年甲斐も あるやなしにも 駈けだして 息切らしたる 萬年青年
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【セカンドランド構想】
本格的な春か、今日は朝から気鬱な自律失調状態。
気晴らしにモーニングに出かけるも収まらない。
危険だと思っていると正午前には何とか収まる。
「セカンド・ランド・カルチャー」の二年目のス
タート。ホワイトオニオンとロッサビアンコの種
をプランターに撒き「プランターすっぽり!防虫
セット」をテスト使用し追加注文する。次にシラ
キ株立を1苗注文する。間伐材製のプランターに
植え込む予定だ。「非直植え菜園方式」及び「非
直植え農耕方式」を徹底的に実践する行動の開始
がいよいよはじまった。
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【南極の変動:メルツ氷河】
Iceberg B-09B
南極なんて知らないとはもう言われないような時
代だ。オゾンホールの発見は、1982年に日本の南
極観測隊が、月面からの反射光を利用し冬期間の
オゾン層観測に挑戦し成功したことにはじまる。
その3年後、英国の研究者たちは、南極ハレーベ
イ基地で観測を始めた1958年以降の全オゾン量デ
ータから1970年代の後半から急減し、10年間で半
分近くまで減少していることを明らかにし、フロ
ンガスの増加と関係していることを指摘し、大き
な関心を集める。
NASA Spots Surprising Shrimp Beneath Antarctic Ice
昨年1月、米ワシントン大学などの研究チームが
過去50年間の南極大陸全体の平均気温は温室効果
によって上昇しており、西南極では過去50年間で
10年ごとに気温が0.17度ずつ上昇しているという。
10年ごとの平均気温の上昇が0.11度の南極半島を
上回る温暖化のペースだ。一方、東南極では1970
年から2000年の間に大きく気温が下がった時期が
あったが、これはオゾンホールによるもので、過
去50年にさかのぼると、全体として東南極も10年
ごとに平均0.1度ずつ気温が上昇している。
University of Washington
南極大陸で大規模な氷床の融解が起きれば、沿岸
部の都市やデルタ地帯は水没する可能性があり、
南極大陸はオーストラリアよりも大きく、すべて
の氷が溶ければ世界の海水位が57メートル上昇す
るといわれている。今回の氷河衝突はペンギンの
絶滅とその予兆であるかもしれない。
Pinguins
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D.E.Shaw
【コンピュータで薬は創れるのか】
児玉龍彦の「コンピュータで薬は創れるのか?-
オバマ大統領科学顧問の大富豪研究者の挑戦」(
「バイオサイエンスとインダストリー」2010.vol.
63)より。
児玉龍彦
「オバマ大統領科学技術顧問の大富豪D.E.ショー
らはタンパク質の3次元構造を予測するコンピュ
ーターのシステム作りを進めている。タンパク質
は、合成されるとともに、折り畳まれて3次元の
構造をとる。この折り畳みは、ある程度大きいタ
ンパク質では1000分の1秒(ミリ秒)かかる。今
の普通のコンピューター1台で計算できるのはせ
いぜい10億分の1秒(ナノ秒)の問の構造変化の
シミュレーションであるが、1000台程度のコンピ
ューターチップを連結させて、並列計算すること
によりスピードを上げることができ、マイクロ秒
までの計算ができるようになっている。
ところがショーたちは タンパク質の動ききの計
算に特化しかチップを作り、マイクロ秒を達成し
つつあるというのだ。これは3年後に神戸に稼働
予定の我が国の次世代のスーパーコンピューター
(通称ペタコン)の百倍のスピードに当たる。ヒ
トゲノム解読から、がんやアルツハイマー病の薬
が創られると言われながら、実際にはゲノム配列
は、ほとんど目にみえた薬の開発にはつながって
いない。しかし、チェス名人がいつのまにかコン
ピューターに完敗するようになったように、薬の
設計にもゲノム配列からのコンピューター予測が
必須の時代がやってこようとしている」と。なる
ほどコンユーターの巨艦主義時代の終焉かと思わ
せる件だ。
1986年にコロンビア大学のコンピューター科学の
教授に就任後、1988年にコンピューター裁定と計
量的投資をうたい文句に、ヘッジファンドのD.E.
