コタツ評論

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政権の頂きに立たしていただいた

2010-06-07 23:26:00 | ノンジャンル
菅新内閣の発足の党議員総会で、司会者が、会場にいるはずの小沢一郎を「政権の頂きに立たしていただいた」と称え、会場が拍手に包まれるという中継画像が、今夜、TV朝日の報道ステーションで流れていた。「高みに立たしていただいた」だったかもしれないが、いずれにしろ、語るに落ちた場面だった。

現在の民主党は、周知のように、鳩山・菅の民主党と小沢の自由党が合併してできた。今回、小沢グループが排除されて、旧民主党が党と内閣の実権を握ったわけだが、小沢チルドレンの大量加入によって党内最大グループになった小沢グループに向けて、「政権交代は小沢さんのおかげだった」とマスコミの前でアナウンスして見せたわけだ。当の小沢は欠席していて、会場の「笑顔」と「拍手」は空回りに終わったのだが、このアナウンスの意味と効果について、誰でも以下のことに気づくだろう。

①小沢さんありがとう、これからは僕たちがやりますから、引っ込んでな。
②小沢さんありがとう、これだけ気を遣ったんだから、波風立てないでね。
③小沢さんさよなら、小沢グループの皆さんこんにちわ、なかよくやろうね。

もちろん、欠席していた小沢はこのようなアナウンスがされることは、事前にまったく知らされていなかっただろう。当人が欠席しているのを承知の上で、「過去の人扱い」のアナウンスをしてみせたのだから、菅直人と内閣、党の面々が会場に小沢の姿を探して、わざとらしく首を回して見せた仕種を含めて、きわめて無礼なことであった。出席していた小沢グループの面々は、怒りに青ざめたことだろう。

しかし、民主党内の勢力地図がどう変わろうと国民には直接関わりない。俺は、「小沢色の排除が内閣や党の最大の課題である」という論そのものを、「バカいってんじゃねえよ」といってきたわけだから、小沢が失脚しようがしまいが、それはかまわない。

問題は、語るに落ちた、ことだ。「頂き」でも「高み」でも、いずれにしろ、その言葉づかいに、万雷の拍手で応えた旧民主党グループが、政権に焦がれていたことが、はしなくも表れたことである。菅首相の誕生によって、旧民主党が天下を取った。その喜びに沸き立ったことである。旧民主党グループの多くは、要するに、ただ自分たちが、首相に、大臣に、政権与党の幹事長になりたかっただけなのだ。

小沢はつねにNO2を持ち場にした。自民党時代には、総理総裁にこそならなかったものの、党と内閣の主要ポストを占め続け、ほとんどの内閣のキングメーカーであったが、あっさり自民党を離党して、二度と戻らなかった。以後、長年、政権交代を唱え、一度は、細川内閣でそれを実現して見せた。

細川殿様内閣であれ、誰が「頂き」や「高み」に立っても、NO2として仕事ができればよいというのが小沢の立場である。小沢にとって、政権とは「頂き」や「高み」に登ることではなく、自らが理想とする改革や政策を実現するフラットな機会なのだろう。誰かがいっていたが、小沢は、「改革オタク」なのかもしれない。

しかし、合併前の旧民主党と旧自由党はジリ貧だった。政権交代はおろか、そのままいけば、解党の危機だった。合併後も、岡田前原両代表の下で戦った選挙は負け、小泉人気に圧倒されていた。小沢が選挙を仕切り、参議院をひっくり返したお陰で、「ねじれ国会」から地滑り的政権交代につながったわけだ。

しかるに、選挙対策委員長になった旧民主党の安住淳などは、朝のニュースショーなどに出演して、「民主党の伝統は若手でも政策に参加できることだった」など、旧民主党を現民主党にスライドさせる印象操作を盛んに駆使している。自由党など、最初からなかったかのように語っている。

また、「鳩山さんは、僕ら一年生議員にも政策の勉強をさせてくれた」などともいう。それは鳩山が鳩山家から持ち出した金にたかっていたに過ぎないが、そうした発言の狙いは、次の選挙だけに集中せよと「雑巾掛け」を命じられている小沢チルドレンの一年生議員に、秋波を送っているのだろう。

また、昨夜のNHK新内閣特番に出演していた、今度、政調会長になるというゲンバとかいう旧民主党も、「本来、民主党は生活者第一の党であったはずなのに、選挙第一の党になってしまった」と同様に小沢を批判した。現在の民主党は小沢の自由党を含めた民主党であるはずなのに、旧民主党だけを現民主党に重ねているわけだ。

