コタツ評論

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好一対の呑気

2010-11-08 01:10:00 | ノンジャンル


「毅然たる態度をとれ」と連日いわれているわけだが、毅然たる態度って、あなたとったことあります? 私には、いくら思い返しても、覚えがない。自らに覚えがない態度を他人にとれとは、とても私には言えない。いったい、毅然たる態度とは、具体的にはどんな言動なのだろうか? 前原外務大臣みたいなのかな。あれはどうみても、硬直した態度にしか見えない。先日ハノイで開かれたASEM開幕式の菅首相の横で固まった温家宝首相と好一対の子どもじみた振る舞いにみえる。大人なら、相手に厳しいことをいうときほど、穏和な態度を装うものだ。だが、どっちもどっちとはいえない。温家宝はあきらかに緊張して固まっていた。憎っくき日本の菅首相と同席して、緊張していたのではない。人間は、憤激のあまり緊張するということはない。温家宝はカメラの向こう側の政敵と自国民を意識して、外交辞令すら表すことができぬほど、緊張していたのだろう。温家宝と胡錦濤は、「日中協調派」として知られているのだから。その意味で、中国にとって、尖閣問題はどこまでいっても国内問題のようだ。中国に国際問題であるとすれば、尖閣付近の制海権はいうまでもなく米軍にあるから、米中摩擦問題となる。これまで中国・台湾漁船の日本領海内の漁業活動は、見て見ぬ振りをされてきたというのに、今回、海保は実力行使に出た。そこに米軍の関与がまったくなかったとは想像しにくい。つまり、自国民と米軍を前にして、温家宝は緊張して固まった。比喩として、「殺されるかもしれない」と思い、身体が、表情が強張ったといえよう。ひきかえ前原外相には、「殺されるかもしれない」という悲壮感はみじんもうかがわれない。アメリカの「尖閣諸島は日米安保の範囲内」という言質をかさにきた上に、「毅然たる態度をとれ」という国民大多数の声を背景に、「毅然たる態度」を示した実績をつくりたかったとしか見えない。失点を歯噛みして堪える者と安全圏で得点狙いをする者。二人の硬直の中味の違いは、そのまま日中の国力と権力の安定度の格差からくる余裕の有無だろう。しかし、つねに政権と国体の存亡を肩に背負った者、そうした根源的な危機意識がまったくない者、それぞれが政治家であった場合、やがてその差は計り知れぬほどに開くことは想像に難くない。中国首脳は、夜も眠れぬほど懊悩しているだろうに、仙石官房長官は居眠りしている呑気さ。「毅然たる態度をとれ」とけっしてアメリカにはいわぬ、呑気な国民と好一対である。以下の中国メディアの反論は傾聴に値するが、これだけ「言論の自由」を謳歌するわが国で、こうした指摘はまだ出ていないのではないだろうか?

中国紙・環球時報(電子版)は、「中国漁船の最大速度は10ノット程度にすぎないのに>対し、日本の巡視船の最高速度が30ノットに達する」とし、「日本側の主張が正しければ、トラクターがBMWを追いかけて衝突したようなものだ」と反論した。

http://www.chosunonline.com/news/20101106000006

(敬称略)