「まちづくり幻想」という本は、まちづくり事業に高校在学時から取り組んだ1982年生まれの木下斉さんが、その全国の「まちづくり事業」実態について明らかにしたもので、地域のプロジェクトには単に「人・物・金・情報」がたくさんあれば良いのではなく、特にそのベースとなる「思考の土台」が特に重要なようです。
その土台がないと、結果として多額の労力と資金を費やしたのに、地元にとって維持費がかかるだけの無用の長物となったり、地場産業が滅んでしまったり、住みたくても移住せざるを得ないような状況になることが多くあるようです。
特に他の地域の成功事例などわかりやすい答えを求め、自分は何一つ失敗もせず、他人のカネを使ってやれることはないか、と考えるような「思考の土台」がある限りは、失敗が続くようです。
そもそも成功する人たちは、そんな考えを持っていないし、自分たちで考え、自分たちのお金の範囲で失敗を繰り返し、改善を続けるようです。
また賛同された善意の事業ほど、進め方が雑になったり、計画の練度が低くなったりして失敗するとはナルホドです。
それから安易に工場や商業施設を誘致しても、税金が本社がある別の地域に払われたり、人件費が安ければその地方はますます疲弊するとはナルホドです。
きちんとしたプライシングで利益を確保し給料に反映させることは地域活性化のためにも重要なようです。
「まちづくり幻想」という本は、地域再生の失敗となる幻想について分かりやすくたくさん説明があり、また日本だけでなく世界での成功事例もたくさん紹介があり、成功するまちづくりのヒントを得ることができ、とてもオススメです!
以下は本書のポイント等です♪
・一つの好例は、北海道を中心に展開するドラッグストアチェーンであり、一部上場企業でもある「サツドラホールディングス」でしょう。当然ながら地元から生まれた企業であるだけでなく、グループ会社に多様な企業を集め、さらに同社社員に申告の必要がない「副業解禁」を行っています。800名以上の全社員のうち10%が復業している状況です。さらに本社・コワーキングオフィス・店舗を複合化した先進的デザインの拠点を札幌市内に設け、道外企業とのコラボなどオープンな環境での魅力的な商品開発で成果を挙げています。このように地方企業が、地元にとって多くの機会を提供してくれると、優秀な人材が集まり、新たな活力を作り出していくのです。
・「さくらインターネット」による北海道のデータセンターは、先の条件を満たす取り組みの一つです。もともと北海道は、寒冷地であることからデータセンターに必要な冷却エネルギーコストが安く済む利点があります。同社は進出時では他の企業のように地方向けの雇用形態で募集をかけ、拠点を運営していたそうですが、人材定着が著しく悪く、募集にも苦心していたといいます。そこで本社同様の正社員雇用にすべてを切り替えたところ、離職者がゼロになり安定的な経営が行われるようになりました。
・熊本県上天草に定期船舶や観光船やマリーナを経営するシークルーズという企業があります。地元の中小企業ですが、閑散期などを利用して長期間の休みを従業員に積極的にとらせると共に、常に付加価値の高いサービスを作り出し、地域でナンバーワンの客単価をとる観光船を作り出すと共に、全国から人材も集まっています。適正な価格で、適正なお客さまを集めることで、悪質な客を寄せ付けないため従業員の定着率も高く、採用ともなると都内を始め地域の有名大学から男女ともに就職希望者が集まります。サービス残業だからといって安くたくさんの客を集めて、従業員を酷使すればよいという時代は終わったのです。このような企業が内外から生まれる地域にはさらなる企業が集まってきます。
