「Think clearly」という本は、以下の3つの思考が導き出す、より良い人生を送る52の方法について、とても分かりやすく説明したものです♪
(1)最新の心理学:過去40年にわたる精神心理学・社会心理学・ポジティブ心理学・ヒューリスティックス及びバイアス研究、行動経済学、臨床心理学、認知行動療法
(2)ストア派の思想:古代ギリシャに起源を持つ極めて実践的な哲学の一派で紀元後2世紀のローマ帝国で最盛期を迎え、代表的な哲学者にはゼノン、クリュシッポス、セネカ、ムソニウス・ルフス、エピクテトス、ローマ皇帝マルクス・アウレリウスなど
(3)バリュー投資家の思考:ウォーレン・バフェットのビジネスパートナーであるチャーリー・マンガーの言葉など
特に以下についてはナルホドと思いましたね。
・何を手に入れるかではなく何を避けるかが大切
・幸運に恵まれたことへの「感謝」の念を忘れないこと
・モノを手に入れるより経験が大切
・目標そのものがなければ何も達成できない
・今が大切
・解決するより予防が大切
・良い本を2度読むとより理解
・多才より専門家が大切
具体的には以下の52について書かれていて、どれも、より良い人生のために素晴らしい内容と思いました♪
なるべく若いうちから身につけると良い思考だと思います。
1 考えるより行動しよう
2 なんでも柔軟に修正しよう
3 大事な決断をするときは、十分な選択肢を検討しよう
4 支払いを先にしよう
5 簡単に頼みごとに応じるのはやめよう
6 戦略的に「頑固」になろう
7 好ましくない現実こそ受け入れよう
8 必要なテクノロジー以外は持たない
9 幸せを台無しにするような要因を取り除こう
10 謙虚さを心がけよう
11 自分の感情に従うのはやめよう
12 本音を出し過ぎないようにしよう
13 ものごとを全体的にとらえりょう
14 買い物は控えめにしよう
15 貯蓄をしよう
16 自分の向き不向きの境目をはっきりさせよう
17 静かな生活を大事にしよう
18 天職を追い求めるのはやめよう
19 SNSの評価から離れよう
20 自分と波長の合う相手を選ぼう
21 目標を立てよう
22 思い出づくりよりも、いまを大切にしよう
23 「現在」を楽しもう
24 本当の自分を知ろう
25 死よりも、人生について考えよう
26 楽しさとやりがいの両方を目指そう
27 自分のポリシーをつらぬこう
28 自分を守ろう
29 そそられるオファーが来たときの判断を誤らない
30 不要な心配ごとを避けよう
31 性急に意見を述べるのはやめよう
32 精神的な砦を持とう
33 嫉妬を上手にコントロールしよう
34 解決よりも、予防をしよう
35 世界で起きている出来事に責任を感じるのはやめよう
36 注意の向け方を考えよう
37 読書の仕方を変えてみよう
38 自分の頭で考えよう
39 心の引き算をしよう
40 相手の立場になってみよう
41 自己憐憫に浸るのはやめよう
42 世界の不公正さを受け入れよう
43 形だけを模倣するのはやめよう
44 専門分野を持とう
45 軍拡競争に気をつけよう
46 組織に属さない人たちと交流を持とう
47 期待を管理しよう
48 本当に価値のあるものを見極めよう
49 自分を重要視しすぎないようにしよう
50 世界を変えるという幻想を捨てよう
51 自分の人生に集中しよう
52 内なる成功を目指そう
「Think clearly」という本は、より良い人生のヒントとなりとてもオススメです!