Shawグループを創設し、90年代に急成長。1994年
クリントン大統領の科学技術顧問となり、1996年
には、経済誌フォーチュンが「ウォール街で最も
ミステリアスな勢力」と警戒しながら紹介する一
大金融グループを形成。アマゾンの創設者のシェ
フ・ベゾスもD.E.Shawの社員だったことで有名。
サマーズ元財務長官(現オバマ政権の経済担当)
を経営者に雇い入れ、2008年には、4兆円の資産
を形成。
HMG-CoA reductase
ショー達がやろうとしているのは、コンピュータ
でタンパク質の3次元の立体構造を予測し、タン
パク質の構造を知り、薬が作れるという。今日、
医療の現場で使われている薬の標的の大半はタン
パク質。コレステロールの薬はコレステロ-ル合
成の律造段階のHMG-CoA還元酵素のポケットに
入って活性を阻害する。高血圧の薬のARBはアン
ギオテンシン受容体に結合して、アンギオテンシ
ンの働きを阻害する。タンパク質に特別に強く結
合し、酵素や受容体などのタンパク質の機能を阻害
する。薬が、水溶液の中で、タンパク質に特別に
強く結合すると、結合自由エネルギーを放出する。
一般の医薬品では大体-10kca1/mol。これぐらいの
エネルギーであると1秒程度で結合したり離れた
りするという。
タンパク質の構造がわかれば、化合物とのドッキ
ングさせ、タンパク質の表面に、化合物をランダ
ムに数10万回置いてみて、タンパク質と化合物の
間のクーロンカ、疎水性相互作用などを計算し、
エネルギーの安定な構造とそのスコアを記録する。
薬になりそうな数百万個の化合物の構造を集めた
ライブラリーと呼ばれるデータベースについてこ
の計算を繰り返し、例えばある酵素について、最
も結合の強そうな候補を数百個選び出して、実際
に結合するか確かめると、かなりの数が結合し、
酵素活性を阻害することがわかる。今では、ヒト
ゲノムが解読されて、私たちの体の中にあるタン
パク質の配列はすべてわかっている。ショーたち
のシミュレーションがうまくいけば、すべてのタ
ンパク質の3次元構造を基に、人間のあらゆるタ
ンパク質に結合する薬の候補がコンピューターで
選べるようになるかもしれない。
※「High-Throughput Pairwise Point Interactions in Anton,
a Specialized Machine for Molecular Dynamics Simulation」
※「Desmond on Anton;almost never need to access off-chip memory"」
高精度結合エネルギー計算システム
コンピューターでたくさんの原子がどんな形や動
きをしているかを計算し、構造や機能を予想する
科学を分子動力学と言う。ヒトの大きなタンパク
質になると分子量が5万以上、原子の数でも3千
以上にもなるので、クーロンカや疎水性相互作用
をそれぞれの原子について行うと、並列で膨大な
数を行う必要があり、並列計算を行う新たなアル
ゴリズムとアーキテクチャーが求められる。これ
までの、薬学者の勘と運に頼るか、膨大な化合物
ライブラリーを腕力で多量にスクリーニングする
という力任せのやり方から、コンピューター計算
が上回る日が近い。
Theory of Molecular Dynamics Simulations
従来のコンピューターシミュレーションでは、ア
ミノ酸配列から薬の設計というのは、まだギャッ
プが大きいが、今日のコンピューターシミュレー
ションは、基礎となる実測値が、しっかりしてい
るとき、別の化合物との予測が正確になるという
段階である。タンパク質の3次元構造を見るとき
に、最も良好な実測値、パラメーターを与えてく
れるのは、タンパク質の結晶を作りX線回折で構
造を解析することである。これまでは、タンパク
質を結晶化させるのが難しくて、なかなかX線回
折像が得られなかったが、最近、大阪大学工学部の
グループはフェムトレーザー照射を用いて結晶化
を促進する画期的な技術を報告している。こうし
たデータの上に、コンピューターシミュレーショ
ンできれば、薬創りもコンピューターに頼る時代
に変わることを意味するという。
※「タンパク質結晶の次世代デバイス化に向けた
溶液状態制御による創製およびプロセッシン
グ技術の開発」
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