『ボーン・アルティメイタム』
THE BOURNE ULTIMATUM(2007年アメリカ、ドイツ)
監督 ポール・グリーングラス
脚本 トニー・ギルロイ
スコット・Z・バーンズ
ジョージ・ノルフィ
原案 トニー・ギルロイ
原作 ロバート・ラドラム
出演 マット・デイモン
ジュリア・スタイルズ
デビッド・ストラザーン
アルバート・フィニー
ジョーン・アレン
スコット・グレン
■ストーリー■
ジェイソン・ボーンは失われた記憶をたどり各地を転々としていた。一方、イギリスのガーディアン紙の記者ロスが、CIAの秘密作戦「ブラックブライアー」のことをかぎつけ取材を始めていた。
「ブラックブライアー」作戦とは、ジェイソン・ボーンたちを生み出した「トレッドストーン」作戦のアップグレード版の作戦だったのだ。ロスの新聞記事を読んだボーンは、ロンドンに飛びウォータールー駅でロスと接触を試みようとする。一方、記者のロスがCIAの「ブラックブライアー」のことに気づいたと思ったCIAのヴォーゼンはロスを確保しようとしていたのだった。
■感想■
ロバート・ラドラムの「暗殺者」シリーズの映画化第3弾。
『ボーン・アイデンティティー』(2002年)、『ボーン・スプレマシー』(2004年)とシリーズを追うごとに面白くなっていくシリーズです。
シリーズを追うごとに予算と爆破シーンだけはハデになっていくのに、ストーリーが薄っぺらになるシリーズは多いですけど、今シリーズは、その逆!とにかく、面白くなっていきます!
監督は前作に引き続きポール・グリーングラス。1作目の監督ダグ・リーマンは製作総指揮にまわったままです。
監督が『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラスのままで良かったです。1作目のダグ・リーマン監督は、細かいカット割が多すぎて、何が起きてるか良く分からなかったですから。
ランニングタイムは、今作が115分と少し長めですけど、全然退屈しません。
1作目の『ボーン・アイデンティティー』が119分、2作目の『ボーン・スプレマシー』が108分ですけど、2作目、3作目は本当に短く感じる面白さです。
今作には1作目から登場している、トレッドストーン作戦の生き残りのジュリア・スタイルズ演じるニッキー・パーソンズが出てくるんですけど、全然活躍しないんで、少しガッカリでした。
1作目に登場したエージェントの“教授”クライヴ・オーウェンみたいに暴れなくて良いですけど、もっと活躍する場面が観たかったです。あの展開じゃ、CIAの普通の事務職の女性職員みたいな感じでした。
トレッドストーン作戦って、1人のエージェントを養成するのに何千万ドルも投資してるんでしょ。ジュリア・スタイルズが、彼女を追ってきた「掃除屋」を軽くノシてしまうようなシーンがあっても良かったのに。
今作にも、ブラックブライアー作戦のエージェントの「掃除屋」が何人か出てくるんですけど、あんまり特長が無かった気がします。敵のキャラクターが、もう少し特長があってキャラクターが立ってても良かったかも。
ところで、「トレッドストーン」作戦のアップグレード版の「ブラックブライアー」作戦って、良く分からないんですけど。権限がかなりある「汚い仕事をする部署」の存在のコトなんでしょうかね。
アップグレードした「ブラックブライアー」作戦の「掃除屋」も、「トレッドストーン」作戦のジェイソン・ボーンと腕前は大して変わらないし。何がアップグレードしたんでしょう??
今作は、日本語吹き替えで観たんですけど、前半のCIAの会議の場面で、ヴォーゼンが「我が社」って何回か言ってるシーンがあるんですけど、「我が社」って表現は一般的なんですか??“COMPANY”を“会社”に訳したんですよね。冒険映画、ミステリ映画好きならなんとも思わないかもしれないですけど、何の説明も無く「我が社」とか「会社」とかじゃ、余りにも不親切で「意味不明」じゃ無いんでしょうかね??
「カンパニー」ってもちろん「CIA」を表すんですよね。スパイ映画とかスパイ小説に慣れしたんでいないと、まるっきり意味不明な表現です!!だから、この表現にちょっと違和感を感じちゃいました。
訳すなら「我が社」じゃなくて、「CIA」とか「我が局」とかの方が良かった気がするんでうsけどね。でも「我が局」だと、また「局」って何??って思う映画ファンがいそうですけどね。(ちなみに、CIA:アメリカ中央情報局だから、局ですよね)
最後の方で、ジョーン・アレンも「殺人マシーンを作るために“会社”に入ったわけじゃない」って言うシーンが出てきます。やっぱり、日本だと「会社」って「CIA」って思わないと思うんですけどね。
「なんでCIAが会社なの??」
それとも日本のエンタメ映画ファンには“COMPANY”が「CIA」を表しているっていうのが、すでにそんなに一般的なんでしょうかね??そんなにみんな冒険映画ファン、ミステリ映画ファンばっかりじゃないと思うんですけど。
でも、良く同じようなトーンでシリーズを3作も作れましたよね。こういうトーンのスパイ映画好きです。でも今作って、シリーズの中で1作目が1番どうしようも無い作品なんですよね。3作を比べてみればって意味で、どうしようも無いって意味ですけど。でも、本当は1作目も、ポール・グリーングラス監督に撮って欲しかったです。どうせならリメイクしちゃえば良いのに!!(←冗談ですけど)
同じスパイ映画でも、ダニエル・クレイグの007映画『007カジノ・ロワイヤル』(2006年)も、ハードなスパイ物とかいわれましたけど、今作の「ジェイソン・ボーン」のシリーズと比べたら、メジャー感いっぱいのハデな作品って印象ですもんね。
やっぱり、007は荒唐無稽な作品を作って欲しいですね。『007ダイ・アナザー・デイ』(2002年)は、透明になるボンドカーが出てきたりして、ちょっと荒唐無稽すぎる気もしましたけど、あれくらいがちょうど良い感じですよね。ハードなスパイ物を観たければ、わざわざ007映画を観るコトは無いんで荒唐無稽なシリーズのままでいて欲しいです。
本当にハードなマジメなスパイ物のジェイソン・ボーンシリーズも、この3作目で一応の終了になりましたけど、もっともっとこのシリーズを観てみたい気もします。
ジェイソン・ボーンシリーズが終わったあと、マジメなスパイ物がまたしばらく観れなくなりますけど、何か、新しいスパイ映画が登場しないでしょうかね?? 75点