コタツ評論

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東松山・テヘラン・ラスベガス

2012-03-22 01:09:00 | ノンジャンル
先日、関越自動車道を走行中、東松山インター付近で、不思議な標識を見た。「東松山・テヘラン・ラスベガス」である。東松山とは、埼玉県中央部に位置する人口9万人の市である。埼玉県民の私も、関越に東松山インターがあるというほかには何の知識もなく、これといったイメージもない。

埼玉県内でも無名の郊外市が、どうしてイランの首都テヘランや、アメリカのギャンブル都市ラスベガスと並記されるのか。都市としての背景や規模が違いすぎるから、姉妹都市や友好提携を結んでいるとは考えにくい。それとも、東松山がイランのテヘラン市やアメリカのラスベガス市と何か産品を輸出入している関係なのか。

すると、テヘランとラスベガスの共通性がまるで思い浮かばない。第一、イランは核兵器開発をめぐって、アメリカ主導の経済制裁下にあり、たしか日本もイラン産原油の輸入中止に参加しているはず。原油にかぎらず、イランと東松山市の間に、何らか交易ルートがあるとはとても考えられない。

東松山はともかく、テヘランやラスベガスには、なにほどか危険なイメージはある。たとえば、テヘランから密輸入した麻薬を目立たない東松山からトラック便で日本各地の卸元に運び、儲けた金はラスベガスでマネーロンダリングするとか、国際的な犯罪組織による走行車向けに何かの暗号かもしれないなどと、そんなハードボイルドな妄想に耽ったりもした。

しかし、関越自動車道の道路際に立つ、変哲もない丸ゴシックでかかれた道路標識である。ポールは地中からコンクリートで固められており、急場しのぎに立てたものではないことはたしかだ。

花園インターを下りて所用を済ました帰途に、もう一度通って標識を見るまではまるでわからず、ちょっとした謎にまで格上げされていた。「東松山・テヘラン・ラスベガス」。いったい、これは何なのだ? たしかめてみれば、何ということはない。上りの車線に見える標識には、3都市を並記した理由が記されていた。

この3都市はいずれも(テヘランやラスベガスと並べて、東松山を都市というのは、銀座・青山・北千住を並べて東京の繁華街というほどの違和感があるが)、北緯36°線上にあることが共通している。それだけ。テヘランやラスベガスが北緯36度にある有名都市だから。それだけ。

謎は解けたが、ちょっとした腹立たしさは、残った。いったい、東松山市役所の誰が、この標識を発案したのだろうか。顔を見てみたいものだ。忙しくて焦っているのに、脇見運転しながら走行する羽目になって、ちょっと危険じゃないか。それなのに、つまらない落ちに、ただ疲れただけじゃないか。

だから、埼玉はバカにされるんだよ。ふんとに、もう。

ついでに、東松山市は、埼玉県の中央部に位置するところから、埼玉県の臍(へそ)と自称しているらしい。そこで、東松山市のキャッチコピーは、「埼(さい)の彩(さい)の臍(さい)は東松山市」だそうだ。俺が東松山市民なら、次の選挙で市長にサイナラするな。
コメント (2)
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