以下は本書のポイント等です♪
・ピカソはこう言っている。「何を描きたいかは、描きはじめてみなければわからない」。同じことは、人生にも当てはまる。人生において自分が何を求めているかを知るには、何かを始めてみるのが一番だ。
・早いうちに軌道修正した人は、長い時間をかけて完璧な条件設定をつくりあげ、計画がうまくいくのをいたずらに待ち続ける人より得るものが大きい。
・数多のスポーツや作家の中からお気に入りを見つけ出したり、人生のパートナーや住む場所や楽器や夏休みを過ごす場所を選び出したり、自分に最適なキャリアや職業や専門分野を決めたりするときいは、まず短期間にたくさんの選択肢を試してみた方がいい。興味があるものだけに限らず、できるだけたくさんのものを試してから、最終的な判断を下すのだ。どんな選択肢があるか、全体像をつかむ前にひとつを選び取ってしまうのでは早計すぎる。
・頼みごとをされた時には、その無理な要求を検討する時間は、きっかり5秒間。5秒間で決断することにしたのだ。するとほとんどの場合、答えは「ノー」。いくら頼みごとの数が多すぎるとはいえ、そのほとんどを断っていれば誰からも好かれるというわけにはいかないが、誰からも好かれたいがために頼みごとを全部引き受けるよりはずっといい。あなたも絶対にそうしたほうがいい。頼みごとを断られたからといって、すぐにあなたを「人でなし」だなと決めつける人はめったにいない。相手はかえってあなたの毅然とした姿勢に尊敬の念を抱いてくれるだろう。
・「柔軟性」を褒め称えるのはやめよう。柔軟一辺倒では、不満がつのり、疲れがたまり、気づかないうちにあなたは目標から遠ざかってしまう。妥協しないで自分の誓約を守り通そう。誓約を100%全うすることは、そのうち99%だけを実行するよりも実は優しいのだ。
・一番いいのは、あなたにありのままの真実を示してくれる「人生のパートナー」や「友人」を持つことだ。それでもあなたの脳は好ましくない事実をどうにかして美化しようとするだろうが、時が経つに連れて周りの人たちの声を素直に受け入れる姿勢が身についてくれるはずである。
・私たちはありのままの事実を受け入れるだけでなく、「失敗」から学ぶ必要もある。それには「あなた自身のフライトレコーダー」をつくっておくことだ。重要な決断をするときには、想定できること、思考の過程、結果など、頭に浮かんだことをすぐに書き留めておこう。自分の決断が間違いだったと分かったときには、そのフライトレコーダーを見直して、あなたの考えのどこに問題があったかを細かく分析すればいい。難しいことではない。失敗をして、その失敗の原因を突き止めるごとに、あなたの人生は向上する。失敗の原因が分からなければ、あなたはまた失敗を繰り返すことになる。だが、粘り強い分析をして原因を解明しておけば、同じ失敗は避けられるのだ。「失敗からの学習」は、プライベートなことだけでなく、ビジネスでも役に立つ。どの企業も、失敗から学ぶという手順を標準マニュアルとして取り入れるべきだろう。素直に事実を受け入れて「失敗からの学習」ができたら、次に今後のために突き止めた「失敗の原因」を取り除く努力をしよう。
・テクノロジーというものはたいてい、登場したときには素晴らしく、とても便利になったかのように見えるが、人生の質という観点からいえば「反生産的」に作用することが多い。良い人生の基本的なルールは、本当は必要ないものを排除すること。特にテクノロジーに関しては、このルールがぴたりと当てはまる。新しい電子機器に手を出す前に、まずは脳のスイッチを入れてよく考えてみよう。
・プロのテニスの試合は、アマチュアの試合とはまったく別物である。プロは「ポイントを取って」勝敗を決めるが、アマチュアの場合はどちらが「ポイントを多く失ったか」で勝敗が決まる。だからあなたが趣味でテニスの試合をするときには、「ミスを避けること」だけに気持ちを集中させればいいのだ。
・私たちの「幸せを大きく損なうものは何か」、あるいは「良い人生をおびやかすものは何か」と考えると、その要因を極めて具体的に挙げることができる。アルコール依存、麻薬、慢性的なストレス、騒音、長い通勤時間、嫌な仕事、失業、不安定な結婚生活、自分への過度な期待、貧困、借金や経済的依存、孤独、愚痴っぽい人たちとの付き合い、周りの評価を気にしすぎること、他人と常に比較されること、被害者意識、自己嫌悪、慢性的な睡眠不足、怒りや嫉妬。こうした要因を見つけ出すのに、学問的な知識はまったく必要ない。こういうものが人を幸せにしないことは、自分自身の経験を通して、あるいは友人や隣人を見ていれば明らかだからだ。そう「ダウンサイド」は、常に「アップサイド」よりつかみやすい。花崗岩のように不変で、具体的な形を持っている。アップサイドはそれに比べると空気のようなものだ。だからこそ、よい人生を確実に手にしたければ「あなたの人生のダウンサイド」を計画的に排除していけばいい。