・ここ10年ほどスペインにおいて一人あたり所得が最も高い州はバスク自治州というところです。失業率も低く、公的債務比率もスペイン平均より大幅に低くなっています。リーマンショックの時の経済の落ち込みもスペイン全体の縮小率よりも低いなど、堅調な経済を抱えています。最近ではバスク自治州にあるサン・セバスティアンが、人口一人あたりの星付きレストランの数が世界最高で、美食のまちとしても有名になっている地域でもあります。ではなぜバスク自治州はこれほど持続可能な経済を実現できているのでしょうか。この地域の特徴の一つに、数千もの「労働者協同組合」があることが挙げられます。「労働者協同組合」は日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、簡単にいえば、自分たちでお金を出している会社で働く方式の組織です。社員が会社の株を持つ株主のようなイメージなのです。大きな労働者協同組合としてはモンドラゴンが有名で、グループ全体では1.6兆円を超える連結売上があり、約10万人を雇用する組織になっています。このような企業モデルが、地域に多く存在することによる地元経済へのプラスは大きく2つあります。一つは、労働者協同組合では労働者と経営者との間での賃金格差などを細かく規定しており、法外な収入を経営者が得ることがありません。そのため組合員である社員に相対的には多くの賃金が支払われたり、配当が行われるため人々の平均所得が高くなる傾向にあります。もう一つは、モンドラゴンなどの労働者協同組合は、消費生活協同組合とのハイブリッド型で、ショッピングモールやコンビニのようなデリを展開するなど地域内消費を支えています。つまり地元の人々が資金を出したモールで地元の人たちが買い物をしているのです。結果として、地元消費によって生まれる利益もまた、地元の人たちに戻っていくのです。
・フランスで一人あたり所得が高い都市といえばどこでしょうか。実は、フランスでもトップクラスの所得の高い都市の一つが、人口2.3万人のエペルネーというまちなのです。エペルネーはシャンパーニュメゾンの本社が集積する小さなまちです。世界相手に6400億円を超えるシャンパーニュ市場でシェアを持つ一流メゾンが集積しています。少人口だからこそ一人あたり平均所得が高くなるのです。シャンパーニュといっても葡萄からつくる農業加工品。つまりそのまちのほとんどは農地であり、日本人がイメージする工業型の儲かるまちではなく、非常に穏やかな農業中心のまちです。それでも世界を相手に稼げるシャンパーニュが存在するからこそ、500年以上もファミリー経営が続いているメゾンすらあるのです。
・コロナ禍でパスタの自宅需要が伸び、九州の素材だけで作られる九州パンケーキを展開する九州テーブルの「セブングレインパスタ」も急成長していました。これも地元がインバウンドに沸いている中、冷静に九州内のよい素材を組み合わせて、ストーリーを描き、商品を作り、それをインターネットを通じて販売できる体制を作っていたからこそ、今回のチャンスをものにできたのです。日本においては「一つの事業に集中するのが良いこと」という考え方がありましたが、これもまた「幻想」だと思います。転換期のタイミングにおいては、適切な多角化をしていた企業が、経営基盤を維持しています。九州テーブルなどを擁する一平グループは飲食店部門もあれば、食品製造販売部門もあり、さらに九州各地にオフィススペースを作りネットワークする九州アイランドワークという会社も持っています。これらの多角化が今回のコロナ禍でも経営基盤の安定化に寄与しているわけです。
・地方が同じことばかりする構造
勝手にどこかの地域で挑戦して成功する→素晴らしい!と省庁が表彰→全国の人が視察見学、講演会に実行者を呼ぶ→どこぞの省庁が予算を要求→支援制度ができ、成功事例を模倣→支援制度は全国一律→自治体が一斉に予算目当てで人生、競争激化で総倒れ
・成果を上げているのが宮崎県日南市マーケティング専門官の田鹿倫基さんたちによる取り組みです。彼らは、なぜ地元を離れ福岡や東京に働きに出てしまうのか、その原因を探るために、就職する若い女性と採用する企業との双方に調査を行ったところ、非常にシンプルな理由がわかったといいます。簡単に言えば、企画や事務職で働きたい若い女性が多い一方で、地元企業では募集がなかったのです。採用側も女性の希望に合わせて、事業体制を変えるという発想がそもそもないため長年にわたりミスマッチが繰り返されていました。ただそのような結果を伝えても、一国一城の主たる地元企業のトップたちはなかなか動かない。そこで、田鹿さんたちは油津商店街の空き店舗にネットメディア系企業のサテライトオフィスを誘致、ライター職や事務職の採用を行って貰いました。広くデザインされたオフィス、社員がそれぞれラップトップを支給され、フリーアドレスで働ける。私服かつフレックス勤務でテレワークも当然OK。目の前には保育園まであるワークスタイルは地元の若い女性たちには大きなインパクトとなったと言います。就職希望の人たちが殺到し、翌年には地元高卒の女性が就職したい市内企業の2位にいきなりランクイン。その変化に地元企業の経営者たちも驚き、自分たちの会社改革に乗り出すところが続いたといいます。
