コタツ評論

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言語道断という横断について

2013-05-18 05:52:00 | 政治

米国務省のサキ報道官

橋下大阪市長の「従軍慰安婦は必要だった」「米軍は風俗業を活用すべき」発言について、アメリカが批難したと話題になっています。では、「アメリカが批難」が実際にはどういう文言だったのか、日本のマスコミがそれをどう翻訳して報道したのか、くわしくまとめたサイトがあったのでご紹介します。

橋下市長発言を米報道官が初批判した話題についてhttp://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2013/05/post-a808.html

ネットが普及する以前なら、こうした情報が一般人の眼にふれることはまずありませんでした。たまに一般人に届くとすれば、専門のメディア研究者が大学の紀要や専門誌に書き、その紹介が月刊総合誌あたりに数か月後くらいに掲載されるものでした。

さて、米国務省のサキ報道官は、冒頭でこう「批難」しています。結論や言いたいことを最初に云うのがアメリカ式です。

Mayor Hashimoto’s comment is outrageous and offensive.

橋下市長の発言は、アウトレイジアスオフェンシブです

NHK   → 異常な発言で不快
共同通信 → 言語道断で不快
ロイター  →  言語道断で侮辱的
産経新聞 →  言語道断で侮辱的
朝日新聞 →  言語道断で侮辱的

アウトレイジアスとオフェンシブが並びます。「慰安婦は必要」に対してアウトレイジアス、「米軍も風俗業を活用すべき」へオフェンシブを宛てたと読めます。同時に、アウトレイジアスが客観的評価、オフェンシブがアメリカの感情を表す文脈とも考えられます。アウトレイジアス(極悪な、非道な)をオフェンシブ(不快な)が補強していますから、アウトレイジアスがもっとも重要な言葉だとわかります。

NHK以外は、アウトレイジアスを言語道断と翻訳しています。言語道断が適切な翻訳なのかどうか私にはわかりませんが、この言葉自体は以前から知っていました。北野武の映画「アウトレイジ」を観ていたからです。この映画のキャッチコピーは、「全員悪人」でしたから、私訳すれば、「橋下市長の発言は、極悪で不快だ」となります。

ほかにも、このサイトの執筆者も指摘しているように、

were trafficked for sexual purposes

従軍慰安婦を「性目的の人身売買」とした trafficked を朝日新聞訳だけが、「性的な目的で連れて行かれた」としているのも興味深いところです。

こうした良質なサイトのおかげで、私たちは「ニュース」と「話題」の間を検分できるようになりました。「話題になっている」ことは知っていても、「ニュース」についてはよく知らない。手っとり早く「話題」を知りたがったおかげで、何か重要な点を見逃すだけでなく、誤った情報や知識を植えつけられていたかもしれないわけです。

Hi, my name is Takashi from Japanese newspaper Asahi.

「ハァイ、日本の朝日新聞のタカシです」という名乗りは、どこか間抜けで可笑しくちょっと哀しいものですね。訪米したら橋下市長も、「ハァイ、大阪市長のトオルです」と自己紹介したらよいのではないでしょうか。

(敬称略してないな、うん)

コメント
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