・良い人生は究極の幸せを求めた結果として得られるものではない。馬鹿げたことや愚かな行為を避け、時代の風潮に流されなければ、人生は自ずとうまくいく。「何を手に入れたか」で人生の豊かさが決まるわけではない。「何を避けるか」が大事なのだ。
・謙虚であれということ。あなたが社会的に成功をおさめている場合は、特に謙虚でなければならない。あなたがおさめている成功が大きければ大きいほど、周囲に吹聴することは控えるべきだ。だが謙虚さはすでに流行らなくなってしまったようで、ネット上には自分のがんばりをひけらかす人々であふれ返っている。控えめになろう。表面だけ謙虚に見せるのではなく、心の底から謙虚でいよう。口に出す、出さないにも関わらず、おごりはただの錯覚にすぎない。おごっても何もならないだけでなく、おごる理由は何もないのだ。おごりを持たない姿勢は、良い人生を送るための基本中の基本。
・今のあなたがあるのも、今あなたが手にしているものも、今のあなたにできることも、すべては目に見えない偶然のおかげなのだということを日々心に留めておこう。あなたにとっても、私にとっても大事なのは幸運に恵まれたことへの「感謝」の念を忘れないこと。それに感謝の気持ちを持てば素晴らしい副次効果もついてくる。感謝の気持ちは人を幸せにしてくれるのだ。
・あなたの(自分の手で勝ちとったわけではない)成功の一部を、恵まれない遺伝子を持って恵まれない地域の恵まれない家族のもとで生まれた人たちに、惜しみなく分け与えるべきだということだ。自分を高潔な人物に見せるためではない。それが人間としての良識ある行動だからだ。寄付と租税はただの金銭的な支出ではない。それ以前に、人間としてのモラルの問題なのである。
・素晴らしい経験を重ねることが幸せな人生につながる。ついでにいえば「結婚生活」においても大事なのはやはり、その生活を通して良い経験が得られるかどうかだ。もはや一緒にいても喜びを感じないのに、ただ単に一緒にいたからという理由で、あるいは他の選択肢がないからという理由で、結婚生活を続けるのは意味がない。大事なことから目をそらしたところで、問題の解決にはならないはずなのだ。もちろん、晴れの日ばかりの結婚生活などありえないが、影を落とす日のようが多いようでは、良い経験が得られているとはとうていいえない。雲が出てきたら、状況を変える努力をしてみるといい。そしてどうがんばっても状況を変えられないと分かったら脱出用のパラシュートを開こう。人間関係における問題のすべてに当てはまるが、人生のパートナーとの問題の場合は特に、その問題が思考の奥に消えてしまうことはない。
・私たちは「モノ」が与えてくれる幸せの効果を過大評価し、「経験」が与えてくれる幸せの効果を過小評価している。モノで得られる喜びは時間とともに消えていく。あなたが家のことで頭をいっぱいにしていたとしても、その思考はやがて、日常におけるさまざまな思考の中に紛れてしまう。だが経験で得られる喜びは、ずっと心に残り続ける。
・お金との付き合い方に関してはいくつかの基本的なルールがある。一つ目は、ある程度の貯金をしておくこと。年収分の貯金は、あなたの経済的な自立を保証してくれる。もしまだ年収分の貯金の良いがないなら、出費はできるだけ低く抑えるようにしよう。そうすれば、まとまった額を貯めるまでの時間を短縮できる。十分なお金は持っているが使うお金は少ないというのが理想的な状態だ。二つ目のルールは、所得額や資産額のわずかな変動にいちいち反応しないこと。しょっちゅうお金のことを考えたからといって、お金の増え方が早まるわけではないのだ。三つ目は、裕福な人と自分を比較しないこと。そんなことをしても幸せにはなれない。そして四つ目は、もしあなたが大金持ちでも生活は質素にすること。裕福な人はねたまれる。それに億万長者にとっては豪華なヨットを手に入れるよりも質素に暮らすことのほうがずっと価値がある。豪華なヨットを買うのは難しくもなんともない。十分なお金さえあれば誰にでも買うことができるのだから。
