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中学生の正義

2014-10-16 04:57:00 | 政治
かつて、この人の『単一民族神話の起源――<日本人>の自画像の系譜』、『<日本人>の境界――沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮:植民地支配から復帰運動まで』、『<民主>と<愛国>――戦後日本のナショナリズムと公共性』などを読み、「現代の丸山真男」と買っていたのだが、なんとひどいコラムを書くようになったのだろう。

『<民主>と<愛国>』では「進歩的知識人」を分析対象にしながら、その淵源のひとつである「国際社会」については、無前提、無原則に臣従して、地球に対する温室効果ガスのような、「効果」と「作用」の話しかしない。戦前と戦後の「断絶」を自らの断絶と分かち難く苦闘した、戦後初期の「進歩的知識人」の矜持の欠片もみられないではないか。

いや、丸山真男ですら、一個の思想家というより、「ただの優等生」と評した、夫子自身の思想が「枢軸国日本」と「戦後日本」にとどまるとは! 戦前の「悪い日本」と戦後の「正しい日本」というなら、<日本人>に「自画像」や「境界」などありはしない。ただの「中学生の正義」である。

占領軍司令官ダグラス・マッカーサーは「日本は12歳の子ども」と発言したことがあったが、映画監督の篠田正浩は、黒澤明の一連の「社会派映画」を評して、「中学生の正義」と冷笑したことがある。しかし、いずれも占領期や戦後遠からずの頃の発言である。

戦後70年近くを経て、これがたどりついた「思想」かという空しさ。安倍政権の低劣な「戦前回帰」と同様に低劣な「戦後回帰」を表す、「戦前」の「進歩的知識人」の一人に数え上げておく。

(思想の地層)「誤解」を解く 「枢軸国日本」と一線を 小熊英二
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11401532.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11401532
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