<金曜は本の紹介>
「ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則(桑原晃弥)」の購入はコチラ
ウォーレン・バフェットとは、世界長者番付トップ10に25年も君臨し続け、経営する投資会社の株価を45年で82万%も上昇させた投資家です。
「ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則(桑原晃弥)」という本は、そのウォーレン・バフェットの行動原理や投資の考え方について、以下の7つの法則についてまとめて書かれたたものです。
(1)世間を眺めて判断しない-「逆」が富を生み出す
(2)成功したらそれ以外やらない-「限定」が富を生み出す
(3)ストライクのほとんどを見送る-「待ち」が富を生み出す
(4)バカでも経営できる会社を選ぶ-「スタート」が富を生み出す
(5)一攫千金を禁じる-「当たり前」が富を生み出す
(6)敗者の少ない勝ち方をする-「分配」が富を生み出す
(7)人にほれこむ基準を持つ-「相棒」が富を生み出す
ウォーレン・バフェットは巨富を生み出しましたが、生活は質素で、そして考え方は真面目で好感を持てます。
また、主な投資の基本的考え方は以下とのことです。
・株を長期保有(あわてて小さな利益を得ようとしない)
・分散投資ではなく集中投資
・株価がその企業の価値より安いかを見る
・経営者の資質を重視する
・買った時の株価に拘泥しない
・自分で考える
・自分で納得いくまで調べる
・企業は一番手でなければならない
・投資先のビジネスを十分に理解することができる
・投資先のビジネスは5年、10年、20年と確実に収益をあげられる
・株は適正かつ合理的な価格で購入する
・巨額の負債がある投資先は避ける
・ブランド力がある企業に投資
・他社との競争優位性がある企業に投資
・素晴らしい企業をまずまずの価格で買う
・1日10時間情報の収集や分析を行うが、株を買うときは即断
・経営者の過ちや環境の激変に耐える復活力の強い企業こそが理想
・高コスト体質の会社はダメ
また、人生を真面目により良くするためのヒントも書いてあり、とてもオススメな本です。
以下はこの本のポイントです。
・ウォーターゲート事件とは、リチャード・ニクソン大統領が辞任にまで追い込まれた一大政治スキャンダルである。この事件を報道したことにより、ワシントン・ポストは世界に名をはせ反面で、時の政権からは目の敵にされた。政権は、同社が所有するテレビ局の免許更新に異議を申し立てるなど、さまざまな攻撃を繰り返していた。だから株価が急落したのだし、リスクを恐れて買う人はほとんどいなかったのだ。しかし、バフェットは意に介さなかった。彼の判断基準に照らすと、全財産を注ぎ込んでもいいくらい安全だった。
①株価がその企業の価値より安いかどうか
純資産は4億ドルぐらいだとバフェットは算出した。これに比べて株の時価総額はわずか800万ドル。不当すぎる安さだった。
②その企業にすぐれた経営者がいるかどうか
バフェットは、ワシントン・ポストの経営陣を有能であり、かつ正直だと評価した。経営者自身がかなりの株式を持っていることも安全材料だった。
あとは、どれほど株価が下がろうが、ウォール街が危機説を流そうが、状況を逆手にとって割安に買い増しをするだけだった。読み通り、ワシントン・ポストの評価はやがて上がる。1974年、バフェットは正式にワシントン・ポストの取締役に就任した。こうして、当時、オマハのちょっと有名な投資家に過ぎなかったバフェットは、世界有数の名門メディア企業の筆頭株主にして取締役という社会的名声をも得たのだった。そして社会的名声は、富では買えない価値であると同時に、富の獲得と決して無縁ではないのである。
・バフェットは、二番手には利益がないばかりか、居場所もないという確信を深めた。誰かの後塵を拝するような分野で勝負をしても未来はない。戦うなら自分が最も得意とし、トップに立てる分野だ。一番手なら自分で自分の進む道を決めることができる。二番手で楽をしてしまう代償は、自分に決定権がなくなるという高すぎるものになる。
・フランクリンは、政治・外交・著述・物理学・気象学など多彩な分野で成功を収め、その高潔な人柄からも「米国人の父」と讃えられる人物だ。彼は、自分の習慣や性癖などがもたらす過ちを注意深く克服し、常に正しく生きたいと願った。その実現のために、自分にとって必要な徳目を13あげ、一つひとつを習慣化したいと考えた。13の徳目とは、節制・沈黙・規律・決断・節約・勤勉・誠実・正義・中庸・清潔・平静・純潔・謙譲である。これらを同時にすべて習慣化するのは難しい。フランクリンは一定の期間、どれか一つに集中し、身に付いたと実感できて、初めてほかの徳目へ移るやり方をした。
・バフェットは、投資の信条に「正しい価値観」に基づく3つを追加した。
①十分に理解することができる
②5年、10年、20年と確実に収益をあげられるビジネスである
③それを適正かつ合理的な価格で購入する
・バフェットは本当に自分が理解し、自信を持てる企業以外には決して投資しない。たとえ理解の範囲にめぼしい企業がなかったとしても、無理に範囲を押し広げない。その結果、ハイテク企業を避けて「過去の人」扱いされても、自分自身で「D」の評価をつけざるを得なくなっても、意に介さない。そんな一時的な評価に右往左往してリスクを負うほうこそ大バカ者なのだ。大切なのは投資分野が理解でき、投資先の経営者や競争力に万全の自信を持てるかどうかである。そこに、
①集中的に投資する
②長期間保有する
というのが、バフェットの投資とリスク回避が一体化されたスタイルである。こうしたバフェットのやり方は、短期売買を繰り返すウォール街的な風潮とは大きくかけ離れている。だが、バフェットは、花から花へ舞う蝶は投資家ではなく、「これは」と見込んで取得した企業と10年、20年と付き合うのが心の投資家だと指摘している。
・バフェットは、投資先を見つける時、紙と鉛筆を使った、こんなやり方をする。
①自分が理解できる企業の名前を紙に書く
②それを取り囲むように輪を描く
③輪の中にある企業のうち、3種類の企業を輪の外に出す
・本来の価値に比べて株価が割高
・経営陣がダメだ
・事業環境がよくない
④輪の中に残ったある企業に目をつけ、自分が相続したらと仮定して長所や短所をつかむ
・経営者である自分は何をするのか
・経営者である自分は何をしたいのか
・会社の問題は何か
・会社の競争相手はどこか
