バスは5分ほど遅れていた。あるバス停で3名の乗客が待っていた。私はバスを止めて「お待たせしてすいません」と言いながら扉を開けた。3名の乗車が完了し、ミラーを見ながら扉を閉めた。左サイドミラーでバス停の最終確認をしながら発車… と、その時! 街路樹の陰から現れた一人の女性が、サイドミラーに映ったのである。私は慌てて扉の開閉レバーを操作したのだが間に合わず… 扉が開くよりも早く、乗車扉に「ドンッ!」とその女の“蹴り”が入ったのだ。ツヤのないパサパサロングヘアー… 推定アラフォー世代… 当然のことながら無言… 大きな荷物を両手で抱えているわけでもなく… あそこで足が出るか… 私の運動機能は十数秒間停止してしまった。と、突然、そこへもう一人の女性がバスに飛び乗って来たのである。あらまぁ… ラッキーな人…
朝の通勤時間、バスは5分ほど遅れていた。あるバス停から10名ほどの乗車があったのだが、先頭で待っていたのは母子だった。そして、その母は推定3歳の子供にバスカードを機械に通させようとしていた。しかし、なかなか上手く通すことが出来ないようだった。そこで母は「早くしないと、みんな待ってるよ。早く!」と言っていた。降りる時も同様にやらせていた。まぁ、気持ちは分からないではないのだが…
夜9時過ぎともなると、その路線で駅へ向かう人はほとんどいない。ところが、あるバス停から一人の女が乗ってきた。乗車口で立ったまま… 否、前屈みになったまま、しばらく動かない… 「どうしたのだろう?」と思ってよく見ると… 片手に携帯電話、片手にバッグを持っていて、そのバッグの中からバスカードを出そうとしているようだった。電話の相手に「ちょっと待ってて!」と言って、一瞬だけ両手を使えばどうってことないと思うのだが、どうしても携帯電話を耳から離したくないようだった。まぁ、他に乗客もいなかったから良かったけれど…
今日は、3日前にもやった某大手ショッピングセンターのシャトルバスでした。先日ここに書いたように、感情抜きでやっていました。そして、何往復かした後の午後1時50分頃… 次の発車は午後2時だったのですが、ショッピングセンターのバス乗り場には30名ほどの乗客が待っていました。その中の大学生っぽい男二人が「このバスは2時まで出ないっすか?」と尋ねたので、私は「はい」とだけ答えた。この仕事をやる時にはいつも思うのだが、若くて健康な奴らは歩けば良いのだ。バスの行き先でもある某駅までは、普通に歩けば10~15分で行けるのである。この場合も発車まで10分… 発車してから某駅へ到着するまで7~8分… 歩いた方が早いのである。夕方にもなれば、買い物をしたのかどうか分からないような高校生がグループで乗ってきて“車内観覧席”を占拠する。そして、発車2~3分前に買い物袋を持ったおばさんがやってきても既に満員で乗れない… そんなこともしばしばである。シャトルバスを有料にすれば、その点は改善されると思うのだが…??? そして、そのお金は運賃としてではなく、ショッピングセンターお得意の環境対策(植樹など)の足しにするとか…。。。
午後4時前、乗客が置いていったゴミをショッピングセンターのゴミ箱に捨てて、バスへ戻って運転席に座ってシートベルトを… と、その時、すぐ横から「取った! 私が取ったよ!!」と言うお婆さんの声が聞こえた。見ると、すぐ横に小学生と思われる子供が立っていたので、私は「かわいい孫のために“助手席”を取ってあげたんだ」と思ったのだが… 違った。そのババアが、その小学生との“助手席争奪戦”に勝利したと宣言していたのである。そして、乗車口付近に立っていた母親と思われる女性が「こっちへいらっしゃい…」と息子を呼んでいた。残念ながら、私は争奪戦を見ていなかったので、何も言えなかった…。。。その時、ババアが「このバスは何分に出るの?」と尋ねてきたので、私は前を向いたまま「書いてある」と答えただけ…。。。やはり、実際の争奪戦がどうであれ、「子供に譲って…」と言うべきだったか…。。。それとも、そこまで口出しする必要はないのだろうか…。。。まぁ、そんなに考え込まなくても、こんなことは二度とないだろうけれど…(それがあったりして!?)
日曜日の朝6時台、某駅まで10名ほどの乗客があった。折り返し、駅からは誰も乗らないのだろうと思っていた。しかし、発車1分前になって後方から一人の女性が歩いてきた。そして、彼女が接近するにつれて音楽が聞こえてきた。そう、耳栓爆音女の登場である。幸いなことに、最後部の車内観覧席に座ってくれたので、エンジンをかけて暖房を入れたら運転席までは聞こえなくなった。さらに、他に乗客がいなかったので、注意する必要もなかった。さらにさらに、彼女は周囲の音を遮断しているのだから、私が何を言っても聞こえない… ということで、特に車内案内もしませんでした。ただ、私は「●●停、通過ぁ~」と独り言をボソボソと… そのまま終点まで二人きり… そして、彼女がバスカードを通したところ、50円不足だった。彼女は黙って50円玉を見せて首を傾げたので、私も黙って運賃投入口を指差した。「カラン♪」と50円玉だけが喋ったようだった…
私がやっている某大手ショッピングセンターのシャトルバスは、町中編と町外れ編の二つがあります。今日は町中編でしたが、これは常に自分との戦いなのです。まず、ショッピングセンターと最寄り駅を往復するだけの単調な仕事であることです。昼間は約20分で一往復して約10分の休憩となりますが、夕方は交通量が増えて遅れることも多々あり、そうなると走りっぱなしです。個人的には、少しくらいそのような状態になった方が、時間の経過が早く感じられて嬉しいのですが…。。。
次にマイカー、タクシー、自転車、歩行者、一部の乗客… とにかく非常識な奴らが多いので、いつもの路線のような心構えで行ってしまうと、自分の精神がおかしくなってしまうのです。私が左折レーンから左折しようとしているのに、直進レーンから被せてきて左折するタクシー… 私が右折しようと待っていると、交差点の先が詰まっているのに突っ込んできて進路をふさぐ対向車… 歩行者用信号が赤になっているのに、いつまでもダラダラと渡っている歩行者… 車内に様々な臭いを充満させた挙句、飲食物の残骸を置いていく乗客… 書き始めたらキリがありません。だから、私がこの仕事をやる時には、人間としての感情を封印するのです。その場合、副作用として無表情(無愛想)になります。幸い、この仕事では運賃が発生しないので、乗客と会話をする必要がほとんどありません。発車時と到着時に、事務的に車内案内をすれば済むのです。今日は、ずっと無感情状態を保つことが出来たので、変な疲労感もなくスッキリと帰宅することができました。
追伸 バスが駅に到着した時、そこに立っているショッピングセンターの係員の一人が「ご自由にお降りください」と何度も言っていた。“自由に降りる”って… どういう意味だろう??? 私はずっと考えていた。そして何度か聞いて、ようやく分かった。彼は「ご順にお降りください」と言っているのだと… まぁ、いっか。