もう十時 と時計見上げ はやる気を 鎮め香焚く 文字打つ空は
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岸博幸
「クリエイティブ国富論」(ダイヤモンドオン
ライン、2010年03月26日)で岸博幸は郵政改革
案に対し「民主党は“新しい公共”という方向
性を目指しています。それ自体は非常に正しい
考えですが、それは欧米のソーシャル・ベンチ
ャーと同様に、本来は官が担うべき公共の役割
を民間に担ってもらい、そのコストは当該事業
をビジネスとして行なうことにより得られる収
益で賄ってもらう、というのが本旨のはずです。
いわば市場メカニズムを活用した公共部門の代
替です。ところが、民主党が実際の政策でやっ
ていることは、特定の企業に官が過剰な介入と
支援を行ない、自力で頑張っている民を苦境に
追い込んでいるに他なりません」と批判してい
る。そして、岸博幸は「市場メカニズムを積極
的に歪めているのです。これは“新しい公共”
の哲学とは真逆であり、本末転倒も甚だしいの
ではないでしょうか。」と結んでいる。
ここで、社会に貢献することを目的として社会
起業家(ソーシャル・アントルプレナー)が立
ち上げた組織をソーシャル・ベンチャーと呼ぶ。
社会貢献を目指した事業運営がなされるならば、
その組織の形態は事業性を備えたNPOであろう
と社会的貢献を強く意識した営利企業であろう
と、どちらもソーシャル・ベンチャーという範
疇に入ってくるという(神座保彦「ソーシアル
・ベンチャーの経営戦略」)。
もう少しいうと、ここでいう社会起業家とは、
社会変革(英: Social change)の担い手(チェン
ジメーカー)として、社会の課題を、事業によ
り解決する人のことを言う。社会問題を認識し、
社会変革を起こすために、ベンチャー企業を創
造、組織化、経営するために、起業という手法
を採るものを指す。社会起業家(社会的企業家)
により行われる事業は、社会的企業(ソーシャ
ル・エンタープライズ、Social Enterprise)と表現
されている。ビジネスの起業家は、典型的には
儲けと自分にどの程度報酬があったかで、その
実績を計るのに対し、社会起業家は、社会にど
れだけの強い効果を与えたかを成功したかどう
かを尺度にしている。NPOや市民グループを通
して働きかけを行うことが多いが、この分野で
働く人は、企業や政府のセクターで働く人が多
い。社会的企業家(ソーシャル・アントレプレ
ナー(Social Entrepreneur) )ともいわれ、「ソー
シャル・イノベーション (Social Innovation) を
起こす人」とも定義される。自ら団体・会社を
始める人でも、組織内にあって改革を起こす人
でも、いずれもありとされる。
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【郵政改革の落としどころ】
『イルカと進行波炉』の「郵政は国営化される
のか」で記載した通りの展開となっている。こ
こで新政権側のミスは2つある。1つは24日に
行った基本骨子報告。「審議」を前提に亀井静
香金融・郵政改革担当相と原口一博総務相が報
告するのであれば、新郵政の目指すイメージを
分かりやすく解説するのが筋だ。2つめは、郵
政改革担当大臣の「預金」「保険」の上限引き
上げの先走りだ。
例えば、「ワンストップサービス」のイメージ
だが、IT(情報技術)を活用して国民または
企業が国や自治体への申請や手続を1ヵ所また
は1回ですませることができるようにするサー
ビス・システム。日本では郵便局で住民票や登
記謄抄本のファックスによる交付申請ができる
が、これに加えて情報端末を設置して各種のサ
ービスを一括して申請できるようにする。将来
的には在宅介護派遣の申込みや、図書館、スポ
ーツ施設の利用申込みなどにも使うことが構想
されている。米国はすでに郵政公社がインター
ネットを活用して、引っ越しや職業紹介などの
手続を1ヵ所で処理できるようにするサービス
を行っている。このほかに、自動車保有関係手
続や、民間企業が行う設計施工から事故時の対
応までの一貫したサービスをもこのようによぶ
例が増えているという(「日本大百科全書」小
学館)。
これによると、「コンビニ」(食料品・日用品