・あなたの所得が貧困ラインを超えて金銭的な余裕ができたら、良い人生を手に入れられるかどうかは「お金以外の要素」で決まる。お金を増やす代わりに、別の要素に意識を向けよう。本当の成功は経済的な成功とはまったく別のところにあるのだ。
・あなたがいくつかの分野で「平均的」だろうとあるいは「平均以下」だろうと、そんなことはどうでもいい。大事なのは、あなたが少なくとも「ひとつの分野」で抜きんでているということだ。それが世界レベルの優秀さならいうことなし。もし何かの分野で秀でた能力を持っているようなら、あなたは既に良い人生の前提条件を備えていることになる。一つでも素晴らしい能力があれば、欠点がいくつあろうと帳消しになる。同じ1時間を費やすなら、「能力の輪」の外側よりも、内側のことにした方が1000倍も価値がある。
・せわしなく動き回るのを控え、何事にも落ち着いて、長期的に取り組むことだ。そしていったん「能力の輪」をつくりあげたら、その内側にとどまったほうがいい。それも、できるだけ長く。良い人生のパートナーや理想的な住まいや、充実感を得られる趣味を見つけた場合も同じだ。根気、長期的な考え、一つのことに取り組み続けること。どれも非常に価値があるにも関わらず、過小評価されている美徳である。改めて評価されてしかるべきだろう。チャーリー・マンガーはこんなことをいっている。「何も優秀である必要はない。他の人間よりもほんの少し賢くあればいい。ただし、長い長い期間にわたってね」。
・重点は常に、成功や成果といった「アウトプット」にではなく、行為そのものや作業といった「インプット」に置かれていることが大事だ。つまり「明日こそはノーベル文学賞をもらえるはず」と考えるより、「今日は少なくとも3ページは書こう」と考えるほうがずっと健全だからだ。
・世間の人々は、あなたについて好き勝手なことを書き、ツイートし、投稿する。あなたに隠れてひそひそ話をしたり、うわさ話をしたりする。あなたを極端に褒めあげたり、ひどい厄介ごとに巻き込んだりもする。どれもあなたにはまったくコントロールできないことばかり。だが幸いなことにコントロールする必要もないのだ。あなたが政治家や有名人であったり、自分のイメージを使って仕事をしていたりするのでもなければ、自分の評判なんてそれほど気にすることはない。「いいね!」を押したり押されたり合戦はもうやめよう。自分をグーグルで検索したり、誰かの承認を求めたりするのもやめよう。それよりも、自分で何かを成し遂げたり、胸を張れるような生き方をしたりすることに注力したほうがいい。ウォーレン・バフェットはこんなことを言っている。「私のしたことが周りの人間にとって気に入らないものであっても、私自身がそれを気に入っていればそれで満足だ。だが周りが褒めてくれたとしても、私自身が自分の仕事に納得できなければ不満を感じる」。まさに「内なるスコアカード」そのものではないか。あなたも、周りからの褒め言葉や非難は穏やかに受け流すようにしよう。一番大事なのは、あなた自身がどう判断するかなのだから。
・私は性格の改善が必要な人間は雇わない。私がその人間の性格を変えようとしても、むなしいだけだと分かっているからだ。そしてどんなに多額の利益が見込める場合でも、自分と波長の合わない人たちとはビジネスをしない。そこで働く人たちの考え方や物の見方を変えなければならないような組織の運営も、引き受けないことにしている。
・処世訓に「好感があって、信頼のおける相手としか、仕事をしてはならない」というものもある。チャーリー・マンガーもこんなことを言っている。「信頼できる相手とだけ付き合って、それ以外の人間はすべて追い払ってしまえば、とても快適になる。賢い人間は害虫みたいなやつらからは距離を置くものだ。そういう連中は大勢いるがね」。自分と波長の合わない人たちにあなたの人生から出て行ってもらうためには、どうすればいいだろう?私はこんなことをしている。毎年12月31日になると、妻と私は1枚のメモ用紙に一人ずつ、「今後は付き合いをやめたい人たち」の名前を書いていく。そしてそれを1枚1枚もったいぶった仕草で投げ捨てる。だまされたと思って一度やってみてほしい。気分が爽快になって心の健康に役立つ恒例行事である。
