コタツ評論

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村上春樹にご用心

2007-10-31 00:28:25 | ノンジャンル
内田 樹 アルテスパブリッシング

ブログエッセイをまとめたもの。

http://blog.tatsuru.com/

ネット向けのブログエッセイと商業出版、学術研究を分け隔てない書き手が現れた。
まずブログに書く、まとめて書籍化する、研究ノートとしても活用する。ネットがまだうさんくさい三流媒体視されていることを逆手に取った芸当だ。少し前なら、同じ原稿の重複売りと非難されてもしかたがなかった。

逆にいえば、俺のように思いつくままブログに書き散らすのではなく、高水準の思索と練れた文章を惜しげもなくネットに晒してきたからこその「一粒で三度おいしい」なのだろう。誰に頼まれなくとも、書きたいことを書く、書き続けるというのは、口でいうほど易しいことではない。著者は団塊世代のすでに初老といえるが、メディアを等閑視できる新しい書き手なのかもしれない。

さて、本書では、やはり、なぜ村上春樹が日本の文壇や批評から無視され続けているのかに言及したところが読みでがある。ただし、俺はこの黙殺が、著者がいうように批評家たちが世界文学がわからないからだとは思えない。また、村上春樹を正当に評価しているのは著者には加藤典洋以外に見当たらないそうだが、たとえば荒川洋治も「現代最高の作家」と評している。

いささか牽強付会ではないかという疑問は残るが、著者の村上作品の構造分析の手並みは鮮やか。食わず嫌いを反省するきっかけになった。

たしかに、『カラマーゾフの兄弟』は、地球上のどこにでもいる説得力のある人間像が描かれている。ロシアの色や音、匂いは読みはじめる前に想像したより、ずっと希薄だった(新訳だから希釈しているのかもしれないが)。



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