Zooey's Diary

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日常の殺意「夜行観覧車」

2013年02月09日 | 


今、テレビドラマ放映中の作品。
結果を知りたくて我慢できず、読んでしまいました。
まあこれはサスペンスなので、感想を書くまでもないかとも思ったのですが
タイムリーなので書いてみます。
同じ著者の「告白」や「贖罪」に比べると
インパクトの大きさには欠けます。
しかし「高級住宅地に住むエリート一家で起きた殺人事件」という題材、
その周辺の人々のそれぞれの家庭事情や思惑が面白い。
誰もが悩みを抱え、誰もがカッコ悪く生きている。

遠藤家の一人娘、中学生の彩花が癇癪を起して家の中で暴れる様は
見ていてつらくなるほどです。
しかしそれも結局、「自分に似て気が小さく、おとなしいだけの子」(父親の言葉)に
母親(ドラマでは主役の鈴木京香)が過剰な期待をして名門中学を受験させたのが原因か。
受験に失敗した彩花は、公立中でもいじめられて居場所をなくし、
家の中で暴れては鬱憤を晴らしているのです。
隣家のエリート一家の息子への淡い恋心が劣等感に歪められ、
憎悪にまでなり…

誰もが無様にジタバタしながら生きているのですが
わずかながらもいいところもある。
例えば高級住宅街での一番の古参ボス、小島さと子。
新参者で「この辺で一番小さな安普請の家」を建てた遠藤家を目の敵にして
その主婦をいじめまくるのですが
二言目には母親を「クソババア」呼ばわりし、「アンタなんか死ね!」と叫ぶ彩花に対して
「あなたのママは疲れているのよ。
これだけ我が子に、あんたあんたって連呼されたら、親をやめたくもなるわ。
彩花ちゃん、あなた、親をあんた呼ばわりできるほど、何がえらいって言うの?
将来、ノーベル賞でもとるのかしら?
でも、そういう人は親をあんただなんて絶対に呼ばないわね。」
と正論を吐くシーンではスッキリします。

お互いを愛し、お互いに思いやっている筈なのに
何処かで歯車が違って憎み合ってしまう家族。
この小説の中では、殺意は究極のものではなく、日常に転がっているもののようです。
結末は、意外性がないのが意外といったところか。
最後の週刊誌の記事として掲載された文が、全体をよく引き締めています。
ここをテレビではどう脚色するのかが、楽しみです。

「夜行観覧車」 http://tinyurl.com/byk4atw
コメント (4)
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