・愛知県豊橋市に本店を構える種麹メーカー「糀屋三左衛門」は、創業が室町時代というルーツを持つ老舗企業でありながら採用方針を大胆に変えて大人気になっています。もともとは営業事務として募集をかけていたところ、応募数がゼロだったので、業務内容を改めて精査。実際、業務内容は顧客との接点を持ち、さらに販促物の作成など広報的な業務にも関わり、ネットショップなどのマーケティング計画も行う仕事です。さらに日本の発酵分野は世界からも注目されており、日本でも有数の種麹メーカーである同社は、海外からの問い合わせもあり国際的な側面もあるわけです。実は世界一予約のとれないレストランで有名なコペンハーゲンのノーマから、直接発酵に関する問い合わせがくるほど、その分野では国際的に知られる存在なのです。こうして新たな麹を使った食品小売事業の拡充を狙いとしたブランドマネジメントサポート職とし、業務内容についても細かく記載したところ、即日8名の応募が入ったといいます。しかもそのうち2名は首都圏からの応募でした。さらに2020年末には関連会社で新たなブランドマネジメント管理に関する募集をかけたところ、20~20代の素晴らしいキャリアをもった女性が20名以上殺到する事態になっています。このように業務内容を見つめ直し、内容も変更し、さらに職種名も変え、やりたいと思ってもらえる仕事ないようにすり合わせていくことが経営者に求められているのです。それが可能になれば、大企業誘致ではなく地元企業における採用実績も大きく上がります。さらに優秀な人材が集まれば、それは企業成長にも繋がるでしょう。
・ブラック労働を普通のことだと思っている経営陣は以下のような矛盾した話を語り出して「いいやつがいない」と繰り返します。
1.いい人材が欲しいけど、給料はあまり上げたくない
2.終身雇用はしないけど、会社には忠実でいてほしい
3.即戦力になってほしいけど、教育投資はやりたくない
4.積極性が欲しいけど、自分には従順に従ってほしい
これは「いいやつ」の条件ではなく、「自分にとって都合のいいやつ」でしかありません。こんな矛盾した条件の人材などいつまでたってももはや出てきません。
・幻想に惑わされる地域が多い中、現役のトップ層自ら次なるリーダーに席を譲り、さらに発展を遂げていく地域もあります。例えば2011年に東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県女川町。被災後の混乱の中、同町は女川復興連絡協議会において「還暦以上は復興事業に口出しをしない、未来を生きる世代に地域内の様々な上役を譲った上で、必要な資金も集めるし、批判されたら弾除けにもなる」という話をしました。そして本当に商工会を含めて全員を若返りさせ、さらに同年秋の町長選挙では39歳の須田善明さんが当選しました。官民共に若返りした上で震災復興に臨んだのです。
・北海道旭川市の郊外に位置する当麻町は、初競りで一玉75万円の値がつく高付加価値のすいか「でんすけすいか」の産地として有名で、民間農業経営者たちの力が非常に強いところです。同町役場では、地域振興を担当する若手職員、40歳の村椿哲朗さんを当時の現職町長が退任する際に後任指名、さらに周囲の方々も彼を支え、見事町長選挙で当選させています。というのも、彼は役場においてふるさと納税での企画を強力に推進し、全国的にも有名になるほどの実績を残していたからです。実績のある職員を評価し、トップに引き上げ、より活発な町にしていこうとする意思決定層の方々の大胆さに驚きます。結果として、同町には、世界一のダウンジャケットを数量限定で生産販売する店舗など、新たな動きが続々と起きています。このようにバトンを次世代に積極的に渡し、次なる世代を支え、未来に向けて動いていこうとする地域は、世代横断で変化を作り出しています。