こうした知識がベースにあれば、その企業を買うかどうかはごく短時間で判断できる。5つか6つくらいの業種について深い知識を持てばいいし、一気に持とうとせず、一業種ずつこつこつと勉強すればいい。目標は「経営陣よりも深い知識を持つ」というのがバフェット流のやり方だ。
・バフェットは企業経営においても、巨額の負債を好まない。自分自身、1万ドルの資金がある時に100万ドルあれば成功間違いなしというアイデアが浮かぶこともあるが、その時はアイデアのほうをあきらめるか、変更する。借金は断じてしない。「莫大な借金も、経営者が経営にうまく使えば、決して悪いだけではない」という考え方もあるだろう。だが、バフェットは、それにも「ノー」を突きつける。ビジネスは一寸先は闇である。いつどんな事態が起きるかわからない。それなのに「返済できる」と思いこむのはリスクが大きすぎる。なんとか手持ち資金の25%以内の借金にとどめるべきなのだ。莫大な借金をして事業を拡大し、一時期は高収益を謳歌したものの、やがて消え去った企業は数知れない。借金を嫌い、テクノロジー企業に決して手を出そうとしないバフェットは時代遅れと見られたこともあるが、彼が正しかったことは彼の実績が証明している。
・困難なビジネスでは、一つの問題が片づく前に次の問題が起き、それが続いて消耗戦に陥るだけだという教訓を、バフェットは得た。よいビジネスならリスクがゼロというわけではないだろう。ただ、すぐれたビジネスをすぐれた経営者が経営していれば、リスクはとても小さいのに対し、問題の多いビジネスの場合、成長どころか、生き残っていくだけのために人員の削減や工場の売却といったつらく難しい決断を迫られ続ける。バフェットは「素晴らしい企業をまずまずの価格で買う」ことが結局はリスクを最も低くすることだと深く悟っていく。
・バフェットは、ベン・クレアムの次に、著名な投資家フィリップ・フィッシャーを師と仰いでいる。電子・通信の巨大メーカーだったモトローラ社(2011年に分割)がまだ小さなラジオ製造会社だった1955年に株を買い、2004年に死去するまで持ち続けたことでも知られる人物だ。そのフィッシャーは、「いつ売るべきか」という問いに対し、正しく選び抜いて買った株なら「売るな」と答えている。売るのは、次の3つのケースに限られる。
①正しく選び抜いたつもりが、判断に誤りがあった。
間違いに気づいたらすぐに改めるのが鉄則なのは、投資の世界でも変わりない。
②時代の変化とともに、当初の条件を企業が満たせなくなった
ただし、あわてふためいて売るほどのことはない
③投資先を乗り換える
しかし、魅力的な投資機会はそれほど多くない。目先の急成長株に目をうばわれて、せっかくの長期的利益を失わないように注意が必要だ。
さらにフィッシャーは、絶対にやってはならない2つのケースもあげている。
①悲観的になって売り急ぐこと
株式市場が著しく低迷するなどといった状況では動揺しがちだ。しかし、長い目で見れば、あわてる理由などない。
②他人のアドバイスに乗って売ること
「このへんで利益を確保しては」といった他人の意見に乗せられて売ることもすすめられない。株の専門家は「売って利益を手にし、その利益でもっとよい株を買えばいいですよ」としきりにすすめるものだ。しかし、どうしてもお金が必要なケースを除けば、そんな意見など真面目に聞く必要はない。よい株は売らないことなのだ。よい企業は長く成長し続ける。株は人間よりも長生きする。本当に有望な成長株と確信したら、できるだけ長く持ち続けることだ。それは、株が値上がりした時に売って手にできる利益よりも、もっと多くの利益をもたらしてくれる。
・バフェットは自分が買った企業との関係が一生続くことを希望している。企業は利益をあげ、その一部が毎年確実にリターンされてくるからだ。株式は企業の一部であり、株式投資は事業を買うことである。株価の変動を見ながら売買して利ザヤを稼ぐのは、投機に過ぎない。事業を買い、長期間保有することで利益を得るのが投資なのだ。だから、1~2年好成績をあげた企業ではなく、5年、10年と業績をあげ、将来にわたって安定成長するのが確実な企業を買うべきだ。それは、短期売買を繰り返して得る利益以上に多くの富をもたらしてくれる。だからバフェットは、みずからが経営するバークシャー・ハザウェイの株主にも、「いつ、いくらで売ろうか」などと考えず、永久に株を保持してもらいたいと希望している。
・投資の世界はチャンスが多いように見えるが、自分のストライクゾーン持って好球を待つ人間にとっては、ひっきりなしにチャンスがあるわけではない。にもかかわらず、バフェットが成功し続けることができるのは、めぐってきたチャンスを確実につかみとる決断の早さを持っているからだ。バフェットは1日10時間というほど長く情報の収集や分析を行う。だが、株を買うべき時は、分析などしない。速断を重んじる。
・バフェットやマンガーが信奉するベンジャミン・フランクリンも、人生を大切に思うのなら時間を無駄に使うなと忠告する。時間こそ人生の材料だからである。「時間の浪費こそ一番の浪費」「時間は十分あると思うと、いつも決まって時間不足に終わる」「時間の失せ物は、間違っても見つかることがない」と言っている。ところが、私たちは、時間は限られた貴重な資源であることを頭では理解しているが、往々にして無駄に使ってしまう。他人の時間を気にするあまり、自分の時間を犠牲にしたりすることもある。バフェットは、自分の時間を無駄にしなければ、他人の時間を無駄にすることも好まなかった。顕著な例が、投資話を持ってくる人たちに対する結論の早さだ。そういう人にバフェットはいつくつかの条件を提示する。「一貫した収益力がありますか」「負債は少ないですか」「経営陣が定着していますか」「私が理解できる単純な企業ですか」-そして、必ずこう付け加える。「価格が提示されていますか」バフェットは仮定の話を好まない。価格が提示されていれば結論が出しやすいが、そうでなければ仮定の話になって時間の浪費に堕すからだ。
・バフェットの公式自伝は、本書の見出しにたびたび引用している「スノーボール」だ。このタイトルは、バフェットが子供の頃から「小さな雪の玉」を固め始めたことに由来する。もし固め始めるのが10年遅れたら、山の斜面をここまで上には登ってこれなかっただろうと述懐している。先を行くためには、早くスタートすることだ。時間を浪費してはならない。人生はいつでもやり直しができる柔軟さを持っているが、失った時間を取り戻すのは不可能なことも、常に銘じておくべきだ。
