誰しも、はじめて老いる。誰しも、年老いた親に、はじめて接する。どうしたらよいのか、わからない。生産性とか、効率なんてことが、ごく一部の、きわめて限定的な分野にしか通用しないことがよくわかる。弟とその嫁さんには頭が上がらない。戯れにも、たった4日間の世話を「介護」といえば、気を悪くするだろう。オフクロが俺を叫び呼んでいる。6時に寝てくれるのは助かると思っていたが、そうは問屋が卸さないのである。「はいはい、かーちゃん、なんですか?」。



コメント
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