ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

応用ドラマ教育研究会―「知る」と「分かる」の違い

2010-05-16 09:45:25 | 研究会報告

今回(2010.5.15)の応用ドラマ教育研究会は、同志社小学校の我如古先生の実践をみんなで味わいました。

総合の時間の取り組みです。近所の郵便局に出かけて説明をきいた。その体験をもとに、ドラマを使って、ハガキが差出人から受取人までどのように届くのか、子どもたちの手で再現してみることが狙いです。

京都・沖縄・アメリカという場所とそれぞれの近くの郵便局を、机の位置で表現。児童はそれぞれ、なりたい場所に陣取ります。ハガキを出すのに必要なポストは「京都」の机の近くに椅子を用意し、二人一組で座ります。大切なハガキ役は、「はがきちゃん」と書いた被り物を用意。出す場所が違うので、三人の「はがきちゃん」が誕生しました。

はがきを出す人は、京都に居る人がなります。受けとるのは、京都、沖縄、アメリカの人のうち、誰かです。最初は、我如古先生が一人のはがきちゃんにお便りを書き、京都に居る誰かさんに向けて、ハガキを出すことに。

人数が少ない私たちは、とりあえず主要なメンバーだけを決めて、我如古先生の実践をなぞっていきました。

ハガキを出そうとポストへ持っていくと、ポストの二つの口(つまり二人)が、「国内だよ」「外国だよ」と口々に言います。二つの口がどのように違っていたのか、話し合っていたようです。

郵便局から、そのハガキを取りに来るのですが、持って帰ったら「消印が必要だ」と誰かが気づきます。沖縄へ配達するとき、バイクで配達しようとした郵便局員が、他の児童から「バイクじゃダメだよ。海があるから」といわれ、バイク役をしていた子どもがくるっと一回転したかと思うと、飛行機に変身します。

ハガキが届く過程を、思い出しながら、即興で体を通して表現していくのです。

この授業は研究授業だったそうで、授業後、色々な感想や意見が出たそうですが、そのひとつに、「最初から京都と沖縄の間に海を用意しておいたら」という意見が出たそうです。それも一つの方法でしょう。

でも私は、最初から海が用意されていなかったからこそ、子どもたちが発見し、「知った」のではなく「分かった!」といえる授業になったと思います。そして「分かった!」が、バイクが飛行機に変身するという体の表現になることで、他の児童も共有できるのです。

また「はがきちゃん」でなくて、紙のハガキでいいのでは という意見もあったそうですが、ものになってみることによる気づきも有ります。例えば消印を押してくれなかったら、それに最初に気づくかもしれないし、相手に無事着いたときの喜びや道中の不安も感じるかもしれません。最後に役をやったそれぞれにちょっとインタビューしてみても良かったのかもしれませんね。

小学校2年生だそうですが、ごっこ遊びの大好きな時代です。10歳ごろから、ごっこ遊びから急激に離れます。だからこそ、この時期にたくさんこういう体験をして、あとの学年につなげていければ、「知る」から「分かる」学習スタイルへ転換していけるのですが・・・。

郵便局の仕事をリアルに再現する授業方法もあると思います。ポストもバイクも飛行機も、もちろんハガキも、ものとして用意しておく。消印のスタンプやハガキを入れる袋や箱なども必要かもしれません。ハガキが差出人から受取人までどのように届くのかを体験できるでしょう。

後者のような授業は、スタイルが確立されれば誰もが同じような授業ができるだろうと思います。ドラマの授業は、同じプログラムでも、異なる展開になります。学習の深さも、その時の集団によって異なったりします。けれど、どちらが「分かる」に繫がるかといえば、やはりドラマだと私は思うのですが・・・。いかがでしょう。

ドラマはやってみなければわからない。我如古先生のように、すてきな実践をされる方が増えていくことを願っています。我如古先生、この実践報告を書いて下さったら嬉しいな。

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