・場ふぇっとは強力なブランド力を持つ企業に強く曳かれるようになっていった。たとえばバレンタインデーや結婚記念日に、いくら安いからといって無名のチョコレートを買う人はいない。値段は高くても名のしれた品を選ぶものだ。そんな「少し余分に払っても買う価値のあるもの」こそがブランドの価値であり、それが、ライバルが絶対に勝てない競争力を生むのだ。ガソリンスタンドで惨めなビジネスを経験したバフェットは、そうした惨めさとは無縁の存在である企業としてコカ・コーラの株式を取得するようになる。
①世界最強のブランド力
②値頃で商品を提供している
③消費者の評判がいい
④一人当たりの消費量が、ほぼすべての国でほぼ毎年増加している
このような点から、コカ・コーラのようなすごい商品は、ほかにないと感じた。たとえ1000億ドル使っても、世界のソフトドリンク業界第一位の座を奪うことは不可能だと判断したのだ。それ以前はペプシコーラの愛飲者だったが、コカ・コーラのチェリー・コークを飲むようになった。強い企業とはどんな企業かという問いに対する答えはいくつkあるのだろうが、バフェットは、コカ・コーラのような強いブランド力を持った企業を強い企業と考えるようになっていく。
・ここで、バフェットの思考の変遷を見てみよう。
①有形資産ばかりを見ていた
②経営力やブランド力、競争力などの無形資産にも目を向ける
③すぐれた経営者がいるすぐれた企業で安価に買えるという条件を好むようになる
④経営者の過ちや環境の激変に耐える、復活力の強い企業こそが理想と考え始めた
新しいアイデアを生むよりも古い考えを捨てるほうが難しいというが、バフェットはさまざまな経験を通して古い考えを捨て、新たな思考のステージに進んでいることがわかる。チャーリー・マンガーがバフェットを「学習マシン」と呼んだ通りだ。バフェットの学習は本や資料を読むだけではなく、失敗体験を決して忘れることなく、そこから教訓を引き出すことでも行われていた大きく成功する秘訣でもあるだろう。
・バフェットは幼い頃から大変な読書家であり、図書館で手に入るものは片っ端から、それも3度、4度と繰り返し読んでいる。師ベン・グレアムの本についても、すべて暗記するほどに頭にたたき込んでいる。それだけに、投資で成功するためには、本を読むこと、手に入る資料をしっかりと読むことが必要だと説いているが、一方で、それだけでは解決できない問題があることもよく知っている。
・バフェットは高コスト体質を嫌う。バッファロー・イブニング・ニューズ社を買収した時、あまりに立派なオフィスや印刷工場を見て、チャーリー・マンガーと、新聞社に宮殿は必要ないと皮肉っている。また、経費削減も、常に息をしているように、常にやるべきことだと考えていた。そんなバフェットは、USエアーに関しては過去の高収益に心を奪われて、確実に起こるであろう変化を見落としたのだ。過去の業績を見るだけでは企業の価値を知ることはできない。未来に何が起きるのかを予測し、成長力や競争力を検討しない限り、真の価値はわからない。バフェットは、そんな教訓を得た。そして、経営者に必要な資質は、前例のない重大なリスクをも見抜き、回避できることだと考えるようになった。
・「投機家」は、株価の変動を予測して利益を得ようと、日々の株価の変動に目を凝らす。だが、「投資家」はそんなことはしない。最大の関心事は、適切な企業の証券を適切な価格で取得して長期間保有することにある。株価を利用するのは構わない。しかし、株価に踊らされてはならないのだ。日々の株価の動きに関心を示さないバフェットは、友人であるビル・ゲイツから、コンピューターを1台手に入れるといいとすすめられても、やんわりと断っている。それは、保有株の動きを5分単位で知る必要はないからである。経済・金融情報のすぐれた配信システムであるブルームバーグ端末についても同様だ。1990年代には多くの企業が採用し、バークシャー・ハザウェイにも3年間にわたって売り込みが行われた。だが、バフェットは市場を分単位で追うのは投資の手法ではないとして、頑として採用しなかった。
・有利だったのは、オマハは、ものをじっくりと考えられる環境にあったことだ。
①住み慣れた生まれ故郷であること
変化をリスクと考えるバフェットには、故郷はこのうえなく落ち着ける場所だった。
②ウォール街から離れていること
ウォール街にはたくさんの情報が集まってくる。熱狂の近くにいたいと願う人にはいいが、熱狂は往々にして人から冷静に思考する力を奪う。
③適度に都会であること
オマハはネブラスカ州最大の都市であり、インフラは過不足なく整っている。
・バフェットは大変な読書家ではあるが、単に本を読むことだけが目的の人間ではない。
バフェットは投資家として成功するには何が必要かと聞かれると、「本を読むことです」と答え、それに、もう一つの答えを付け加えることを忘れない。それは、少額でもいいから投資をするということだ。本を読むことは必要だが、本を読むだけでは成功はできない。読書家バフェットは、
①自分から始める
②すぐに始める
③徹底してやり続ける
この3点を守ることで、大投資家への道を歩むこととなった。
・「あなたの最高の財産は何か」と聞かれ、「自分です」と答えられる人は少ない。「あなたにとって一番大事な顧客は」と聞かれ、「自分です」と答えるにはかなりの勇気が必要だ。しかし、バフェットとマンガーはこうした問いに「自分です」と堂々と答えたからこそ、必死に自分を磨くことができた。よい習慣を身につけるために努力し、手に入るあらゆるものを読み、自分の頭で考える訓練をした。それは豪邸に住むためでも、フェラーリに乗るためでもなく、自立した自分をつくり上げるためだった。大切なのはバフェットが言うように、どれだけの時間を自分のために使うことができるか、どれだけの努力を自分に傾けることができかだ。世の中に大切なものはいくつもあるが、最も大切にしなければならないのは間違いなく自分という存在だ。自分を大切にし、自分を磨き、日々自分を向上させる努力が欠かせない。
・バフェットは、自分が幸運だったと考えている。家では面白い話が交わされていた。両親は知的で、いい学校に行かせてくれた。お金で財産はもらってはいないが、生まれた場所と時期がすばらしかったと述懐している。特に、「使う金は入る金よりも少なく」という質素倹約の教えが身についたのは、計り知れない徳だった。今は失われた、古きよきアメリカ伝統の考え方である。たとえば、古きよきアメリカ人を代表するベンジャミン・フランクリンは、成功を確実なものにしたいのなら、勤勉プラス節倹の徳が必要だと説いている。勤勉に稼いでも、節倹して残すことを知らなければ、一文の金も残せないからだ。
