昨日、立命館大学での最後の免許状更新講習でした。
来年の3月まで、「立命館大学で最後の」が積み重なっていくのですね。
テーマは毎年(昨年は少し違いましたが)「対話のある学習―協同学習と演劇的手法」ということでジグソー法と演劇の手法を取り入れています。
これまでは、津田塾大学の吉田真理子先生と一緒に開発した「ハックルベリー・フィンの冒険」を取り上げてきましたが、今年は道徳を取り上げました。
自分でも「なんでこうなんだろう」と思います。なぜ無難に行こうとしないのか。
「アラがあるから変えていこう」というのは当然としても、安定しているのにそれを捨てて次の冒険をしたくなる。
まして、道徳なんて、専門家でもなければ推進派でもない!
しかも、ほかで実践したことをもってくるならまだしも、いきなり免許状更新講習でやるって、どうよ。自分につっこみまくりながらも、やりたいという思いが勝ちました。
最初の案は
レクチャーとウォームアップののち
① コールバーグの道徳性発達の六段階説、モラルジレンマの授業の進め方をジグソー法で学ぶ
教材は「トランジット・ビザ」(『中学校新モラルジレンマ教材と授業展開』荒木紀幸)
② 「風に立つライオン」の教材で、演劇的手法を取り入れた道徳授業を体験してもらう
(さだまさしの歌をもとに学生が考えた授業。『演劇と教育』No.704に掲載していただきました。)
③ 「一文笛」の教材を使って、グループで演劇的な技法を使った道徳授業を考えてもらう
「一文笛」(『中学校新モラルジレンマ教材と授業展開』荒木紀幸)
④ やってみてどうだったかをふりかえる
スケジュール
9:30-11:00 第1 講(90 分)レクチャー、チェックイン&ウォームアップ、ジグソー法
11:10-12:40 第2 講(90 分)ジグソー法ふりかえりと「風に立つライオン」体験
12:40-13:30 休憩(50 分)
13:30-15:00 第3 講(90 分)午後のウォームアップ、「風に立つライオン」ふりかえり、「一文笛」の授業づくり
15:10-16:40 第4 講(90 分)つくった授業をやってみてふりかえる、全体のふりかえり、チェックアウト
16:40-16:50 アンケート
17:00-17:30 認定試験(30 分)
実際には、次のようになりました。
9:30-10:50 第一講(80分) レクチャー、チェックイン&ウォームアップ、グループ分け
11:10-12:40 第二講(100分) ジグソー法、「風に立つライオン」
12:40-13:30 休憩(50 分)
13:30-15:00 第三講(90分) 午後のウォームアップ、美濃山小の「15の演劇的手法と4つのなりきって『書く』活動」の紹介、ジグソー法と「風に立つライオン」のふりかえり、「一文笛」で授業づくり(30分、うしろの10分で演劇の手法を決めるように促す)
15:10-16:40 第四講(90分) 授業づくり(20分、教師役を決めるように促す)、授業実践とふりかえり(2グループペアで、各25分。授業15分、ふりかえり10分のめやす)、講師からのまとめとお知らせ、チェックアウト
午前中までは、まず順調でした。ちょっとレクチャーが長くなって、ジグソー法のまえで休憩に。第二講でジグソー法のふりかえりをしないまま、「風に立つライオン」に移りました。
「風に立つライオン」は、今回いろいろな観点からの意見が出たし、ワークシートにもコールバーグの段階を意識しつつのふりかえりがあり、体験として良かったのではと思いました。ワークシートを書いて、ホワイトボードに貼ってもらうところで昼食休憩に入りました。
午後は、私自身がおなかいっぱいで、とても眠いので、体をうごかすことから入りました。それを静止画の説明に結び付け、美濃山小学校の「15の演劇的手法と4つのなりきって『書く』活動」の紹介への流れ。あとの授業づくりで、説明しただけで実際にはやってみせなかったホット・シーティングを使うグループも出てきたので、この流れは良かったと思います。ただ、少し時間が長すぎたようです。次に、ジグソーと「風に立つライオン」のふりかえりを入れたので、授業づくりに当てる時間が短くなりました。しかも、ふりかえりのときに、せっかく貼ってもらったワークシートにふれるのを忘れました。
美濃山小学校の道徳の授業については、『授業づくりネットワークNo.30』に書かせていただきました。
