コタツ評論

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ウィンナコーヒー

2011-10-25 23:58:00 | ノンジャンル
ホームから母を連れだしてコメダ珈琲へ。
かあさんにはウィンナコーヒーを頼む。
盛大にのってきた生クリームに、
鼻の頭と唇を白くしながら、真剣に飲んでいる。
たて続けにタバコも吸う。
小学生の頃もこうして、
仕事から帰ってきたかあさんが、
コーヒーとタバコで一息入れるのを眺めていた。
ほんとうに一息一息せわしく口に運び、
「ありがとね」とすぐに台所に立つのがつねだった。
いまもそうしたいらしいが、
大振りなマグカップが重いのと、肺活量が衰えたために、
ずいぶんとゆっくりになった。
「この前はあまりおいしくなかったけれど、このコーヒーはおいしいよ」
「そうかい、よかったね」
たぶん、かあさんがウィンナコーヒーを飲んだのははじめてのはずだ。
あの頃は、インスタントコーヒーだったし、
その後もスーパーの安い粉挽きコーヒーしか知らないはずだから。
「おまえとこの店に来たのは、はじめてだね」
「そうだね」
「あたしはコーヒーが好きだ」
とはいっていたが、
とろりと濃いストレートコーヒーなど味わったことはないはずだ。
かあさんのコーヒーはいつも、
クリープやスジャータをたっぷり入れて、
コーヒー牛乳のようになっていた。
「ここのお金は大丈夫なのかい?」
「だいじょうぶだよ」
「あたしは一銭もお金がないんだ」
「うん」
あと何回、かあさんに、
コメダ珈琲のウィンナコーヒーを飲ませてやれるか。



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