・古代ローマの哲学者、セネカは既に2000年前にこう言っている。「すべての行動は、ひとつの目標に向けられていなければならない。そのためには、常にその目標をしっかり見据えておくことだ。」目標を必ず達成できるとは限らないが、始めから目標そのものがなければ何も達成できない。「人生の目標」の意味は極めて大きい。
・若い頃に経済的な成功を重視していた人の方が、数十年後の所得額が多いこと。つまり目標の有効性が裏付けられたのだ!心理学者だけはこの結果に驚いた。また社会に出たら高収入を稼ごうと若い頃に目標を立て、のちにその目標を達成した人は、人生に対する満足度も非常に高かったことだ。
・だが彼らの「幸福度の高さ」は「所得の高さ」によるものではないのだ。というのも、経済的な成功を人生の目標にしていなかった人たちの場合には、所得の高さは人生の幸福度にほとんど影響を与えていなかった。つまり、人が幸せを感じるかどうかは所得の額によって決まるのではなく、目標を達成できたかどうかで決まるのである。人生の目標がお金以外の場合でも、同じような傾向が確認されている。
・人生の目標は持ったほうがいい。ただ目標を立てるときに気をつけなければならないこともある。ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンが指摘しているように「達成困難な目標を立てている人は人生に不満を感じるもの」だからだ。あなたも目標を立てるときには「それがどのくらい実現可能なものか」をよく考えてほしい。それから目標はわざと少し曖昧にしておいたほうがいい。(たとえば億万長者になるではなく裕福になるというように)目標を達成できればそれに越したことはないが、たとえ達成できなくても、目標が曖昧なら(少なくとも部分的には)目標に達したと思うこともできるからだ。あなたが意識してそう思い込もうとしなくても、おそらくあなたの脳は自然にそう解釈してくれるだろう。
・「体験している私」と「思い出している私」とではどちらのほうが大事なのだろう?答えはもちろん両方だ。けれども私たちは良い思い出をつくりたいと思うあまり、「思い出している私」のほうを重視してしまいがちだ。「現在」に目を向けるより、ついつい将来の思い出づくりを意識した行動をしてしまう。だが意識の向け方は逆の方が望ましい。本当に充実した人生をおくりたいか、それともアルバムだけを充実させたいか。そのどちらがいいかを考えてみればわかるだろう。
・本当のあなたを知りたければ、人生のパートナーや長年の友人のように、あなたをよく知っていて、あなたに気を遣わずに正直な意見を聞かせてくれる誰かに尋ねてみるといい。それよりもっといいのは「日記」をつけること。何年も前の自分が書いたことを時々読み返してみると、きっとその内容に驚くに違いない。あなたの矛盾や欠点や闇の部分も含め、できるだけありのままの自分を見つめるのも良い人生にするための条件の一つだ。自分が誰かがわかっていれば、なりたい自分になれるチャンスも大きくなる。
・起きたできごとの長さは、記憶に影響しない。つまり、旅行をした期間が3週間だろうと1週間だろうと、あとから振り返れば残っている記憶に差はない。そして旅行全体の印象は、そのピークと終わりの部分だけで決められてしまう。映画でも観ている最中は楽しめたとしても、結末に満足できなければいい映画としては記憶に残らない。同じことはパーティにも、コンサートにも、本にも、講演にも、住まいや人間関係にも当てはまる。
・「どれだけ長生きできるか」を競うのは品がない。良い人生を過ごすほうが、良い死を迎えるよりずっと大事だ。だから、よい人生の条件については考えてみる価値があるが、死については考えてみても意味がない。
・あなたにも覚えがあると思うが、大抵の場合、もっとも不快に感じる攻撃は肉体的なものではなく言葉によるものだ。今度言葉で攻撃されることがあったら、こんな対抗策をとってみるといい。ミーティングの場などで悪意ある言葉であなたを攻撃する人がいたら、その人に、その発言をもう一度繰り返してもらうのだ。すると、ほとんどの人が負けを認めるはずである。
・あなたも私も、ほかの誰かも、人間なら誰もが「不安」を抱えている。100万年もの間、私たちは常に「不安」を感じていたからこそ生き延びたのだ。従って不安を感じること自体は、悪いことではない。だが問題がひとつある。いまやあなたの臆病さは、命を脅かす危険とは直結していないということだ。あなたはもう、どの水飲み場にもサーベルタイガーが待ち伏せているサバンナに住んでいるわけではない。あなたの頭の中に押し寄せる問題は、実際には危険でもなんでもない、あるいは何かにつけて心配するのをやめられないから心配ごとを抱えているだけで、それらの90%は実は不要なのだ。真夜中に地球温暖化や、株式市場の動向や、天国に行けるかどうかを心配してみてもなんにもならない。ただ眠れなくなるだけだ。