授業づくりが思ったより時間がかかりました。授業の一部で良いといったのですが、先生方はかなり真剣な話し合い。もっと小さな課題にするか、スモールステップにしながら、時間を区切るかしていけばよかったかもしれません。
例えば、「この教材で演劇の手法を入れる場面をひとつだけ作ってください」とか。
一番想定外だったのは、「一文笛」の結末部分を渡さずに授業づくりをやってもらったためか、遵法精神を授業のねらいにしたグループがあったこと。スリをさせないためにどうしたら良いかという、「解決策」を考える授業になってしまいました。それはそれで面白かったのですが。
結末部分をあとで配布しました。そうでないと、結末に引きずられて、葛藤状況にならないのではと思ったのです。これが裏目に出たようで。
ちょっとショックでした。せめて、ちゃんとふりかえりの時間をもって、そのことをディスカッションできればよかったのですが。
「法を犯してでも命を救うという選択がありうる」という見解に立つことが、個人の信条として難しい方がいるのかもしれない。
あるいは、学校というところでは「スリをしても良い」というようなことを言ってはいけないと思っておられるということでしょうか。
そうなると、「命を助けるために他に方法がないのか」という話し合いにならざるを得ない。
「一文笛」をジレンマ教材として取り扱う難しさを改めて感じました。
やってみて、「一文笛」の学習計画を演劇的手法を使ってつくり、それを実際にやってみるということがいかにムチャブリだったか。普通、「そんなことやるまでもなく分かるだろう」と思いますよね。確かに。でも、私はできると思ってしまう。
そして、実際にやりきった先生方の力量には「さすが!」。脱帽です。
2グループをペアにして、互いに生徒役、先生役でやってみるということ。そして、やってみてどうだったかを話し合うという方法の良さを再認識しました。
90分4コマがあっという間でした。
でも、ひとりで4コマ通すのはやはり疲れました。
学生がふたり手伝ってくれ、それは本当にありがたかったです。
終わってから学生の感想。
「こういう免許状更新講習だったらいいけど、レクチャーを聴くだけだったら1日は疲れる。」
自分が将来講習を受ける時を想像したようです。
「自分たちの時もありますかね」というので、「演劇的な手法をつかった講習はあると思うよ。他にもアクティビティを主体とした講習はあるよ」と言いました。それにしても、5日間の講習は、受ける方も大変ですね。行きたいものなら良いのですが。
「自分たちは演劇の手法をつかっていろいろやってきたので、『一文笛』をみてもいろいろな場面が想像できるけれど、1日だけだと先に体験した方法に囚われると思った。」
どういうこと?と聞くと、「例えば井戸に身を投げる子どもの気もちを想像する場面を取り入れてみたい」と言っていました。なるほどね。
確かに、この講習ではそこまで自由な発想は生まれませんでした。
「どういう場面を演劇的手法でやってみたいか」という課題にすると、発想も広がるし授業づくりと実践の時間は短縮できそう。
ジレンマ状況からは遠ざかるかもしれませんが。
こういうのも何ですが、私は自分の進化を実感しました。
「なぜ、こんなチャレンジができたのか」
それは、自分が未熟でも、受講者がそれを補ってくれると信じられるようになったからだと思うのです。
「何か良いことを言わなければ」「最高のものを提供しなくては」というよりも、「一緒に考えて作っていきたい。その材料を提供する」と考えられるようになりました。
これは、日ごろの授業で一緒に考えてくれる学生たちに接しているからだと思います。
だから、好きです。この仕事。
でも、今回も結局ICTでトラブったし、「資料がどこへ行った」とパニクる場面もあったし、時代についていってない面があるのも確か。
ぼちぼち、引退時です。
来年の3月まで、「立命館大学で最後の」が積み重なっていくのですね。
テーマは毎年(昨年は少し違いましたが)「対話のある学習―協同学習と演劇的手法」ということでジグソー法と演劇の手法を取り入れています。
これまでは、津田塾大学の吉田真理子先生と一緒に開発した「ハックルベリー・フィンの冒険」を取り上げてきましたが、今年は道徳を取り上げました。
自分でも「なんでこうなんだろう」と思います。なぜ無難に行こうとしないのか。
「アラがあるから変えていこう」というのは当然としても、安定しているのにそれを捨てて次の冒険をしたくなる。
まして、道徳なんて、専門家でもなければ推進派でもない!
