世界中の有名絵画一千点を原寸大の陶板で再現した、世界で類を見ない大塚国際美術館。
その陶板制作の現場担当者、版権取得に関する交渉話、美術館建設に関する話を、関係者への取材に基づいて描いたアート小説。
2019年に大塚国際美術館に行きました。
入ってすぐに、システィーナ礼拝堂の天井画に、ただもう感動しました。
本場にも行ったことがありますが、そこはもう世界中から押し寄せた観光客に溢れ、スリの心配もあり、とてもゆっくり鑑賞なんてできなかったのです。
それが大塚では、心置きなく鑑賞することができる。
そのスケールの大きさ、陶板レプリカの美しさに感動するとともに、これだけのものを創り出すにはどれだけの苦労があったことだろうと思ったものです。
その創設プロジェクトの舞台裏を描いた小説というのだから、これは読まずにはいられない。
宗教画の専門家、ルネサンス絵画の専門家、著作権関連の専門家など選考委員6名が選定され、会議を重ねる。各自イタリアやフランスに出かけ、各自の目線でそれぞれの章が語られる。6名が皆、その世界で活躍している著名人であるため、例えばイタリアの文化活動省やバチカン美術館長など知己が多く、それがおおいに美術館創設の助けになることになる。
誰をモデルにしたのだろう、何処までが本当のことだろうと気になるところではあります。しかし、簡単なことではないだろうと思ってはいましたが、これほどまでに大変とは。
例えば、絵画には額縁がいる。
それは陶板では無理で、額縁の専門職人に頼むのですが、モナリザの額縁は300万円であったと。
しかももっと大型や複雑な形の額縁となると日本の職人の手に負えず、イタリアやフランスの職人に頼むことになる。このエル・グレコの大祭壇衝立画の複雑な額縁は、なんと1億円を超えたのだそうです。
陶板、額縁の制作も著作権の交渉も大変であったが、もっと難航したのは、日本の役所の手続き。
大塚社長が固執した、故郷の鳴門のその地は国定公園の中にあり、それゆえ建設に煩雑な縛りや手続きが必要となる。地上3階、地下5階という複雑な構造は、瀬戸内の景観を妨げないように、そういう理由があったのですね。
こうして10年以上かかって、敷地総面積6万6千平米、延べ床面積3万平米弱という、巨大なあの美術館は誕生したのです。
この本の最後の、大塚社長の目線の文章を。
”もう何も言うことはない。やがて自分が去り、後ろにいるこの連中も去ったとしても、朽ちることなく残る絵の中の色、色、色たち。そこへ何を言い添える必要があるだろうか。来たれ、美を愛する人々よ。その一生は短くとも、また生まれ来る次なる人々を待ち、名画たちはひそやかに、ほぼ永遠に等しい時間をこの殿堂の中で生き続けることだろう。”
写真は2019年に行った際のものです。
2019年の大塚国際美術館の日記
それでも感動しました。
行かれたばかりでしたら、さぞかし!
楽しみです♪
本の内容の、何処までが本当で何処までが創作なのかを知りたいところです。
エル・グレコの大祭壇衝立画、どんなものだったかハッキリ覚えてなくて(本には写真はない)
この写真を見て、ああこれが一億円越の額縁かと。
新聞の書評には必ず目を通しています。
是非、行かなくては!
ホンモノを見に行くことは無いしね。
それほど大変だったのですね。
なるほど、額縁ね。
絵は、額縁次第な面もあるしね。
そして、そのような本が出ているのもビックリ‼️
凄いアンテナをお持ちですね。
この本は去年、出版されました。
新聞の書評を読んで興味を持って図書館に予約、
ようやく廻って来ました。
実は私も同じころ大塚国際美術館を訪問しています。
それにまつわる本があることは知らなかったです。
機会があれば読みたいです。