つまり、「頂き」や「高み」という言葉づかいにはしなくも表れているのは、自民党に代わって政権を担う政権交代ではなく、旧民主党による政権奪取ということである。小沢側近の松木謙公は、「負けたら干されるのが政界に常ですから」と笑っていたが、対等合併であったはずなのに、吸収合併だったわけで、小沢と旧自由党グループは裏切られた思いだろう。

「改革オタク」の小沢率いる旧自由党が、政策的には一枚岩であるに対して、旧民主党は右から左まで政策的にはバラバラであることは周知のことだ。実権を握った旧民主党グループが、小鳩政権ができなかった改革や政策を前進させるならいいのだが、「小沢色を排除」して、いったい何をやるのか、いまのところまったく見えてこない。

俺は、「小沢色を排除」はマスコミのミスリード(誤導)かと思っていたが、本当に菅内閣と民主党の最大の課題らしい。すると、次の参議院選挙は、「小沢色を排除」を選挙民に訴えて民主党は闘うのか。今度は、小沢に議員辞職でも迫るわけか。たしかに、それが現在の民主党にとって、もっとも実現可能な「改革」ではある。

(敬称略)










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そろそろ採点しようや

2010-06-06 23:39:00 | ノンジャンル
小鳩が影響力を失った場合、民主党の「改革」とやらがどんな風になるか。たとえば、その見本が、民主党次代のホープ・原口一博総務大臣の「光の道構想」である。ソフトバンクの孫正義が、NTTを分割して、その光回線を使わせよと提言するのはいい。後発企業として、当然の要求かもしれない。ただ、それに脳天気に乗ってしまう「改革もどき」が問題なのだ。

NTTを分割民営化して、市場経済に任せればすべてうまくいく、外資も参入できるからアメリカは歓迎する、税金も使わずにすむ。つまり、竹中路線と同じ、新自由主義経済なのだ。その結果、失敗しても民間のせい。最後は、税金を投入して尻拭い。実のところ、企業にリスクはない。原口一博総務大臣の責任は問われない。

彼らの「政策」とは、」ソリューション(解決策)のひとつ。中長期を視野に入れた「最適解」を捻り出すために苦悶するようなことはない。「孫さん、良いアイディアですねえ。どんどんやりましょう」。パワーポイントで作成された企画書レベルで政策が決定される。結果が出る頃には、ほかの大臣をやっている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ソリューション (solution) の元の意味は「束縛から解放されたもの」。ラテン語で「束縛から解放された」を意味する形容詞 solut(us) に名詞化語尾 -ion をつけた英語の名詞。具体的には以下のような用法で使われ、各分野の専門用語として日本語にも取り入れられている。
  *自然科学において、溶液、あるいは溶解のこと。
  分子やイオンが固体の束縛された状態から解放されて、溶媒の中で遊離している。
  *方程式などの解。物事の解決方法。未解決という束縛状態から解放される。
  システムソリューション。さまざまな物事、ビジネス、サービスにおける
   問題・課題課題を解決するためのコンピュータシステムおよびサービスの総称。
 *債務履行。債務を負っている状態からの開放行為。


そのときどきのソリューション(解決策)を出すなら、知識や情報を蓄積する官僚のほうがはるかに優秀。「最適解」と苦闘するのが政治主導。いくつかのソリューション(解決策)から選ぶのではなく、より高次の国益とか、将来のビジョンとか、グランドデザインとかを分母として、予測できるかぎりの変数を勘案しながら、進む、止まるを決断するのが政治主導のはず。そのときどきのソリューション(解決策)に飛びついて、「改革だあ」とアピールするのが目的なら、官僚が、こんな政治家に政治は任せられないと「義憤」に燃えるのを止められない。やがて、「抵抗勢力」に大義が移るだろう。

「コンクリートから人へ」「生活者主権」などを本気で考え、実現しようと思っているのは民主党でもごく一部。大多数は、政治家は人気商売くらいにしか思っていないのではないか。小沢一郎が、選挙で洗礼を受けよ、と叱咤するのは、政治家のソリューション(解決策)は、選挙民のなかに在るということを指摘したいがためだろう。国民のソリューション(束縛からの解放)に寄り添うことから、政治家を不本意な束縛から解放することがはじまる。そこでようやく、解決策ではなく、最適解を求める資格が備わる。