・「強烈な少人数チーム」を組織し、圧力をかわしながら、時に相手の力を借りながらプロジェクトを前に進めていくことが大切なのです。ではどのくらいの人数が適正かというと3~5人だと私は思っています。第一段階は、人材の「発掘」です。まずは組める仲間を見つけられるかどうか。挑戦する前にまずは一人でもいいから仲間を見つけましょう。そのためには、自分が覚悟を決め行動を始めることです。その際、チームに欲しいのは以下のような人です。
1事業に対して営業力がある人
2地域での信頼を集めている人
3細かなワークでチームを支えられる人
4事業に必要な専門性を持っている人
・メンバーが揃うとようやく地域での事業が動き出します。小さな事業でもはじめの一歩が大切です。ここで安易に補助金事業に手を出してはいけません。その後も補助金事業を回し続けることが多く、足を洗うのに時間がかかるので、初期の段階でメンバーが補助金目的ではないと確認しておきましょう。
・自分たちのチームでの勝ち戦をしなくてはならないので、得意な事業分野を基本に売上を立てます。まずは自分たちの職能に合わせて得意なことをするのです。ここで安易に他の地域の事例に惑わされないこと。どこかの地域で成功している事例を誘致するのはいけません。課題と向き合うことを放棄して、強力な外国人選手を呼んでくるようなものです。重要なのは自分たちで考えること。もし欠けている能力や経験があるならばそれをもつ人をチームに入れましょう。
・大阪に飲食店の経営を通じてまちの変化を作り出す実績を積み上げてきた2004年創業のRETOWNという会社があります。社長の松本篤さんは今や人気スポットとなっている天満などの可能性をいち早く見出して、カフェ、居酒屋など多業態を展開、仲間も次々と出店して人気のエリアへと変えるなど事業を通じたエリア変革を作り出してきている一人です。人材育成にも積極的で寿司職人を養成する「飲食人大学」などを展開するなどユニークな立ち位置で事業を伸ばしてきています。そんなRETOWNの松本篤さんたちが、大阪市大正区の最北端にある尻無川の水辺空間に、複合施設「TUGBOAT TAISHO(タグボート大正)」をオープンさせました。大正区が所有管理する河川を20年占用で借りた上で、民間資金調達で同社が開発、運営する「稼ぐ公民連携」の取り組みです。第一弾部分だけが完成し2020年にオープン。大人気のスポットになっています。松本さんたちが自ら飲食店を通じて作り上げたネットワークと、経営へのリアルな知見が生きた施設です。コンサルに投げて、計画を組み立て、開発をしてもチェーンストアを連れてきて終わりになってしまうところですがここは違います。面白い飲食店は個人事業主で経営している人がたくさんいるわけです。彼らが出店可能な家賃、条件は何か、を考え、分離発注で予算を抑えながらも魅力的なデザインになっています。しかも分離発注しているのは可能な限り地元企業。結果、大正区の小さなお店も出店するなどして、本当に楽しいお店ばかりが建ち並んでいます。これからホテルやギャラリー、マリーナなどが段階開発を進めていく予定になっており、心から楽しみなスポットです。
・独自に企画をした日本製のアパレル製品を販売するファクトリエの山田俊夫さんは、もともと熊本市中心の下通りで長く続く老舗の高級婦人服店の息子さんです。彼は実家とは別に、自ら全国各地に点在する欧州のトップブランドなどからも受注・生産している縫製工場などと直接契約し、工場のブランドを作り出すファクトリエという事業を立ち上げ、テレビにも取り上げられる注目企業へと成長させています。そんなファクトリエは、東京銀座にショップを出していましたが、2019年に熊本下通りにある実家の婦人服店を改装し、カフェスペースを併設した拠点を作りました。そこではファクトリエの商品だけでなく、カフェで出す牛乳も熊本産を使うなど、食品関連のものづくりにまで踏み込み、新たな地域の活力を作り出しています。地域において老舗の息子が外に出て、全国区で評価されるような事業を立ち上げ、地元でも様々な生産者を巻き込んだ取り組みを始めています。老舗としての信用、そしてゼロから立ち上げ事業を成長させた経験を持つ山田さんが、もともとの商店街にある家業の家に投資をして、まちに影響を与えているのです。このような挑戦を地元の同年代の事業者たちも歓迎しているというのが、今の時代の変化です。少し前の商店街であれば、外に出て成果を挙げた人を純粋に受け入れるのはなかなか難しいでしょう。