を中心に扱う小型スーパー)の外延と、郵便局
の内挿とから外れる領域のイメージだが、明確
なのは「コンビニ」(民間化のイメージ)は儲
からないところには出店しない。それと政府系
「預金」「保険」業務とが該当する。補足する
と「郵便業務」は「宅配」(民間化のイメージ)
は、参入宅配の拠出金(持ち出し)と政府の補
助金とで不採算地区のサービス提供も可能だ。
とすると、残るのは非(不)採算地区のワンス
トップサービスと「庶民金融」(保険と預金)
となる。従来通りの「国債引き受け業務」だけ
になる。前者へは政府の補助(公営化のイメー
ジ)で対応できるが、この領域を後者の運用益
でカバーしようとするのが今回の亀井担当大臣
の先走り背景だ。
話しはすこし逸れるが、「納税意識」という税
運用の不正、不公平感をなくすために育み醸成
するものとして位置づけられるが、「愛郷意識
」も自然に醸成され育むものとして国債運用を
その様に位置づけられると考えられる。
話しを戻そう。庶民預金及び保険制度として捉
え返せば分かり良いように思える。国債運用へ
の適正かどうかの関与は国会と株主(政府)と
従業員と外部監査機関が実行するとして、問題
は運用先の範囲、日本政府の国債だけにとどめ
るのか、諸外国の国債、外国為替、民間の私債
やその他の様々の金融商品を範疇に入れるのか
などという議論が残るがその判断依拠として、
底抜け状態の社会保障(ナショナルミニマム)、
崩れかけた共同体意識の補修に、先ほどの<愛
郷意識>の育成・醸成(=共同体の螺旋的再構
築)ということが重要な要因になると思える。
表 郵政改革案基本骨子
項目 |
現行規定 |
改革法案 |
組織 |
5社体制 |
3社体制 |
政府出資 |
超1/3 |
超1/3 |
預金上限 |
1,000万円 |
2,000万円 |
保険上限 |
1,300万円 |
2,500万円 |
いずれにしろ、ワンストップサービス網の全国
整備という目標と、預金・保険上限は切っても
切れない関係にあり、市場との調整(民間=資
本主義)の摺り合わせ軽視が浮き彫りにされた
事件だった。ならば前述のことを踏まえ、預金
・保険上限枠の下方見直しを実施し→法案成立
→運用→再見直しでも遅くないと考える。
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【庶民派のサザエ】
栄螺の内蔵が苦くて閉口した幼い頃の記憶があ
るがいつの間にか好物になってBQQには欠かせ
ぬ一品だ。サザエ(栄螺、学名:Turbo cornutus
もしくは Turbo (Batillus) cornutus)は、腹足綱古
腹足目サザエ科(別名:リュウテンサザエ科)
に分類される巻貝の一種。壷焼きでよく知られ、
日本人には非常に馴染み深く、水産上重要な貝
の一つ。棘のある殻も特徴的であるため、各種
の意匠や比喩などに利用されてきた。
図 世界の漁獲高
図 世界の養殖高
雌雄異体であるが、殻や軟体の外見からは区別
できない。成熟した個体では生殖腺の色が異な
り、雌が深緑色、雄がクリーム色となるが、生
殖腺は殻の最奥部のため見た目は分からない。
東アジアの海水温が高い海域の、外海に面した
磯に多く生息。中国沿岸部、黒潮(暖流)が支
配的な日本列島太平洋側の九州から千葉県・外
房辺りまで、対馬海流(暖流)が支配的な日本
列島東シナ海側の九州、朝鮮半島南部、日本列
島日本海側の新潟県辺りまで。
刺身、あるいは殻ごと焼いた壺焼きで食べる。
特に壷焼きは有名で、江戸の遺跡発掘調査でも、
アワビやその他の貝類には焼き痕がないものが
多いのに対し、サザエでは焼き痕のある殻が圧
倒的に多く出土する。当時のサザエの食べ方と
しても最も一般的なものであったと推定されて
いる。
サザエの握り寿司はありそうだが食べことはな
い。勿論、熟鮓もない。養殖も可能だがやはり
天然ものが圧倒的で畜養という範疇をこえるこ
とはない。日本人に愛されてきたサザエ、鮑程
の高級感がないが、庶民派サザエの魅力は尽き
ない。
さだえ棲む 瀬戸の岩壺 求め出でて いそぎし海士の 気色なるかな
西行法師
世の中に恋しきものは 浜べなる さざえの貝のふたにぞありける
大愚良寛
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