小沢一郎の影響力を排除することが最大の課題であり、党再生の解決策であるような民主党なら、少なくとも内輪の問題を外に出さぬ官僚政治のほうがずっとマシである、民主党の「改革」の中味をそろそろ問おうじゃないか、とマイマイカムリがいっておりました。

(敬称略)
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本日の愚論画像

2010-06-06 00:39:00 | ノンジャンル
今夜のNHKの新内閣特番を観て、驚いたねどうも。
司会の岡本行夫が管内閣の3つの課題をフリップにして見せたもんだ。

ひとつめは、小沢一郎の影響力
ふたつめは、普天間移設問題
みっつめは、政治主導

あのさ、ひとつめが、小沢一郎の影響力(の排除)ってのはなんなのさ。いったい、いつから、オザーはヒトラーやスターリンになったのさ。第一、これほど長期にわたって、連日、誹謗中傷されるヒトラーやスターリンがいるかっての。呼ばれた反小沢の急先鋒、ゲンバとかいうのがあわてて、「民主党は国民の生活第一の政党に戻るべき」と付け足していたね。新内閣の課題の筆頭が、小沢一郎の影響力(の排除)じゃ、世界の政治史に残る珍論じゃねえの。それじゃ何か、オザーが死んだりでもしたら、日本はバラ色、赤飯炊いて国民の祝日でもするっての? 小鳩辞任で支持率がアップしたっていうけど、たった9ポイント。そもそも、民主党が支持されて政権交代が実現したって、嘘っぱちを既成事実化するんじゃねえっての。ほとんどの人は、民主党のマニュフェストの内容なんて知らず、ただ、自民党にウンザリしたから、しかたなく民主党に入れたんじゃあないのかね? 嘘つきとか裏切られたなんて、沖縄県民以外がいえば、口が曲がるさー。鳩山一人を矢面に晒して、普天間問題で何もしなかった担当大臣の岡田前原に実力がないのは以前からわかっていたが、首相と日本への忠誠心もないことが明らかになったいま、9月の代表選ではもっと若手の小沢チルドレンをぶつけるゾ、このヤロ。鳩山の金と小沢の政略でたまたま政権を奪ったに過ぎないものを、どの面下げて民主党への支持なんて口に出せるんだよ。民主党のお陰で当選し、政治資金のすべてを得ている議員が、どうして民主党を変えることができ、他人の選挙の面倒をみれるんだあ? 昔から、政治は金持ちの道楽、選挙に落ちる心配のない奴が、やるもんだし、できるんだ。だから、人間(じんかん)の義理を欠き、人情に流されず、国益という大きな義理を果たすことができるんじゃねえのかい。批判を怖れず突き進むことができるんじゃねえのかい。非難の矢面に立って、昂然と顔を上げ、愚痴の一つもいわなかった小鳩には、少なくとも、そんな政治家の資質はあったとみる。党内基盤が脆弱とはいえ、さっそく「政調復活」を持ち出して、党内の人気取りにバラマキをはじめた菅直人にはうかがえないものだぜ。綾瀬はるかが大沢某とかいうのに傷物にされたいま、オザーの悪相だけが日本の救いだ、と知人はいっておりました。

(敬称略)
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敵の評価こそがつねに正しい

2010-06-04 22:58:00 | ノンジャンル


やはり、小沢は悲劇的だな。西郷隆盛みたいだな。ひきかえ、菅は喜劇的だ。小沢色を排した菅内閣に、各メディアが期待しているようだ。小鳩政権は、アメリカと官僚とマスコミからきわめて悪評だった。国民は、米軍基地の縮減と政治主導に聞く耳を持たぬよう、マスコミは総力を挙げて小鳩政権を貶めてきた。とくに、小沢一郎へのバッシングは凄まじかった。気が狂ったかのようだった。憎悪と敵視といってよかった。ひとえに小沢が怖ろしかったのだ。小沢に権力を持たせていれば、やがて改革を実現させてしまうかもしれないからだ。敵から憎まれ攻撃されるのは、正当な評価ではあるが。

さっそく、管は「政調」を復活させるといいだした。議員立法は止め、政策は内閣が作るというのは、この間の民主党の実力に見合った「政治改革」だったが、民主党議員がそれぞれ「政調」に属して議論を広げ深めていくほうが民主的だとでもいうのだろうか。「政調」が復活すれば、内閣の求心力は著しく殺がれ、政策の立案策定は非効率化し、「改革」は漸進的にならざるを得ない。また、「政調」を廃し小沢幹事長室に陳情を一本化させたことで、権力の集中とかねてから批判があったが、小沢以外は、政策をソリューションだと思っているのに対し、小沢は、政策を利権だと考え、自民党と官僚と業界が一体となった利権構造の破壊こそが急務だとした。政策は利権ではないが、政官財の連係構造がからめば、利権となる。いったい、現実認識があるのはどちらだろうか。