しかも、ほかで実践したことをもってくるならまだしも、いきなり免許状更新講習でやるって、どうよ。自分につっこみまくりながらも、やりたいという思いが勝ちました。
最初の案は
レクチャーとウォームアップののち
① コールバーグの道徳性発達の六段階説、モラルジレンマの授業の進め方をジグソー法で学ぶ
教材は「トランジット・ビザ」(『中学校新モラルジレンマ教材と授業展開』荒木紀幸)
② 「風に立つライオン」の教材で、演劇的手法を取り入れた道徳授業を体験してもらう
(さだまさしの歌をもとに学生が考えた授業。『演劇と教育』No.704に掲載していただきました。)
③ 「一文笛」の教材を使って、グループで演劇的な技法を使った道徳授業を考えてもらう
「一文笛」(『中学校新モラルジレンマ教材と授業展開』荒木紀幸)
④ やってみてどうだったかをふりかえる
スケジュール
9:30-11:00 第1 講(90 分)レクチャー、チェックイン&ウォームアップ、ジグソー法
11:10-12:40 第2 講(90 分)ジグソー法ふりかえりと「風に立つライオン」体験
12:40-13:30 休憩(50 分)
13:30-15:00 第3 講(90 分)午後のウォームアップ、「風に立つライオン」ふりかえり、「一文笛」の授業づくり
15:10-16:40 第4 講(90 分)つくった授業をやってみてふりかえる、全体のふりかえり、チェックアウト
16:40-16:50 アンケート
17:00-17:30 認定試験(30 分)
実際には、次のようになりました。
9:30-10:50 第一講(80分) レクチャー、チェックイン&ウォームアップ、グループ分け
11:10-12:40 第二講(100分) ジグソー法、「風に立つライオン」
12:40-13:30 休憩(50 分)
13:30-15:00 第三講(90分) 午後のウォームアップ、美濃山小の「15の演劇的手法と4つのなりきって『書く』活動」の紹介、ジグソー法と「風に立つライオン」のふりかえり、「一文笛」で授業づくり(30分、うしろの10分で演劇の手法を決めるように促す)
15:10-16:40 第四講(90分) 授業づくり(20分、教師役を決めるように促す)、授業実践とふりかえり(2グループペアで、各25分。授業15分、ふりかえり10分のめやす)、講師からのまとめとお知らせ、チェックアウト
午前中までは、まず順調でした。ちょっとレクチャーが長くなって、ジグソー法のまえで休憩に。第二講でジグソー法のふりかえりをしないまま、「風に立つライオン」に移りました。
「風に立つライオン」は、今回いろいろな観点からの意見が出たし、ワークシートにもコールバーグの段階を意識しつつのふりかえりがあり、体験として良かったのではと思いました。ワークシートを書いて、ホワイトボードに貼ってもらうところで昼食休憩に入りました。
午後は、私自身がおなかいっぱいで、とても眠いので、体をうごかすことから入りました。それを静止画の説明に結び付け、美濃山小学校の「15の演劇的手法と4つのなりきって『書く』活動」の紹介への流れ。あとの授業づくりで、説明しただけで実際にはやってみせなかったホット・シーティングを使うグループも出てきたので、この流れは良かったと思います。ただ、少し時間が長すぎたようです。次に、ジグソーと「風に立つライオン」のふりかえりを入れたので、授業づくりに当てる時間が短くなりました。しかも、ふりかえりのときに、せっかく貼ってもらったワークシートにふれるのを忘れました。
美濃山小学校の道徳の授業については、『授業づくりネットワークNo.30』に書かせていただきました。