・バークシャーの本社には10人足らずの社員しかいない。事務所も質素で、社員も少ないし、バフェットとマンガーも年間10万ドルの給与しか受け取っていない。マンガーによると、他の同様な会社の平均からすると、経費はわずか250分の1というから驚かされる。その質素倹約ぶりは徹底している。かつて通常価格の4分の1程度で売り出されているビルの購入を考えたこともあるというが、あまり豪華な事務所に移るのは従業員に悪い影響があると考えて踏みとどまったほどだ。本社が率先してこれほどの質素倹約を徹底すれば、バークシャー・ハザウェイ傘下の企業もそれにならうことになる。バフェットは贅沢が当然のウォール街文化とはまるで違うところに身を置くことで世界一の投資家となり、世界有数の優良企業をつくり上げた。
・ビジネスを行っている以上、損失を出すことはしかたがない。その金額が莫大なものであっても、悪意からのものでなければ、許すことができる。失ったお金は仕事をすることで取り返すことができる。しかし、名誉はおうはいかない。会社の信用とブランド力が傷つき、地に落ちてしまったら、それを取り戻すのはほとんど不可能だ。できたとしても長い年月と大変なコスト、労力が必要になる。こうした倫理観をバフェットは父から教わった。
・ビジネスで大切なのは、自分が好ましく思い、信頼し、尊敬できる人物と仕事をすることであり、それ以外の人間と組んでもあまり成功しない。それはビジネスの成功以上に、人生に影響する。人は誰と付き合うか、誰と組むかで人生が大きく変わってくるからだ。
・経験を通してバフェットは、自分よりもひどい人間と交われば、そのうちに人生を滑り落ちてゆくのだと学んだ。バフェットは、自分より小さい者を雇えば、会社も小さくなり、自分より大きい者を雇えば会社も大きくなると考えている。まして邪悪な人間、尊敬に値しない人間に会社を任せてうまくいくことなど絶対にあり得ない。バフェットがかかわりたいのは、自分が好ましいと思う人間、自分と同じ熱意を持つ人間、尊敬に値するすぐれた人間だけだ。そんな人とビジネスを行えば、絶対にうまくいく。これは、仕事を誰に任せるか、仕事で誰と組むかにおける大きな選択基準になった。
・バフェットは、いつ誰から何を学んだのだろうかバフェットは学んだ相手を「英雄」と呼んでいる。二大英雄は師ベン・グレアムと父ハワード・バフェットだ。父ハワードからは生き方を学んだ。外のスコアカードではなく、内なるスコアカードを持つこと。外部の声に惑わされることなく、みずからの生き方を貫く。こうした考え方はウォール街と一線を画す投資法にもはっきり表れている。また、「嘘をつかない」「正直に生きる」「恥ずべき行為をしない」といった人間として大切な生き方も学んだ。父ハワードは決して器用ではなかったが、その生き方は多くの人の尊敬を集めたのだ。
・バフェットはすぐれた企業を長く持ち続けるだけでなく、すぐれた経営者にそのまま経営を続けてもらうことでこそすぐれた成果があがると信じ、実際、その通りの結果を出している。バークシャー傘下の経営者に与えている任務は、4つだけだ。
①会社を100%所有しているつもりで
②過去・未来を問わず
③自分と家族にとって会社が唯一の資産であるかのように
④少なくとも100年間は売却も合併もできないという覚悟で
企業経営に当たってもらうことである。望むのはただの雇われ経営者ではなく、オーナーであるかのように全責任と強い熱意を持って経営に当たる経営者だ。そして、バフェットにはそんなオーナー経営者を引きつけてやまない魅力がある。
<目次>
法則1 世間を眺めて判断しない-「逆」が富を生み出す
賢者は考える時に意見を求め、凡人は決める時に意見を求める
事前の自制は事後の反省にまさる
世間が「すべきだ」で動く時、成功者は「好きだ」で動いている
雨上がりに泥を見るか虹を見るかが君を決める
市場に問うな。自分に問え。
強欲は百の手を持つが、一つの信頼もつかめない。
ビジネスは二者択一。「一番手」か「その他」かだ。
規律の下僕になれる人が、人生の主人になれる人。
法則2 成功したらそれ以外やらない-「限定」が富を生み出す
富豪は「損もしながら儲ける」と考えない。損しない方法だけを考える。
理解せよ。利益になる。
すぐ手を出すと、すぐ手を引くことになる。
意気込みは大いに。見込みは少な目に。
綱渡りで落ちるのが怖いかい?綱渡りをしなければいいんだよ。
バラも花が枯れれば、イバラと同じだと思わないか。
法則3 ストライクのほとんどを見送る-「待ち」が富を生み出す
夢を見るには、悪夢を見ない力が必要だ。
勝たないと「勝てば官軍」になれないが、どんな人も「待てば官軍」になれる。
急いで決めるな。決めたら急げ。
早く走り始める人は、早く走れる人に勝つ。
欲望が倍になると、危険も倍になる。
法則4 バカでも経営できる会社を選ぶ-「スタート」が富を生み出す
最初の選択は、成功の過半をなす。
弱みで戦わないことが、強みで戦う一番の条件。
配偶者は健康で選ぶ。会社は堅牢さで選ぶ。
過去を見落とすと未来を読み誤る。
運は君をゆっくり追ってくる。急ぐと運は君に追いつけない。
リスクを負えないなら、利益も追わないことだ。
法則5 一攫千金を禁じる-「当たり前」が富を生み出す
チャンスと絵は少し離れて見たほうがよく見える。
成功は折り畳まれた努力である。
一銭の金も実践なしでは得られない
人生を切り開きたいなら、ナイフではなく斧を持つべきだ。
あれこれやりたい人は、何もやれない人である。
お金は投資に使え。時間は自分に使え。
法則6 敗者の少ない勝ち方をする-「分配」が富を生み出す
お金を使い果たす人は、運をも使い果たす。
分かち合うのは、勝ち方の一つなんだよ。
凡人は自分の取り分を大きくする。賢者はパンそのものを大きくする。
衝突を避けるには正直に言うことだ。
富みたいなら倹約に留意し、富んだなら贅沢に注意する。
評判は最大の紹介状。
お金の儲け方で知恵がわかり、お金の使い方で人格がわかる。
単に残すのではなく、残すべき人に残せ。
法則7 人にほれこむ基準を持つ-「相棒」が富を生み出す
他人に信用されたいなら、言葉を善用することさ。
一人の賢者を知ることは、新たな自分を知ることだ。
人生を変えたいなら、友人を変えれば簡単。
馬車を馬につなぐのもいいが、星につなぐのはもっといい。
会うことは、決断を正しくする。