アメリカは、居丈高に、「新内閣は日米同盟重視を表明せよ」と表明し、マスコミも、「日米同盟の重視と官僚の声に耳を傾ける政治主導を」と注文をつけている。「政調」が復活すれば、「業界」と「官僚」が結びつき、「族議員」がつくられ、小沢がめざした議員定数の削減案は消えるだろう。そして、「政調」の番記者が廊下トンビをつとめる。

番記者の大事な仕事は、政策調査会が開かれている会議室のドア前に集まり、腰を屈め耳を付けて、盗み聞きすることだ。各社持ち回りで10分ごとに交代して、何か洩れ聞こえてこないか耳を当てる。誰が怒鳴っているか、誰が長く発言しているか、ヤジが飛んでいるか、必死に聞く。もちろん、そんな片々たる情報を記事に書くことはできない。「それが仕事だなんて、情けなくて子どもには話せないですよ」と自民党のある「政調」の番記者が涙ぐんでいたのを思い出す。「政調」の会議室を出てきた先生を取り囲み、ぶら下がって会議内容を教えてくれと懇願する。その先生は、官僚からレクチャーを受けて神妙に聞き入っている。ジャーナリストとしてはみじめな構図だが、それでも、ドアに耳を付ける人員が必要だから、番記者という仕事にはありつける。マスコミ各社にとっては、雑誌やフリーランスを排除して、一次情報を独占できる。

そのようにして、大小さまざま有形無形の利権が分配され、関係各位は満足して、菅内閣の評価は、当面、高まるだろう。アメリカから何らかの譲歩というお土産が出るかもしれない。そっぽを向いていた官僚も働き出すかもしれない。マスコミも、小沢色を排した勇気を褒めそやすかもしれない。敵から褒められ握手を求められるのは、不当に評価されているからだ。内通しているからだとまではいわないが。

敵の評価こそがつねに正しい。

(敬称略)
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おもしろうてやがておそろしき

2010-06-04 01:17:00 | ノンジャンル


理想主義のハーバードの俊秀たちが、完璧な嘘発見器「トゥルースマシーン」を開発、人類を正直化して、戦争とテロと犯罪から世界を救うという近未来SF。

『天才アームストロングのたった一つの嘘』(ジェームズ・L・ハルペリン 角川文庫)

本作品がデビュー作で職業作家ではないらしい著者もハーバード卒。「トゥルースマシーン」の開発を本気で提唱しているらしい。

一人のテロリストやキチガイが核を手にする日。すなわち人類が滅亡する日と競争するように、「トゥルースマシーン」の開発が急がれる。開発に関わるハーバードの俊秀たちの議論が、あたかも人類の英知が結集したように展開されるところが読みどころ。世界最大最強のアメリカの、もっとも優れたエリートたちが、世界を救うためにどんな議論をしているか。

しかし、長崎・広島への原爆投下への彼らの「感想」がひどい。「多くの人命を救うためにしかたなかった」で済ますのだ。また、小説中では、イスラエルがイラクに核攻撃をして、100万人以上が死ぬ惨事が「予測」されている。イスラエルの言い分は、やはり、「多くの人命を救うためにしかたなかった」である。

2001年911の後に書かれたため、ではない。この小説が書かれたのは、1995年である。俺は、ブッシュやチェイニー、ラムズフェルドなど、「ネオコン」が、「テロとの戦争」を掲げて、イラクやアフガニスタンに侵攻したと思っていた。2001年911を境にして、アメリカ国民の意識が劇的に変わったと思っていた。

アメリカの「ベスト&ブライテスト」とされるハーバードの学生ですら、長崎・広島への原爆投下を正当化し、「未来の核攻撃」をも正当化しているのだとしたら、911以前からアメリカ人の間に、核も厭わぬ好戦的な気分が広く共有されていたことになる。現在なら、イランへの核攻撃をアメリカ国民の大多数が支持しているようなものだ。

やはり、アメリカとアメリカ人は、長崎・広島への原爆投下について、さほどの痛痒を感じていないのではないか。痒みすらないほど気にしていないとすれば、それはもう挙げて日本の責任である。

(敬称略)
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