授業づくりが思ったより時間がかかりました。授業の一部で良いといったのですが、先生方はかなり真剣な話し合い。もっと小さな課題にするか、スモールステップにしながら、時間を区切るかしていけばよかったかもしれません。
例えば、「この教材で演劇の手法を入れる場面をひとつだけ作ってください」とか。
一番想定外だったのは、「一文笛」の結末部分を渡さずに授業づくりをやってもらったためか、遵法精神を授業のねらいにしたグループがあったこと。スリをさせないためにどうしたら良いかという、「解決策」を考える授業になってしまいました。それはそれで面白かったのですが。
結末部分をあとで配布しました。そうでないと、結末に引きずられて、葛藤状況にならないのではと思ったのです。これが裏目に出たようで。
ちょっとショックでした。せめて、ちゃんとふりかえりの時間をもって、そのことをディスカッションできればよかったのですが。
「法を犯してでも命を救うという選択がありうる」という見解に立つことが、個人の信条として難しい方がいるのかもしれない。
あるいは、学校というところでは「スリをしても良い」というようなことを言ってはいけないと思っておられるということでしょうか。
そうなると、「命を助けるために他に方法がないのか」という話し合いにならざるを得ない。
「一文笛」をジレンマ教材として取り扱う難しさを改めて感じました。
やってみて、「一文笛」の学習計画を演劇的手法を使ってつくり、それを実際にやってみるということがいかにムチャブリだったか。普通、「そんなことやるまでもなく分かるだろう」と思いますよね。確かに。でも、私はできると思ってしまう。
そして、実際にやりきった先生方の力量には「さすが!」。脱帽です。
2グループをペアにして、互いに生徒役、先生役でやってみるということ。そして、やってみてどうだったかを話し合うという方法の良さを再認識しました。
90分4コマがあっという間でした。
でも、ひとりで4コマ通すのはやはり疲れました。
学生がふたり手伝ってくれ、それは本当にありがたかったです。
終わってから学生の感想。
「こういう免許状更新講習だったらいいけど、レクチャーを聴くだけだったら1日は疲れる。」
自分が将来講習を受ける時を想像したようです。
「自分たちの時もありますかね」というので、「演劇的な手法をつかった講習はあると思うよ。他にもアクティビティを主体とした講習はあるよ」と言いました。それにしても、5日間の講習は、受ける方も大変ですね。行きたいものなら良いのですが。
「自分たちは演劇の手法をつかっていろいろやってきたので、『一文笛』をみてもいろいろな場面が想像できるけれど、1日だけだと先に体験した方法に囚われると思った。」
どういうこと?と聞くと、「例えば井戸に身を投げる子どもの気もちを想像する場面を取り入れてみたい」と言っていました。なるほどね。
確かに、この講習ではそこまで自由な発想は生まれませんでした。
「どういう場面を演劇的手法でやってみたいか」という課題にすると、発想も広がるし授業づくりと実践の時間は短縮できそう。
ジレンマ状況からは遠ざかるかもしれませんが。
こういうのも何ですが、私は自分の進化を実感しました。
「なぜ、こんなチャレンジができたのか」
それは、自分が未熟でも、受講者がそれを補ってくれると信じられるようになったからだと思うのです。
「何か良いことを言わなければ」「最高のものを提供しなくては」というよりも、「一緒に考えて作っていきたい。その材料を提供する」と考えられるようになりました。
これは、日ごろの授業で一緒に考えてくれる学生たちに接しているからだと思います。
だから、好きです。この仕事。
でも、今回も結局ICTでトラブったし、「資料がどこへ行った」とパニクる場面もあったし、時代についていってない面があるのも確か。
ぼちぼち、引退時です。