・私の経験上おすすめできる「不安に対する3つの対処法」を挙げておこう。一つ目。「私の心配ごとメモ」というタイトルをつけたメモ帳を一冊用意しよう。そして、あなたが自分の心配事のために使う時間を決めておく。たとえば「1日10分」と時間を決めて、その間に気にかかっていることすべてをそこに書き出すのだ。心配して当然の深刻な問題も、ちょっとしたことも、漠然とした不安も、気になることはとにかくすべて書き留める。それを書き終えたら、その日の残りの時間は、ある程度心配ごととは無縁でいられるはず。心配ごとはきちんと記録されていて、ただほったらかしにされているわけではないと、あなたの脳が認識するからだ。それを日々の習慣にして、毎日新しいページを使うようにする。そうすると、あなたはいつも自分が同じ心配ごとに悩まされているとわかってくるはずだ。二つ目。「保険」をかけよう。保険は素晴らしい発明だ。心配ごとをなくすためのもっともスマートな方法のひとつと言っていい。保険の真価は、損害が発生したときの金銭的な補償にあるのではない。保険の有効期間は心配事を減らせるという点にある。そして3つ目は「仕事」に精神を集中させよう。仕事は心配事から気を逸らす最良のセラピーになる。仕事への精神集中や仕事で得られる満足感は、瞑想よりずっと不安の抑制に効果的だ。仕事ほど気をそらせられるものは他にはなかなか見当たらない。
・どれも不幸なことに違いないが、命にかかわるほどではない。それに最も大きな運命の波を、あなたはすでに乗り越えている。あなたがこの世に生まれるまでの確率の低さを考えてみるといい。あなたの母親やあなたの両方の祖母や曾祖母たちがつらい出産(出血多量で亡くなった人もいたはずだ)をくぐり抜けた結果、あなたはこの世に生を受けることができたのだ。それなのにあなたは、あなたの株式ポートフォリオの価値が半減した程度のことで嘆くというのだろうか?
・ソーシャルメディアの使用を減らせたら、次は「実生活で、他人と比較せざるを得ないような機会」も避けるようにするといい。たとえば同窓会に出席するのはやめたほうがいい。ひょっとしたら、収入面でも、健康面でも、家庭生活も、社会的な地位においても、同級生たちの中でもっとも順調なのはあなたかもしれないが、そもそも同窓会に行かなければそんなことは知りようもない。住むところに関しても、自分がその地域の中で上流でいられるような町や地区を選ぼう。社会的な付き合いも同じだ。あなたが資産家でもない限り、ほぼ富豪ばかりで構成されるロータリークラブに入会するのはやめたほうがいい。どこかに所属するなら、民間の消防団にでも参加した方が居心地がよく、よほど有意義だ。
・私たちは、「目につきやすい」業績をあげた軍の高官や、政治家や、救急外科医や、セラピストの役割を過大評価し、社会や個人が大きな問題に巻き込まれるのを未然に防いだ人たちの役割を過小評価している。だが真のヒーローや賢人は、実は腕のいいホームドクターや、優れた教師や、合理的な立法者や、百戦錬磨の外交官といった「問題を事前に防いでいる人たち」のほうなのだ。
・二度読んだ時の読書効果は、一度しか読まない時の倍どころではない。もっとずっと高くなる。私の経験からいえば、ほぼ10倍にふくれあがる。一読後、私の記憶に残るのは本の内容の3%程度だが、2度読んだ後ではそれが30%にまで増えている。
・あなたがまだ若く、自主的に読書を始めてからまだあまり月日が経っていない場合には、できるだけ多くの本を読むべきだ。長編・短編小説、叙情詩、あらゆる種類の実用書など、ジャンルや質を問わず手当たり次第にたくさんの本を読んだほうがいい。
・何があろうと、イデオロギーや教義には近寄らない方がいい。あなたが少しでも共感を持てるようなイデオロギーや教義がある場合は、特に要注意だ。イデオロギーに関わってもいいことはない。あなたの世界観が狭まって、結果的に粗末な決断をしてしまうだけだ。何かの原理・原則に固執して生きる教条主義者なのにわずかでもよい人生を送っている人になど、私は今まで一人も出会ったことがない。ここまでは明快だ。ただし、問題は、多くの人はイデオロギーにのめりこんでしまってもまったく気づかないということだ。イデオロギーかどうかをどうやって見分ければいいのだろう?イデオロギーであることを示す危険信号は3つある。あらゆる事象に対する説明が用意されていること、反論の余地がないこと、そして不明瞭であることだ。