疑うならば任せない。任せたならば疑わない。
やったことよりも、やらなかったことで人生は決まる。
参考文献
ウォーレン・バフェット略年譜
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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(1)世間を眺めて判断しない-「逆」が富を生み出す
(2)成功したらそれ以外やらない-「限定」が富を生み出す
(3)ストライクのほとんどを見送る-「待ち」が富を生み出す
(4)バカでも経営できる会社を選ぶ-「スタート」が富を生み出す
(5)一攫千金を禁じる-「当たり前」が富を生み出す
(6)敗者の少ない勝ち方をする-「分配」が富を生み出す
(7)人にほれこむ基準を持つ-「相棒」が富を生み出す
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また、主な投資の基本的考え方は以下とのことです。
・株を長期保有(あわてて小さな利益を得ようとしない)
・分散投資ではなく集中投資
・株価がその企業の価値より安いかを見る
・経営者の資質を重視する
・買った時の株価に拘泥しない
・自分で考える
・自分で納得いくまで調べる
・企業は一番手でなければならない
・投資先のビジネスを十分に理解することができる
・投資先のビジネスは5年、10年、20年と確実に収益をあげられる
・株は適正かつ合理的な価格で購入する
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・経営者の過ちや環境の激変に耐える復活力の強い企業こそが理想
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・ウォーターゲート事件とは、リチャード・ニクソン大統領が辞任にまで追い込まれた一大政治スキャンダルである。この事件を報道したことにより、ワシントン・ポストは世界に名をはせ反面で、時の政権からは目の敵にされた。政権は、同社が所有するテレビ局の免許更新に異議を申し立てるなど、さまざまな攻撃を繰り返していた。だから株価が急落したのだし、リスクを恐れて買う人はほとんどいなかったのだ。しかし、バフェットは意に介さなかった。彼の判断基準に照らすと、全財産を注ぎ込んでもいいくらい安全だった。
①株価がその企業の価値より安いかどうか
純資産は4億ドルぐらいだとバフェットは算出した。これに比べて株の時価総額はわずか800万ドル。不当すぎる安さだった。
②その企業にすぐれた経営者がいるかどうか
バフェットは、ワシントン・ポストの経営陣を有能であり、かつ正直だと評価した。経営者自身がかなりの株式を持っていることも安全材料だった。
あとは、どれほど株価が下がろうが、ウォール街が危機説を流そうが、状況を逆手にとって割安に買い増しをするだけだった。読み通り、ワシントン・ポストの評価はやがて上がる。1974年、バフェットは正式にワシントン・ポストの取締役に就任した。こうして、当時、オマハのちょっと有名な投資家に過ぎなかったバフェットは、世界有数の名門メディア企業の筆頭株主にして取締役という社会的名声をも得たのだった。そして社会的名声は、富では買えない価値であると同時に、富の獲得と決して無縁ではないのである。
・バフェットは、二番手には利益がないばかりか、居場所もないという確信を深めた。誰かの後塵を拝するような分野で勝負をしても未来はない。戦うなら自分が最も得意とし、トップに立てる分野だ。一番手なら自分で自分の進む道を決めることができる。二番手で楽をしてしまう代償は、自分に決定権がなくなるという高すぎるものになる。
・フランクリンは、政治・外交・著述・物理学・気象学など多彩な分野で成功を収め、その高潔な人柄からも「米国人の父」と讃えられる人物だ。彼は、自分の習慣や性癖などがもたらす過ちを注意深く克服し、常に正しく生きたいと願った。その実現のために、自分にとって必要な徳目を13あげ、一つひとつを習慣化したいと考えた。13の徳目とは、節制・沈黙・規律・決断・節約・勤勉・誠実・正義・中庸・清潔・平静・純潔・謙譲である。これらを同時にすべて習慣化するのは難しい。フランクリンは一定の期間、どれか一つに集中し、身に付いたと実感できて、初めてほかの徳目へ移るやり方をした。
・バフェットは、投資の信条に「正しい価値観」に基づく3つを追加した。
①十分に理解することができる
②5年、10年、20年と確実に収益をあげられるビジネスである
③それを適正かつ合理的な価格で購入する
・バフェットは本当に自分が理解し、自信を持てる企業以外には決して投資しない。たとえ理解の範囲にめぼしい企業がなかったとしても、無理に範囲を押し広げない。その結果、ハイテク企業を避けて「過去の人」扱いされても、自分自身で「D」の評価をつけざるを得なくなっても、意に介さない。そんな一時的な評価に右往左往してリスクを負うほうこそ大バカ者なのだ。大切なのは投資分野が理解でき、投資先の経営者や競争力に万全の自信を持てるかどうかである。そこに、
①集中的に投資する
②長期間保有する
というのが、バフェットの投資とリスク回避が一体化されたスタイルである。こうしたバフェットのやり方は、短期売買を繰り返すウォール街的な風潮とは大きくかけ離れている。だが、バフェットは、花から花へ舞う蝶は投資家ではなく、「これは」と見込んで取得した企業と10年、20年と付き合うのが心の投資家だと指摘している。
・バフェットは、投資先を見つける時、紙と鉛筆を使った、こんなやり方をする。
①自分が理解できる企業の名前を紙に書く
②それを取り囲むように輪を描く
③輪の中にある企業のうち、3種類の企業を輪の外に出す
・本来の価値に比べて株価が割高
・経営陣がダメだ
・事業環境がよくない
④輪の中に残ったある企業に目をつけ、自分が相続したらと仮定して長所や短所をつかむ
・経営者である自分は何をするのか
・経営者である自分は何をしたいのか
・会社の問題は何か
・会社の競争相手はどこか
こうした知識がベースにあれば、その企業を買うかどうかはごく短時間で判断できる。5つか6つくらいの業種について深い知識を持てばいいし、一気に持とうとせず、一業種ずつこつこつと勉強すればいい。目標は「経営陣よりも深い知識を持つ」というのがバフェット流のやり方だ。
