バレンタイデイといえば、この「マイファニー・バレンタイン」が思い出されるわけですが、アニタ・オディより、サラ・ボーンより、チャカ・カーンなど問題にならぬ弘田三枝子の歌唱です。
昔の有線放送では、チェット・ベイカーやマイルス・デイビスの演奏がよく流れたものですが、チェット・ベイカーのボーカルは自殺しそうに暗いし、マイルス・デイビスのトランペットも孤独な心象画を描くようです。
だもんで。チョコレートをあげたりもらったり、告白したりされたり、みなそれぞれロマンチックで楽しそうなバレンタイデイを過ごしているというのに、俺(あたし)ときたら寂しく独り、届かぬ想いに涙するなんて、ほんと笑っちゃうぜ(わ)、そういう歌だと思ってきましたが、全然まったく違う歌でした。
My Funny Valentine
My funny valentine,Sweet comic valentine
You make me smile with my heart
Your looks are laughable,Unphotographable
Yet you’re my favourite work of art
Is your figure less than greek?
Is your mouth a little weak?
When you open it to speak, Are you smart?
But don’t change your hair for me
Not if you care for me
Stay,little valentine, stay!
Each day is Valentine’s Day.
My Funny Valentine
コタツ訳詞
変てこで可笑しいあたしのヴァレンタイン
あなたは心からあたしを笑わせてくれる
あなたの容姿って笑っちゃう
写真向きじゃないけど
あたしお気に入りの芸術作品よ
ギリシャ彫刻にはほど遠い貧弱な身体だし
しまりのない口で話すから
ときどきバカなのかなと思っちゃう
でも、その髪の毛一本だって変えなくていいの
あたしを愛しているなら、ヴァレンタイン
ずっとそのままでいて、ヴァレンタイン
あたしの毎日は、ヴァレンタインの日なの
つまり、女性から男性へチョコをプレゼントして好意を示す「ヴァレンタイン・デイ」の歌ではなくて、ヴァレンタインという名前の男の子に恋してる女の子の歌でした。
貧相な身体にいつも口が半開きの変な顔だけれども、いままで交際してきたマッチョやハンサムより、あたしを理解してくれるし、いちばん愛してくれる。あたしもあなたが大好きよ。という、ちっとも暗くも寂しくもない、その反対の歌でした。
なのに、孤影を濃く歌われるのは、この女の子はヴァレンタインへの思いにいま気づいたばかり、まだその心を伝えていないからです。恋をすると、失うのではないかと人は不安になり、逢えないときにはよけいに寂しくなります。
なるほど、やっぱり、「ヴァレンタイン・デイ」の歌でもあるな。
(敬称略)
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