・もしあなたが、何かの教義に心酔している人に出会ったら、「あなたの世界観を手放さざるを得ないのは、どんな出来事に遭遇したときですか?」と尋ねてみよう。その質問に対して答えが返ってこなければ、その人が何かを盲信している証である。その人物からは大きく距離を置いたほうがいい。そして、自分が何かの教義に取り込まれそうになっているのではないかと不安になったら、自分自身に対してこの問いかけをしてみよう。
・自分の頭で考えよう。身近にある社会集団の考えに対する忠実すぎる信奉者になるのはやめよう。一般的に「教義」と呼ばれるものからは、距離を置くようにしよう。自分は世界を理解できていないと早く気づけば気づくほど、世界をさらによく理解できるようになるのだから。
・人生で災難が降りかかったときに「自己憐憫」に浸ったところで何もならない。それで何かが変わるわけでもない。自分のことをかわいそうだと思っても何ら意味がない。自己憐憫は感情の渦のようなもので、長くそこで泳いでいたらどんどん深みにはまるだけ。そして渦に巻き込まれると、あっという間に妄想のとりこになってしまう。全人類あるいは全世界が徒党を組んで自分に敵対しているように感じられるのだ。この負のスパイラルの犠牲になるのは当人だけではない。周りの人たちにも迷惑がかかり、当然ながら彼らは妄想にとりつかれた人物とは距離を置くようになる。私は自分が少しでも自己憐憫に陥りそうになっているのを感じると、すぐにその危険な渦から抜け出す努力をしている。アメリカのことわざに「自分が穴の中にいるとわかったら、掘るのをやめろ」というのがあるが、それを忠実に守っているのだ。
・状況が変わったのは1万年ほど前に人間が「定住」を始めてからだ。突然、役割の細分化が始まった。畜産業者、農夫、陶工、測量技師、王様、兵士、水運び人、料理人、書記など、次々に職業が誕生し、人々はそれぞれの職業でキャリアを築いて、専門知識を身につけるようになった。そして専門分野以外の知識を持つ必要はなくなっていった。石器時代は、人間は「多才」でなければ生きられなかった。「スペシャリスト」に生き延びるチャンスはなかた。それが1万年前に逆転したのだ。今では「スペシャリスト」でなければ生きられず「多才な人」にはチャンスはない。最後まで多才な仕事をこなしていた人たちは、自分の仕事価値が急に低くなるのを目の当たりにしなければならなかった。一般的な教養は、驚くほど休息に利用価値がなくなってしまったのだ
・とある分野で軍拡競争に巻き込まれないためにはどうすればいいのだろう?答えは軍拡競争のない活動領域を見つけることだ。たとえば私が書籍要約サービスを提供する「gerAbstract」社を友人とともに設立した理由のひとつも、その領域には軍拡競争がなかったからだ。競合他社はゼロ。この事業を始めてから10年以上ものあいだ、同様のサービスを提供する会社は現れず、私たちにとっては夢のような状況だった。「専門を持つことの重要性」について取り上げたが、実は専門を持つだけでは十分ではない。専門性の高い特定の分野にも、軍拡競争が潜んでいることが多いからだ。あなたがその第一人者であり、なおかつ軍拡競争とも無縁でいられる分野を見つける必要がある。
・すすめられたからといって、くだらないものにいちいち飛びつくのはやめたほうがいい。その時その時の衝動に従うべきではないし、市場に出回っているからといって片っ端からすべての電子機器に手を出すのもよしたほうがいい。価値のあるもの、質の良い物、絶対に必要なものはほんのわずかだ。90%は無意味で単なるがらくたにすぎないというスタージョンの法則を意識していれば、時間がかなり節約でき、不愉快な思いもしなくてすむ。不用な考えと良い考え、役に立たない製品と良い製品、無意味な投資と良い投資の違いを見極めよう。くだらないものはくだらないものとしてきちんと認識したほうがいい。それからもう一つ、違いを見定めるときのちょっとしたアドバイスがある。それがくだらないものかどうか確信が持てないときは、それはくだらないものだと思って間違いない。これは私の経験上、自身を持っていえる。