・バフェットは企業経営においても、巨額の負債を好まない。自分自身、1万ドルの資金がある時に100万ドルあれば成功間違いなしというアイデアが浮かぶこともあるが、その時はアイデアのほうをあきらめるか、変更する。借金は断じてしない。「莫大な借金も、経営者が経営にうまく使えば、決して悪いだけではない」という考え方もあるだろう。だが、バフェットは、それにも「ノー」を突きつける。ビジネスは一寸先は闇である。いつどんな事態が起きるかわからない。それなのに「返済できる」と思いこむのはリスクが大きすぎる。なんとか手持ち資金の25%以内の借金にとどめるべきなのだ。莫大な借金をして事業を拡大し、一時期は高収益を謳歌したものの、やがて消え去った企業は数知れない。借金を嫌い、テクノロジー企業に決して手を出そうとしないバフェットは時代遅れと見られたこともあるが、彼が正しかったことは彼の実績が証明している。
・困難なビジネスでは、一つの問題が片づく前に次の問題が起き、それが続いて消耗戦に陥るだけだという教訓を、バフェットは得た。よいビジネスならリスクがゼロというわけではないだろう。ただ、すぐれたビジネスをすぐれた経営者が経営していれば、リスクはとても小さいのに対し、問題の多いビジネスの場合、成長どころか、生き残っていくだけのために人員の削減や工場の売却といったつらく難しい決断を迫られ続ける。バフェットは「素晴らしい企業をまずまずの価格で買う」ことが結局はリスクを最も低くすることだと深く悟っていく。
・バフェットは、ベン・クレアムの次に、著名な投資家フィリップ・フィッシャーを師と仰いでいる。電子・通信の巨大メーカーだったモトローラ社(2011年に分割)がまだ小さなラジオ製造会社だった1955年に株を買い、2004年に死去するまで持ち続けたことでも知られる人物だ。そのフィッシャーは、「いつ売るべきか」という問いに対し、正しく選び抜いて買った株なら「売るな」と答えている。売るのは、次の3つのケースに限られる。
①正しく選び抜いたつもりが、判断に誤りがあった。
間違いに気づいたらすぐに改めるのが鉄則なのは、投資の世界でも変わりない。
②時代の変化とともに、当初の条件を企業が満たせなくなった
ただし、あわてふためいて売るほどのことはない
③投資先を乗り換える
しかし、魅力的な投資機会はそれほど多くない。目先の急成長株に目をうばわれて、せっかくの長期的利益を失わないように注意が必要だ。
さらにフィッシャーは、絶対にやってはならない2つのケースもあげている。
①悲観的になって売り急ぐこと
株式市場が著しく低迷するなどといった状況では動揺しがちだ。しかし、長い目で見れば、あわてる理由などない。
②他人のアドバイスに乗って売ること
「このへんで利益を確保しては」といった他人の意見に乗せられて売ることもすすめられない。株の専門家は「売って利益を手にし、その利益でもっとよい株を買えばいいですよ」としきりにすすめるものだ。しかし、どうしてもお金が必要なケースを除けば、そんな意見など真面目に聞く必要はない。よい株は売らないことなのだ。よい企業は長く成長し続ける。株は人間よりも長生きする。本当に有望な成長株と確信したら、できるだけ長く持ち続けることだ。それは、株が値上がりした時に売って手にできる利益よりも、もっと多くの利益をもたらしてくれる。
・バフェットは自分が買った企業との関係が一生続くことを希望している。企業は利益をあげ、その一部が毎年確実にリターンされてくるからだ。株式は企業の一部であり、株式投資は事業を買うことである。株価の変動を見ながら売買して利ザヤを稼ぐのは、投機に過ぎない。事業を買い、長期間保有することで利益を得るのが投資なのだ。だから、1~2年好成績をあげた企業ではなく、5年、10年と業績をあげ、将来にわたって安定成長するのが確実な企業を買うべきだ。それは、短期売買を繰り返して得る利益以上に多くの富をもたらしてくれる。だからバフェットは、みずからが経営するバークシャー・ハザウェイの株主にも、「いつ、いくらで売ろうか」などと考えず、永久に株を保持してもらいたいと希望している。
・投資の世界はチャンスが多いように見えるが、自分のストライクゾーン持って好球を待つ人間にとっては、ひっきりなしにチャンスがあるわけではない。にもかかわらず、バフェットが成功し続けることができるのは、めぐってきたチャンスを確実につかみとる決断の早さを持っているからだ。バフェットは1日10時間というほど長く情報の収集や分析を行う。だが、株を買うべき時は、分析などしない。速断を重んじる。
・バフェットやマンガーが信奉するベンジャミン・フランクリンも、人生を大切に思うのなら時間を無駄に使うなと忠告する。時間こそ人生の材料だからである。「時間の浪費こそ一番の浪費」「時間は十分あると思うと、いつも決まって時間不足に終わる」「時間の失せ物は、間違っても見つかることがない」と言っている。ところが、私たちは、時間は限られた貴重な資源であることを頭では理解しているが、往々にして無駄に使ってしまう。他人の時間を気にするあまり、自分の時間を犠牲にしたりすることもある。バフェットは、自分の時間を無駄にしなければ、他人の時間を無駄にすることも好まなかった。顕著な例が、投資話を持ってくる人たちに対する結論の早さだ。そういう人にバフェットはいつくつかの条件を提示する。「一貫した収益力がありますか」「負債は少ないですか」「経営陣が定着していますか」「私が理解できる単純な企業ですか」-そして、必ずこう付け加える。「価格が提示されていますか」バフェットは仮定の話を好まない。価格が提示されていれば結論が出しやすいが、そうでなければ仮定の話になって時間の浪費に堕すからだ。
・バフェットの公式自伝は、本書の見出しにたびたび引用している「スノーボール」だ。このタイトルは、バフェットが子供の頃から「小さな雪の玉」を固め始めたことに由来する。もし固め始めるのが10年遅れたら、山の斜面をここまで上には登ってこれなかっただろうと述懐している。先を行くためには、早くスタートすることだ。時間を浪費してはならない。人生はいつでもやり直しができる柔軟さを持っているが、失った時間を取り戻すのは不可能なことも、常に銘じておくべきだ。
・場ふぇっとは強力なブランド力を持つ企業に強く曳かれるようになっていった。たとえばバレンタインデーや結婚記念日に、いくら安いからといって無名のチョコレートを買う人はいない。値段は高くても名のしれた品を選ぶものだ。そんな「少し余分に払っても買う価値のあるもの」こそがブランドの価値であり、それが、ライバルが絶対に勝てない競争力を生むのだ。ガソリンスタンドで惨めなビジネスを経験したバフェットは、そうした惨めさとは無縁の存在である企業としてコカ・コーラの株式を取得するようになる。