・鯖江と言えばメガネで世界的にも有名なまちですが、鯖江の先人たちが偉かったのは、経営者たちは諦めず、新たな技術開発、商品開発を続けて、今やメガネの技術を転用して医療機器関連産業分野でも大きく成長を遂げているとことです。もちろんメガネ分野でも最終製品を自ら作るメーカーも増加し、全国的ヒットを生み出し、イタリアからも企業買収があったりするのです。鯖江に行った時に感じたのは、地元の方々の自信と魅力です。まず魅力的な町というのは、地元の魅力のゴリ押しではなく、地元の人たちが自然体でプライドを持っていることが重要になります。自分たちの仕事に価値を見出し、それをもって地域を支える産業にしている人たちの話には魅力があります。
・外注よりも人材へ投資をするです。当事者たる地元の人たちの知識や経験を積み上げて、独自の動きをとるのがなんといっても大切です。もし、他の地域の事例について調べたければ、実際にその地方を訪ねて、実態を細かく調査し、レポートを書かなくてはなりません。調査を業者に外注したうえに「どうやったらいいか」まで考えてもらっても、わからないものを鵜呑みにしてやることほど、恐ろしいことはないのです。レポート作成に多額の予算を積むのであれば、行政であれば職員に、企業であれば社員に自ら調べさせ、考えるに必要なスキルを身につけさせる方が得策です。さらに研修の予算を捻出して人材投資して自力で考える力を形成すべきです。
・何事も営業が大切。営業先回りなのです。しかし意外とkれをできる人が少ない。新たなプロジェクトを立ち上げるときは常に「逆算開発」「先回り営業」が必須です。まず営業し、顧客が見えている状態で事業を始める。つまり投資する前に営業しようということです。クラウドファンディングで勘違いしている人がいるのは、初速は必ず自分の周りの人たちにリアルな営業をかけていくことで、知らない人も「あ、これ多くの人がサポートしてて面白そう」ということになります。自分で営業しなければ最初の支援をしてもらえるはずはありません。また、カフェをやりたいなら、まずはスタンドの珈琲店を週末のマーケットなどで出店してみる。固定客をそこで確保できたならば、固定費のかかる実店舗をオープンするという順序でやれば、いきなり開業するよりは失敗の確率は劇的に減るわけです。
・役所が稼ぎ、公的サービスを維持していくスタイルは、明治時代から日本には存在していました。代表例は日比谷公園ですが、当時は西洋にある公園なるよく分からないものを税金で作ることが議論になるほどの時代で、まともな予算は下りなかったといいます。そのため日比谷公園には稼ぐためのテナントとして松本楼などの飲食店が入り、その後に寄付された公会堂や野音などが存在しています。その他の公園でも、レンタルボートなどの乗り物があるのも元々公園予算を稼ぐためだったといいます。役所が稼ぎ、必要な公共サービスを維持していく仕掛けを作り出すことは、特段新しいことではないのです。
・地元に積極的に投資を続ける経営者もいます。その一つが新潟県上越市で2022年に創業100年を迎える大島グループというローカル・コングロマリットです。グループ会社が23,従業員数1500名、売上高も約100億円という企業グループです。地域における新聞社からケーブルテレビ、塾、旅行代理店、薬局、酒蔵、老舗料亭まで異業種が集まっています。その中には元々の経営では立ち行かなくなった企業をグループ傘下におさめて、再生しているものも多く存在しています。それぞれで独立採算を貫くというポリシーで経営がなされており、地域にこのようなローカル・コングロマリットができるのは地域経営においても重要です。このような企業があることで、人々の日常生活の基盤が守られ、さらに地元にUターンする先が形成されていることでもあり、やはり地方における基盤の一つは、民間企業の存在であると思わされます。