①世界最強のブランド力
②値頃で商品を提供している
③消費者の評判がいい
④一人当たりの消費量が、ほぼすべての国でほぼ毎年増加している
このような点から、コカ・コーラのようなすごい商品は、ほかにないと感じた。たとえ1000億ドル使っても、世界のソフトドリンク業界第一位の座を奪うことは不可能だと判断したのだ。それ以前はペプシコーラの愛飲者だったが、コカ・コーラのチェリー・コークを飲むようになった。強い企業とはどんな企業かという問いに対する答えはいくつkあるのだろうが、バフェットは、コカ・コーラのような強いブランド力を持った企業を強い企業と考えるようになっていく。
・ここで、バフェットの思考の変遷を見てみよう。
①有形資産ばかりを見ていた
②経営力やブランド力、競争力などの無形資産にも目を向ける
③すぐれた経営者がいるすぐれた企業で安価に買えるという条件を好むようになる
④経営者の過ちや環境の激変に耐える、復活力の強い企業こそが理想と考え始めた
新しいアイデアを生むよりも古い考えを捨てるほうが難しいというが、バフェットはさまざまな経験を通して古い考えを捨て、新たな思考のステージに進んでいることがわかる。チャーリー・マンガーがバフェットを「学習マシン」と呼んだ通りだ。バフェットの学習は本や資料を読むだけではなく、失敗体験を決して忘れることなく、そこから教訓を引き出すことでも行われていた大きく成功する秘訣でもあるだろう。
・バフェットは幼い頃から大変な読書家であり、図書館で手に入るものは片っ端から、それも3度、4度と繰り返し読んでいる。師ベン・グレアムの本についても、すべて暗記するほどに頭にたたき込んでいる。それだけに、投資で成功するためには、本を読むこと、手に入る資料をしっかりと読むことが必要だと説いているが、一方で、それだけでは解決できない問題があることもよく知っている。
・バフェットは高コスト体質を嫌う。バッファロー・イブニング・ニューズ社を買収した時、あまりに立派なオフィスや印刷工場を見て、チャーリー・マンガーと、新聞社に宮殿は必要ないと皮肉っている。また、経費削減も、常に息をしているように、常にやるべきことだと考えていた。そんなバフェットは、USエアーに関しては過去の高収益に心を奪われて、確実に起こるであろう変化を見落としたのだ。過去の業績を見るだけでは企業の価値を知ることはできない。未来に何が起きるのかを予測し、成長力や競争力を検討しない限り、真の価値はわからない。バフェットは、そんな教訓を得た。そして、経営者に必要な資質は、前例のない重大なリスクをも見抜き、回避できることだと考えるようになった。
・「投機家」は、株価の変動を予測して利益を得ようと、日々の株価の変動に目を凝らす。だが、「投資家」はそんなことはしない。最大の関心事は、適切な企業の証券を適切な価格で取得して長期間保有することにある。株価を利用するのは構わない。しかし、株価に踊らされてはならないのだ。日々の株価の動きに関心を示さないバフェットは、友人であるビル・ゲイツから、コンピューターを1台手に入れるといいとすすめられても、やんわりと断っている。それは、保有株の動きを5分単位で知る必要はないからである。経済・金融情報のすぐれた配信システムであるブルームバーグ端末についても同様だ。1990年代には多くの企業が採用し、バークシャー・ハザウェイにも3年間にわたって売り込みが行われた。だが、バフェットは市場を分単位で追うのは投資の手法ではないとして、頑として採用しなかった。
・有利だったのは、オマハは、ものをじっくりと考えられる環境にあったことだ。
①住み慣れた生まれ故郷であること
変化をリスクと考えるバフェットには、故郷はこのうえなく落ち着ける場所だった。
②ウォール街から離れていること
ウォール街にはたくさんの情報が集まってくる。熱狂の近くにいたいと願う人にはいいが、熱狂は往々にして人から冷静に思考する力を奪う。
③適度に都会であること
オマハはネブラスカ州最大の都市であり、インフラは過不足なく整っている。
・バフェットは大変な読書家ではあるが、単に本を読むことだけが目的の人間ではない。
バフェットは投資家として成功するには何が必要かと聞かれると、「本を読むことです」と答え、それに、もう一つの答えを付け加えることを忘れない。それは、少額でもいいから投資をするということだ。本を読むことは必要だが、本を読むだけでは成功はできない。読書家バフェットは、
①自分から始める
②すぐに始める
③徹底してやり続ける
この3点を守ることで、大投資家への道を歩むこととなった。
・「あなたの最高の財産は何か」と聞かれ、「自分です」と答えられる人は少ない。「あなたにとって一番大事な顧客は」と聞かれ、「自分です」と答えるにはかなりの勇気が必要だ。しかし、バフェットとマンガーはこうした問いに「自分です」と堂々と答えたからこそ、必死に自分を磨くことができた。よい習慣を身につけるために努力し、手に入るあらゆるものを読み、自分の頭で考える訓練をした。それは豪邸に住むためでも、フェラーリに乗るためでもなく、自立した自分をつくり上げるためだった。大切なのはバフェットが言うように、どれだけの時間を自分のために使うことができるか、どれだけの努力を自分に傾けることができかだ。世の中に大切なものはいくつもあるが、最も大切にしなければならないのは間違いなく自分という存在だ。自分を大切にし、自分を磨き、日々自分を向上させる努力が欠かせない。
・バフェットは、自分が幸運だったと考えている。家では面白い話が交わされていた。両親は知的で、いい学校に行かせてくれた。お金で財産はもらってはいないが、生まれた場所と時期がすばらしかったと述懐している。特に、「使う金は入る金よりも少なく」という質素倹約の教えが身についたのは、計り知れない徳だった。今は失われた、古きよきアメリカ伝統の考え方である。たとえば、古きよきアメリカ人を代表するベンジャミン・フランクリンは、成功を確実なものにしたいのなら、勤勉プラス節倹の徳が必要だと説いている。勤勉に稼いでも、節倹して残すことを知らなければ、一文の金も残せないからだ。
・バークシャーの本社には10人足らずの社員しかいない。事務所も質素で、社員も少ないし、バフェットとマンガーも年間10万ドルの給与しか受け取っていない。マンガーによると、他の同様な会社の平均からすると、経費はわずか250分の1というから驚かされる。その質素倹約ぶりは徹底している。かつて通常価格の4分の1程度で売り出されているビルの購入を考えたこともあるというが、あまり豪華な事務所に移るのは従業員に悪い影響があると考えて踏みとどまったほどだ。本社が率先してこれほどの質素倹約を徹底すれば、バークシャー・ハザウェイ傘下の企業もそれにならうことになる。バフェットは贅沢が当然のウォール街文化とはまるで違うところに身を置くことで世界一の投資家となり、世界有数の優良企業をつくり上げた。
・ビジネスを行っている以上、損失を出すことはしかたがない。その金額が莫大なものであっても、悪意からのものでなければ、許すことができる。失ったお金は仕事をすることで取り返すことができる。しかし、名誉はおうはいかない。会社の信用とブランド力が傷つき、地に落ちてしまったら、それを取り戻すのはほとんど不可能だ。できたとしても長い年月と大変なコスト、労力が必要になる。こうした倫理観をバフェットは父から教わった。
・ビジネスで大切なのは、自分が好ましく思い、信頼し、尊敬できる人物と仕事をすることであり、それ以外の人間と組んでもあまり成功しない。それはビジネスの成功以上に、人生に影響する。人は誰と付き合うか、誰と組むかで人生が大きく変わってくるからだ。
・経験を通してバフェットは、自分よりもひどい人間と交われば、そのうちに人生を滑り落ちてゆくのだと学んだ。バフェットは、自分より小さい者を雇えば、会社も小さくなり、自分より大きい者を雇えば会社も大きくなると考えている。まして邪悪な人間、尊敬に値しない人間に会社を任せてうまくいくことなど絶対にあり得ない。バフェットがかかわりたいのは、自分が好ましいと思う人間、自分と同じ熱意を持つ人間、尊敬に値するすぐれた人間だけだ。そんな人とビジネスを行えば、絶対にうまくいく。これは、仕事を誰に任せるか、仕事で誰と組むかにおける大きな選択基準になった。
・バフェットは、いつ誰から何を学んだのだろうかバフェットは学んだ相手を「英雄」と呼んでいる。二大英雄は師ベン・グレアムと父ハワード・バフェットだ。父ハワードからは生き方を学んだ。外のスコアカードではなく、内なるスコアカードを持つこと。外部の声に惑わされることなく、みずからの生き方を貫く。こうした考え方はウォール街と一線を画す投資法にもはっきり表れている。また、「嘘をつかない」「正直に生きる」「恥ずべき行為をしない」といった人間として大切な生き方も学んだ。父ハワードは決して器用ではなかったが、その生き方は多くの人の尊敬を集めたのだ。
・バフェットはすぐれた企業を長く持ち続けるだけでなく、すぐれた経営者にそのまま経営を続けてもらうことでこそすぐれた成果があがると信じ、実際、その通りの結果を出している。バークシャー傘下の経営者に与えている任務は、4つだけだ。
①会社を100%所有しているつもりで
②過去・未来を問わず
③自分と家族にとって会社が唯一の資産であるかのように
④少なくとも100年間は売却も合併もできないという覚悟で
企業経営に当たってもらうことである。望むのはただの雇われ経営者ではなく、オーナーであるかのように全責任と強い熱意を持って経営に当たる経営者だ。そして、バフェットにはそんなオーナー経営者を引きつけてやまない魅力がある。
<目次>
法則1 世間を眺めて判断しない-「逆」が富を生み出す
賢者は考える時に意見を求め、凡人は決める時に意見を求める
事前の自制は事後の反省にまさる
世間が「すべきだ」で動く時、成功者は「好きだ」で動いている
雨上がりに泥を見るか虹を見るかが君を決める
市場に問うな。自分に問え。
強欲は百の手を持つが、一つの信頼もつかめない。
ビジネスは二者択一。「一番手」か「その他」かだ。
規律の下僕になれる人が、人生の主人になれる人。
法則2 成功したらそれ以外やらない-「限定」が富を生み出す
富豪は「損もしながら儲ける」と考えない。損しない方法だけを考える。
理解せよ。利益になる。
すぐ手を出すと、すぐ手を引くことになる。
意気込みは大いに。見込みは少な目に。
綱渡りで落ちるのが怖いかい?綱渡りをしなければいいんだよ。
バラも花が枯れれば、イバラと同じだと思わないか。
法則3 ストライクのほとんどを見送る-「待ち」が富を生み出す
夢を見るには、悪夢を見ない力が必要だ。
勝たないと「勝てば官軍」になれないが、どんな人も「待てば官軍」になれる。
急いで決めるな。決めたら急げ。
早く走り始める人は、早く走れる人に勝つ。
欲望が倍になると、危険も倍になる。
法則4 バカでも経営できる会社を選ぶ-「スタート」が富を生み出す
最初の選択は、成功の過半をなす。
弱みで戦わないことが、強みで戦う一番の条件。
配偶者は健康で選ぶ。会社は堅牢さで選ぶ。
過去を見落とすと未来を読み誤る。
運は君をゆっくり追ってくる。急ぐと運は君に追いつけない。
リスクを負えないなら、利益も追わないことだ。
法則5 一攫千金を禁じる-「当たり前」が富を生み出す
チャンスと絵は少し離れて見たほうがよく見える。
成功は折り畳まれた努力である。
一銭の金も実践なしでは得られない
人生を切り開きたいなら、ナイフではなく斧を持つべきだ。
あれこれやりたい人は、何もやれない人である。
お金は投資に使え。時間は自分に使え。
法則6 敗者の少ない勝ち方をする-「分配」が富を生み出す
お金を使い果たす人は、運をも使い果たす。
分かち合うのは、勝ち方の一つなんだよ。
凡人は自分の取り分を大きくする。賢者はパンそのものを大きくする。
衝突を避けるには正直に言うことだ。
富みたいなら倹約に留意し、富んだなら贅沢に注意する。
評判は最大の紹介状。
お金の儲け方で知恵がわかり、お金の使い方で人格がわかる。
単に残すのではなく、残すべき人に残せ。
法則7 人にほれこむ基準を持つ-「相棒」が富を生み出す
他人に信用されたいなら、言葉を善用することさ。
一人の賢者を知ることは、新たな自分を知ることだ。
人生を変えたいなら、友人を変えれば簡単。
馬車を馬につなぐのもいいが、星につなぐのはもっといい。
会うことは、決断を正しくする。
疑うならば任せない。任せたならば疑わない。
やったことよりも、やらなかったことで人生は決まる。
参考文献
ウォーレン・バフェット略年譜
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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